第14話 戦隊、宿場町に入る
「次に祠を置ける場所を探さないとな」
ムーナ領での旅を行く輪人達、結局村へは立ち寄らず次の街を目指しての道を歩いていた。
「そうだね、次は何処か仮の拠点が欲しい所だね」
輪人の隣を行く純子が答える。
「祠を置ければジーラベースと行き来が出来ますしね」
桃花が地図を見ながら言う。
「乗り物も手に入れたい所ですわね、ロボはホイホイ使えませんし」
ヴィクトリアは今後の希望を述べる。
「どこか、ムーナに対して不信心な人達の国とかないかな?」
ヒナミは歌いながら語る。
「うん、その着眼点は良いねヒナミちゃん♪」
純子がヒナミを褒める。
「どこにでも、神の威光より現世利益というお国はありますわね」
ヴィクトリアが地球の世界史を思い浮かべる。
「その辺りの隙も見つけたら突いて行こう、普通に悪を倒せば終わりじゃないし」
輪人が真面目な顔をする、いつのまにか彼らの前には入り口周りに石壁が建てられた宿場町のような所に辿り着いた。
「やっと街に着いたよ~♪」
ジャカジャカとギターを鳴らすヒナミ。
「取り敢えず、食堂を探しましょう♪」
ヴィクトリアが食事の提案をする。
「賛成、皆で飯にしようぜ♪」
輪人が提案に乗った。
「桃花ちゃん、お金は大丈夫かな?」
純子が桃花に尋ねる。
「はい、確認します! ジーラさんが、倒した敵をこの世界で使えるお金に換金して出し入れできる機能をユウキブレスに付けてくれていて良かったです♪」
桃花がブレスを出して確認すると、輪人達も確認した。
「地球より便利な機能だよ♪」
ヒナミが喜ぶ。
「現金で出て来るのもありがたいですわ、まだまだ貨幣経済の世界のようですし」
ヴィクトリアが紙幣を出して見て数える、その紙幣にはどれもムーナの肖像が描かれていた。
「キャッシュレスとは無縁の世界だね、そう言えば金貨はないのかな?」
純子も紙幣や硬貨を出して確認すると、貨幣は銅と銀はあるが金貨はなかった。
「まさか、金はジーラの金属だから支配できてないとか嫌ってるとかか?」
輪人は、自分の考えが当たっているとは知らずに適当に真相を呟いた。
特に検問もなく街に入れた一行、固まって通りを歩き食堂を探す。
「何だろう、私達は周囲から避けられている感じがするな?」
純子が周囲を警戒しながら呟く。
「何処の国から来たんだ、あの連中?」
「冒険者か? 旅芸人か? 何者だ?」
「どっちにしろ、下手に関わらない方が良いわ」
戦隊一行を見た宿場町の人間達は、不審な目で彼らを見てひそひそ話をしていた。
「私達、陰口叩かれてる感じですね」
桃花が苦い顔をする。
「気にしない♪ こっちも絡まれなければ良しよ♪」
ヒナミが桃花に微笑む。
「そうですわ、警戒はしても気に病む事などありません♪」
ヴィクトリアは堂々としていた。
「ヴィクトリアちゃんは、舞台とか似合いそうだね♪」
純子が微笑む。
「輪人様がお相手でしたら、何シーズンでも立ちますわ♪」
ヴィクトリアが輪人を見て微笑む。
「いつかできたら良いな」
軽く答える輪人。
「先輩、私もお願いします!」
桃花が食い付いた。
「ほらほら、ここは通りだから止まらない♪」
純子がなだめて移動を再開し、一行偶然見つけた灰色の石壁でできた食堂へと入ったのであった。
「いらっしゃいませ、ご注文は?」
カウンターから、ガッチリした肉体を白シャツと黒エプロンで覆った褐色の肌のスキンヘッドの中年男性な店主が笑顔で声をかけて来た。
「あ、すみません取り敢えずみんなで食える物をお願いします」
輪人が声をかける。
「お、お客さん! ゆ、勇者様じゃないですか!」
店主が輪人達の正体を見抜いて叫び駆けつける。
「え? ここでバレた!」
輪人は驚く、何故バレたのかがわからなかったからだ。
「ど、どういうことね?」
ヒナミも驚く。
「ご店主、店を閉めていただこうか?」
純子が店を閉めるように頼む。
「勿論です!」
店主が素早く動いて戸締りをした。
「この感じからして、敵ではなさそうですわね?」
ヴィクトリアが店主を値踏みする。
「もしかして、こちら側の方でしょうか?」
桃花が呟く。
「皆様、地下の方へご案内いたします」
店主が付いて来るようにと一行を案内して、店の中を進み壁に隠していた地下への階段を開ける。
「あ、この紋章はジーラの♪」
地下に降りて辿り着いた広間の中央の壁には、向日葵の紋章が飾られていた。
「なるほど、身内の方でしたか」
純子が納得する。
「ただの宿場町だと思ってたら、驚きだよ!」
ヒナミは驚いていた。
「ロマンが溢れてますわね、ジーラさん♪」
基地にいるジーラの事を思い浮かべるヴィクトリア。
「私はジーラシアの民でヌビスと申します、この地でジーラ様を崇める司祭です」
店主改めヌビスが輪人達に恭しく一礼した。
「えっと、こちらこそ旅先で出会えて感謝です驚きました」
