第12話 戦隊、旅に出る
「さて、こんな感じで良いのかな?」
年が明けて、旅をしながら事件を解決しようという方針を決めた戦隊。
ジーラによる変装魔法で肌の色が小麦色になった輪人が、赤い上着に黒のズボンに黒い功夫シューズっぽい靴と言うどことなく武道家風の姿を仲間達に見せる。
「お似合いですわ、輪人様♪」
ジーラがカメラを取り出して写真を撮り出す。
「私は、レザーアーマーにサーベルに男物の洋服か」
純子はRPGの剣士と言う感じで、シャツとズボンとブーツ言う男装の上に
茶色い革鎧を着ていた。
「ワオ、私はチャロだよ♪」
ヒナミは、青地に金で向日葵と太陽の刺繍がされた派手なジャケットとズボン。
「何と言うか、無国籍ですわねえ」
上下が黄色と黒の、海賊船長姿のヴィクトリアが言っても説得力がなかった。
「私は、ピンクのローブで魔法使い風です♪」
桃花が喜びながら、くるくると回る。
「それでは皆様、ムーナ領への旅はお気をつけて」
ジーラが心配そうな顔で五人を見つめる。
「ああ、気を付ける」
輪人が笑顔でサムズアップする。
「先輩が一番不安ですね、ターゲットですし!」
桃花がジト目で睨む。
「そうだね、リントはトラブルホイホイだし♪」
ヒナミは笑う。
「私達が言うのもなんですが、女難の相もあるみたいですし」
ヴィクトリアはため息。
「だからこそ、私達で輪人君をあの女神から守らないと」
純子は拳を握る。
「……皆さん、宜しくお願いします」
そんな風に、女性陣から不安視され少し身が縮まる輪人。
「気を付けていても、女難と言うものは襲ってきますのでご武運を」
ジーラがそう言って、魔法の光を五人に当てると輪人達は、周囲に草花が生い茂る道の上にいた。
「取り敢えず、この道を進めばまず村があるみたいだな?」
ユウキブレスを操作して検索する輪人。
「そうだね、まずはその村を無事に抜けられるかというのが不安だけど」
純子は不安そうな顔をする。
「純子さん、ここは勇気を出して行きましょう」
ヴィクトリアが微笑む。
「そうだよ、私達なら困難を乗り越えられるよ♪」
ヒナミがギターを取り出して奏でた。
「私達は、勇輝戦隊じゃないですか♪」
桃花も微笑む。
「ああ、俺達なら最初の村も乗り越えられるさ♪」
そう言って、我先にと
「あ、待つんだ輪人君っ!」
純子が輪人を追いかける。
「リントを追いかけるよ~♪」
ヒナミも走る。
「お待ちくださいませ~♪」
ヴィクトリアも笑顔で駆け出す。
「皆さん、待って下さい~♪」
桃花も追いかける、こうしてユウシャイン達は冒険へと駆け出した。
のどかな景色を流して走るユウシャイン達。
村に近づくごとに牛を放牧をしている農夫など、現地の人達が見えて来た。
「ま、魔物が出ただ~っ!」
放牧していた農夫のおじさんが平和を斬り裂く悲鳴を上げた。
「皆、方向転換だ~~っ!」
「「応っ!」」
輪人が悲鳴の方向へ方向転換するとメンバーもそれに全速力で追従する。
「おじさ~ん、大丈夫ですか~?」
輪人が農夫に声をかける。
「敵影発見、バイク位の芋虫?」
純子がサーベルを抜く。
「私、釣りだけでなく斧の腕前もありましてよ♪」
ヴィクトリアはどこからか幅広い戦斧を取り出した。
「オ~ラ~♪ 行くよ~♪」
ヒナミも二丁拳銃を取り出す。
「私は、メイスです!」
桃花はメイスを取り出す。
「だ、誰だあんた達は?」
農夫は突如自分と芋虫の魔物の前に立ちはだかった個性的な武装集団に驚いて腰を抜かした。
「俺達は、旅の冒険者だよ!」
輪人が農夫に叫びつつ、芋虫の一匹に飛び蹴りを放つ。
「キュピ~~!」
芋虫は悲鳴を上げて死んだ。
「危ない、輪人君っ!」
蹴りで芋虫を倒した輪人へ迫る新たな芋虫を純子が切り捨てる。
「牛さん達に近づかせないよ~♪」
ヒナミも二丁拳銃で複数体の芋虫を撃破して行く。
「我が家の薪より柔らかいですわ♪」
ヴィクトリアも戦斧で芋虫の頭をカチ割って行く。
「魔法を使います、ピンクビート!」
桃花がメイスで地面を叩けば、ピンク色の衝撃波が大地を走り敵だけを襲い撃破して行く。
かくして、突然のエンカウント戦闘は終了した。
「ふう、魔王軍以外の魔物と戦ったのはこれが初めてかな?」
輪人が周囲を見回して呟く。
「そうだね、しかしこれも魔王軍の仕業かな?」
純子は思案する。
「おじさん、大丈夫?」
銃を降ろさず農夫に問いかけるヒナミ。
「そこの農夫の方、色々とお話を伺えませんこと?」
ヴィクトリアも斧を見せたまま農夫に尋ねる。
「私達にご協力をお願いいたします」
桃花もメイスを見せる。
「いや、皆待ってくれ! 助けた人を脅かすのは駄目だろ?」
輪人が農夫と仲間達の間に割って入る。
「あ、あんたら何者だべ? た、助けてくれ!」
農夫は怯えていた。
「おじさん、神様は誰を信じてる?」
輪人は農夫に尋ねてみる。
「か、神様? ムーナ様だべ! 兄ちゃん、助けてくれ~っ!」
農夫は倒れたまま、輪人の足にしがみつく。
「うん、そうだよねところでジーラって神様は知ってる?」
輪人が自分もすがる農夫に尋ねる。
「ひ、日照り神ジーラが何なんだべ? ムーナ様に負けた太陽の女神だべ!」
