第13話 隠れ里
「先輩、思ったのですがまずはこの山に祠を作りませんか?」
桃花が円形の灰色の石を出して輪人に尋ねる。
「そうだな、出来れば村の中が良かったが」
輪人が仕方ないという顔で答える。
「あの感じだと、村の中に入るのもちょっとね」
純子が溜息をつく。
「農夫があの様子では、村に入るのに戦闘になりますわね」
ヴィクトリアが溜息をつく。
「魔王軍があの村を攻めて来た所を、助けてわからせられたら良いのに」
ヒナミも弁当のパンを食いながら呟く。
「いや、流石に他人様の不幸を願うのは駄目だ」
輪人がツッコむ。
「そうだね、何か上手い手はないかな?」
ヒナミが悩む。
「まあ、取り敢えず上の方へ行って設置しよう」
輪人が提案すると仲間達は頷いた。
小休止を終えた戦隊一行が立ち上がると同時に地面が揺れた。
「気を付けて、地震だ!」
純子が叫ぶと同時に、地面が割れて地中から飛び出す者がいた。
「ヒャッハー、地上だ~~っ♪」
現れたのは灰色の肌をしたサイの怪人としか言えない存在であった。
「お前はまさか、魔王軍か!」
輪人が叫び仲間達が戦闘態勢に入る。
「げげっ! お前らは勇者共か、こうなったらやるしかねえ戦闘員どもっ!」
サイの怪人が叫ぶと、彼が出てきた穴から戦闘員達が飛び出してくる。
「出たな、変身だ!」
輪人の叫びに合わせ、一行はユウシャインへと変身した。
「ここでお前らを倒せば俺達の天下だ、かかれ~っ!」
サイ怪人の号令に従い戦闘員達がスコップを武器に襲い掛かって来た。
「ユウシャイン、ファイトッ!」
レッドも叫び、ぶつかり合いが始まる。
「ピンクスピン、破っ!」
ピンクが身をかがめて足を箒で掃き掃除をするように回して蹴る。
蹴りと共にピンク色の衝撃波が発生し、彼女をか思うとした戦闘員達は吹き飛ばされる。
「行きますわよ、ブルーッ!」
「バレッ♪ バレットロンドだよ♪」
イエローがブルーをロッドの針にひっかっけてブルーを振り回しながら、振り回されているブルーが銃を撃ちまくる範囲攻撃を行なえばサイの怪人が連れて来た戦闘員達は瞬く間に倒されてしまった。
「さて、残るは貴様だけだぞサイの怪人!」
ブラックがサイの怪人に刃を突き付ける。
「俺の名は魔王軍獣魔部隊のライノだ、せりゃっ!」
ライノが頭を振り、鼻の角でブラックのサーベルを弾き飛ばす。
「お任せあれ♪」
イエローが飛ばされたブラックのサーベルをロッドで釣り上げる。
「隙は突かせねえよ、レッドブルファイヤー!」
レッドがブラックとライノの間に割り込み火炎放射で攻撃する。
「うぎゃ~~っ!」
ブラックの武器を弾いて体当たりを仕掛けようとした所で焼かれたライノ。
「ありがとう、レッド君♪」
「良いって事よ♪」
レッドとブラックがやり取りをして、仲間達の所へと下がる。
「ちきしょう! 俺様の皮膚が黒焦げにっ!」
ライノは肌が灰色から黒になってもまだ生きていた。
「マジか、レッドブルファイヤーが防がれたか!」
自分の中で割と決め技にしていた攻撃に耐えられて驚くレッド。
「先輩、ならば私との合体技で行きましょう♪」
ピンクが手を挙げる。
「いや、ここは私が借りを返そう♪」
ブラックも参加してくる。
「レッド、私とも合体技のおさらいしようよ♪」