ヌビスに礼を言いつつ驚いたと言う輪人。
「いやいや、こちらもですよ♪ 皆様の事は、神託で存じておりましたが勇者様達にこの地にお越しいただけるとは思っておりませんでした草としても精進が足りませんな」
ヌビスが草と言うのに純子が反応する。
「と言う事はここ以外にも、隠れて生きる人達が各地にいると?」
純子がヌビスに尋ねる。
「仰る通りです、我らジーラの民の数割はムーナの地に潜んで生きております」
ヌビスが語る。
「地下組織としてネットワークがあるのはありがたいですわね♪」
ヴィクトリアが微笑む。
「ヴィクトリアさん、悪役笑いしてますよ?」
桃花がツッコむ。
「俺達に協力できる事ってありますか、悪人を倒せとか?」
輪人がヌビスに尋ねる。
「ありがとうございます、ですがこの地は平和な方なので情報収集が仕事となておりますので大丈夫です♪ それよりも、勇者様達にお食事や休息などの旅のお世話をさせていただきたいのですが?」
逆にヌビスが輪人達に尋ねてくる。
「はい、じゃあ食事をお願いします♪」
輪人が頼む。
「かしこまりました♪ 奥の食卓でお待ちくださいませ♪」
ヌビスは笑顔で、地上の厨房へと戻って行った。
そして、ヌビスに言われるままに進むと明かりの付いた小ぎれいな部屋に着く。
「おお、ここも良い感じにテーブルや椅子があるよ♪」
ヒナミが喜んだ。
「地上階はファンタジーの酒場風でしたが、地下は家カフェっぽいですね♪」
桃花の感想に皆が頷いて、丸テーブルの食卓に着いた。
一行が待ていると、ヌビスが巨大な鍋を抱えて現れた。
「お待たせいたしましたジーラシアの味、ジャガイモと牛肉団子入りのトマトスープ麵でございます♪」
ヌビスが笑顔でテーブルに鍋を置く。
「おお~っ♪ これは美味そう♪」
輪人が笑顔になる。
「うん、これは食べがいがありそうだね♪」
純子も微笑む。
「ワ~オ♪ 御馳走だよ~♪」
ヒナミも大喜び。
「皆様、食べ多分は運動で消費しましょう♪」
ヴィクトリアも笑顔になる。
「どうぞお召し上がりください♪」
ヌビスが皿やフォークを配ってから実食を勧める。
「「いっただきま~~す♪」」
勇者一行は、全力全開で麺料理に戦いを挑んだ。
「トマトスープ、酸味と甘みと塩味が調和してます~♪」
桃花はスープを絶賛する。
「エスタ、ムイ~~~リコ~~ッ♪」
ヒナミもスペイン語で大絶賛。
「麺の茹で具合も歯ごたえも美味しい♪」
純子が笑顔で白い麺を味わう。
「ジャガイモは、カロリーが♪ 美味しいですわ♪」
ヴィクトリアも熱々のジャガイモを頬張る。
「肉団子も美味しです、玉葱も良い食感♪」
輪人は肉団子にご満悦であった。
「勇者様達にそこまで私の料理をお気に召していただけて、光栄です♪」
調理したヌビスが泣いて喜ぶほど、輪人達は彼の料理を堪能したのであった。
「「ごちそうさまでした~♪」」
一行は、巨大な鍋に入っていた麺料理を見事に完食した。
「お粗末さまでした~~~っ♪」
ヌビス、滂沱の涙で返礼する。
食後は全員で片づけを手伝った輪人達、戦隊一行。
「片付けまで手伝ていただけるとは、店に来る客とは大違い!」
食後の片づけでも彼らはヌビスに感激された。
「え? 大丈夫なんですか、上の店?」
輪人が心配する。
「あんなに美味しいのに、残念ですね」
桃花府が溜息をつく。
「まあ、私達の使命はお店を繁盛させる事じゃないから」
純子が二人に気にするなと言外に言う。
「ええ、スパイが派手に動くのは時と場合によりますわ」
映画にもなった有名なスパイ組織がある国出身のヴィクトリアも同意する。
「そうだよ、私達がジーラの力を世界に満たせば変わるよ♪」
ヒナミも二人に納得する。
「ええ、お気持ちはありがたいのですが草は目立たぬ方が良いのです」
ヌビスが申し訳なさそうに答える。
この日は輪人達は、ヌビスの店の地下で宿を取った。
翌日、輪人達はヌビスの店を出て旅立つ事となった。
「美味しい朝食もありがとうございました♪」
輪人が代表して礼を言う。
「いえいえ、我らの勇者様のお世話をできた事は光栄ですこれもお持ち下さい♪」
ヌビスが大きめの籠を輪人に渡す。
「え、中身はパンとトマトとジャガイモ!」
お土産を貰い驚く輪人。
「はい、道中皆様でお召し上がりください♪ それと、この先の街で味方のいる地図も入っております辿り着けばおのずと彼らが力になってくれるでしょう」
ヌビスが小声で告げる。
「そうですか、ありがとうございました♪」
輪人が礼を言うと他のメンバーも頭を下げる。
そして休息を終えた戦隊一行は、宿場町を出て再び街道を歩きだした。
どんな所にも味方はいたりする、支えてくれる人達の力を借りてユウシャイン達は
次の街を目指すのであった。
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