農夫が叫ぶ。
「ああ、そう言う神話なんだ? おじさん、俺達ジーラの使徒なんだけど?」
輪人がそう告げると、農夫は離れて土下座した。
「い、異教徒? 命だけは、お助け下せえ~っ!」
農夫、自分を助けたのが武装した異教徒だと知り命乞いをする。
「う~ん、じゃあおじさん帰って良いよ?」
ヒナミが告げる。
「確かに、有益な事は聞けそうにありませんしね」
ヴィクトリアが呟く。
「うん、私達に助けられたことは黙って牛を連れてお帰り下さい」
純子も農夫に帰っていいと告げる。
「そうですね、魔物が来た方に向かいましょうか?」
桃花がそう言うと皆が頷く。
「じゃあおじさん、お達者で」
輪人が声をかけるが、農夫は牛を追い立てながら逃げ出して行った。
「第一村人との遭遇の成果は二割ほどかな?」
純子は冷静に分析する。
「いや、武器降ろして話せばもう少し行けたのでは?」
輪人が純子に問いかける。
「先輩、ワシントンは斧を持っていたから許されたんですよ?」
桃花がとんでもない事を言う。
「リント? 悪党は天使の顔してるんだよ、メキシコのばっちゃが言ってた」
ヒナミが謎のうんちくを語る。
「輪人様、武力無き交渉など無意味ですわ♪」
ヴィクトリアが笑顔で語る。
「いや、あのおじさんはただの牛飼ってる農家の人だろ!」
輪人が仲間達に突っ込む。
「輪人君、農民というのは隙あらば旅人を手にかけるとかしてたんだよ日本でも」
純子が輪人を諭す。
「あのおじさんは、ジーラさんを日照り神とか負け女神と言ってましたし異教徒に対する反応もおかしかったですから恐らくはムーナの支配のせいかと?」
桃花が冷静に分析を始めた。
「このまま村に行くのは止めた方が良いですわね」
ヴィクトリアが険しい顔をする。
「いや、おそらく平和な村の警戒レベル上げたの俺達のせいだから」
輪人のツッコみは追いつかなかった。
かくして、第一村人との接触に失敗した戦隊一行は村に入るのを諦めて芋虫達が来た方向を目指す事にした。
「あの芋虫達が野性の物だとして、もしかして魔王軍に追い立てられたのかな?」
予定を変更して山道を進む輪人。
「だとしたら、私達の戦隊パワーの出番だよ♪」
ヒナミがユウキブレスを出して見せる。
「そうだね、なるべく戦隊パワーは温存して行こう」
純子も歩きながら頷く。
「皆さま、なにやら小屋がありますわ?」
ヴィクトリアが行く手の先に簡素な木でできた小屋を見つける。
「無人ならば、休憩に利用させていただきましょうか?」
桃花が仲間達に尋ねる。
「ああ、少し休みを取ろうぜ皆」
輪人が桃花の言葉に乗った。
「ですわね、村での宿は期待できそうにありませんし」
心に棚を持つ女であるヴィクトリアも同意した。
「そうだね、馬小屋に泊めさせられるとか毒を盛られるとか襲われかねないし」
純子が怖い事を言う。
「純子姉さん、怖い事言うなよ?」
輪人がビビる。
「先輩、日本みたいに安全な場所は少ないんですよ?」
桃花が輪人を諭したりして歩くうちに小屋に辿り着く。
「ごめん、これはちょっとないな」
輪人が口を手で押さえながら言う。
「猟師や樵が使う小屋なのでしょうが、これはいただけませんわね」
ヴィクトリアも足を止める。
「これは、焼き払ってから私達が小屋を作った方がいい位だな」
純子も苦い顔をする。
遠くからだとわからなかったが、近づいてみると粗雑な作りで掃除などされておらず汚れた小屋だった。
「皆さん、先に進みましょう」
桃花が先に背を向け皆がそれに続く。
そうして彼らが山を登って行くと、開けた場所に出た。
「ワオ♪ 何かここ懐かしい感じがするね♪」
ヒナミが採石場に似た場所を見て声を上げる。
「あら♪ アクドーイと戦ってた場所に似てますわねえ♪」
ヴィクトリアもちきゅでの戦いを出して微笑んだ。
「採石場に似てますね、懐かしいです♪」
桃花も懐かしむ。
「そうだね、奴らとの決着はまだ付いていないけれど懐かしい」
純子も想い出しながら呟く。
「そういえば、アクドーイの奴らと戦ってる最中だった!」
今更ながらこれまで戦っていたメイン敵を倒していない事に頭を抱える輪人。
「まあ、あのムーナによるレッド交代騒動が悪いのですしアクドーイに関しては暫くは他のヒーローにお任せしましょう♪」
ヴィクトリアがユウキブレスを操作すると、虚空から敷物と茶器類と弁当が出現したので彼女がキャッチした。
「そうだね、ヴィクトリアがお弁当とお茶を出してくれたし警戒しながら皆でお昼にしようか♪」
純子がヴィクトリアの言葉に同意する。
「そうですね、アクドーイも心配ですがまずはこの世界の事を片付けましょう」
桃花がシートを地面に敷いてその上に茶器を並べる。
「気にしても仕方ないね、エレトさんのお弁当食べよう♪」
ヒナミは呑気にシートに座った。
「では、私がお茶を淹れますわね♪」
ヴィクトリアが皆にお茶を入れていく。
「そうだよな、何はともあれ一休みするか」
仲間達の空気に輪人も乗っかる事にした。
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