ブルーも割り込んで来た。
「皆さま、敵から目を離さない!」
イエローが一人だけ真面目に言う。
「喰らいやがれ、ホーンボンバーッ!」
ライノが角を赤く光らせてから、戦隊一行へエネルギーの砲弾を発射した。
「散開っ!」
レッドが叫び、全員が散開すると敵の攻撃の着弾地点が爆発した。
「まだまだ行くぞっ!」
ドンドンと連続で角からエネルギー弾を連射するライノ、戦隊達は皆必死になって避けていた。
「飛び道具ならブルースマッシャー、ブリザードモードよ♪」
ブルーの二丁拳銃の銃口に。彼女の勇気が変換されたエネルギーfが注がれる。
「チャージアップ、ブリザード♪」
彼女が引き金を引くと同時に、勇気のエネルギーに加え女神の加護を得た青白い冷凍光線が発射されてライノのホーンボンバーすらも凍り付かせて貫きその鼻の角を砕いた。
「お、俺の角が~~~っ!」
自慢の角が消滅した事で恐慌状態に陥るライノ。
「やったな、ブルー♪」
「イェ~ッ♪」
レッドとブルーが拳を打ち合わせた、後は怪人に止めを刺すだけだと戦隊一行は思っていた。
「ちくしょ~~~っ! こうなりゃ、改造薬を決めてやるっ!」
ライノは何処からか取り出した紫の液体入りの銀のアンプルを手に持ち、己の首に突き刺した。
「もしやあれは、巨大化薬の類か?」
ブラックが驚愕する。
「マジですの? 祠をまだ設置しておりませんのに!」
イエローも驚く、彼らが持つ祠にある石はマシン召喚の為のマーカーなのだ。
「ああ! サイの怪人が巨大化を始めましたよっ!」
ピンクが叫ぶと同時に、ライノはその体をぐんぐんと巨大化させていった。
「やべえ、急いでピンクとブラックは祠を設置して来てくれ足止めは三原色で!」
レッドの指示に「「了解っ!」」と従うメンバー。
「それじゃあ、ひと狩行くよ~っ♪」
「やってやりますわ!」
「おう、美味しく焼いてやるぜ!」
「私達は急いで設置に行こうピンクちゃん!」
「了解です、すぐにダイユーシャを連れてきますね!」
レッド、ブルー、イエローの三原色は武器を構え散開。
ブラックとピンクは山の上の方を目指して走った。
「ぶっ殺~~~す!」
巨大改造モンスターとなったライノは、叫びつつ暴れ出した。
再生された角から出されるエネルギー弾は、山の麓の村へも飛んで行く。
「くそ、村の方にも攻撃が行きやがる!」
動き回りながらレッドブルラッシュで攻撃するレッド、だが巨大な改造モンスターとなったライノには大したダメージが与えられていなかった。
「ならば私が、イエローフィッシングッ!」
イエロー符がロッドにエネルギーを込める、そしてライノから放たれたエネルギー弾へと竿を振り釣り針で敵の攻撃を引っかかてライノへとぶつけた。
「イエロー、ファンタスティカ♪」
ブルーが褒めつつ冷凍光線で動きを止めにかかる。
「オ~ッホッホ♪ 私に釣れぬものなどありませんわ♪」
イエローが高笑い。
「なら、俺を釣って奴へと放り投げてくれ!」
レッドがイエローに頼む。
「了解ですわ♪」
イエローがレッドへと竿を振り引っかけて遠投する。
「おっし来い、サイ野郎~~っ!」
ライノの目の前まで飛ばされたレッドが大声で叫ぶと、当然の如く角からエネルギー弾が放たれる!
「待ってました、キャッチだぜ!」
レッドがガントレットにエネルギーを流して、敵の攻撃を受け止める。
「お返しだサイ野郎っ!」
受け止めたエネルギー弾をレッドがライノの角へとぶつける。
その一撃は再びライノの鼻の角を粉砕したのであった。
レッドも吹き飛ばされたのだが、イエローの釣り糸が伸びて来て彼を救った。
ピンクとブラックは山の上へ行くと荒らされた家などを見つけた。
「これは、山の民の集落とかだろうか?」
簡素な作りだったであろう家々は破壊され、死体が転がているのが見えた。
「この人達は、ジーラさんの民です!」
殺害された死体は褐色の肌、ジーラの民の特徴と一致していた。
「この向日葵の紋章もそうだ、彼らはこの山に追われたのだろう」
ブラックが悲しそうにつぶやく。
周囲を散策していたピンクがブラックを読んだ。
「ここは、ジーラを祀っていたんだな新しく設置しよう」
ブラックとピンクが破壊された祠跡に、自分達が持って来た石を置くと円形から金色に輝くピラミッド型に変形した。
「ジーラ、聞こえるかい? 新たな祠を設置したのでダイユーシャを送ってくれ!」
ピラミッドに向かってブラックが叫ぶと、スクリーンが浮かびジーラが応答した。
「わかりました、直ちに発進させます!」
ジーラが承諾してスクリーンが消えると、すぐにダイユーシャが合体した状態でブラック達がいる所の頭上に召喚された。
ブラックとピンクが牽引ビームによってダイユーシャに乗り込むと、レッド達の所へと戻る。
「良し、ダイユーシャが来た♪」
「巨大戦で止めよ♪」
「決着を付けましょう!」
三原色メンバーも牽引ビームでダイユーシャに乗り込んだ。
角を壊された痛みから意識を戻した巨大ライノが、ダイユーシャに気付いて殴り掛かる。
「喰らいませんよ、逆に噛みますっ!」
ピンクが操作してライノの拳を狼の頭で噛んで止めた。
「お返しは、超次元パンチよ♪」
次はブルーが操作しエネルギーを纏ったパンチを、ライノの腹に叩き込む。
殴られつつも諦めず頭突きを挑むライノ。
「頭突きは牛も得意なんだよ!」
素早くダイユーシャをレッドが屈め、相撲のように頭突きで返す。
サイと猛牛の頭突き対決は、猛牛が勝ちライノは倒れる。
「レッド君! 相手に付き合わなくて良い!」
ブラックが怒鳴る。
「こいつは相手への礼儀だよ、ブラック!」
レッドがブラックに言い返す。
「先輩、男の子の理屈は良いですから私が止めを刺します!」
ピンクが叫ぶと同時に操作して、必殺の太刀であるダイカタナ―を召喚する。
「どうしたんですのピンク?」
イエローが尋ねる。
「気合入り過ぎてるね?」
ブルーは首をかしげた。
「ピンクちゃん、決めてしまえ!」
ブラックが後押しする。
「はい、ダイカタナ―ピンク
ダイカタナ―の刀身がピンク色のエネルギーに包まれると同時に、ライノが起き上がる。
「目には目を、歯には歯を! 頭突きには刺突ですっ!」
ピンクが叫ぶと同時に、ダイユーシャが怒涛の勢いで敵の正中線を上から下まで突きまくった!
この必殺技をライノは避ける事も耐える事も出来ず、爆散した。
「こいつはひでえな、魔王軍め!」
山の上にあるジーラの民の隠れ里の惨状を見て輪人は拳を握った。
「ここの人達、ジーラの加護を願って高い所に逃げたんだと思う」
ヒナミがギターで鎮魂の曲を奏でながら呟く。
「信奉する神が異なる、ムーナの民とも相容れなかったのでしょうね」
ヴィクトリアも考える。
「皆様ありがとうございました、我が民の弔いは終わりました」
祠を通じてやって来たジーラが申し訳なさそうに戦隊一行に礼を言う。
「この里のように、ムーナの領域に取り残された人達をジーラシアへ連れて行く
と言う使命もできましたね」
桃花が拳を握る。
「ああ、彼らのような人達を助けつつ取り戻して行こう」
純子が桃花に同意した。
「それもそうだけど、ムーナを倒したりすると今度はあの農夫とかムーナの信者達が彼らみたいになりかねないのもどうにかしないと不味いよな」
輪人が頭を悩ませる。
「私は、ムーナの信奉者達が私を信仰しなくても見捨てたりはしませんわ」
ジーラが輪人に誓うように告げる。
「うん、それは頼むぜ俺達も魔王軍倒したりして頑張るから」
輪人もジーラに約束をした。
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