第9話  戦隊、異世界の海へ出る

ジーラベースのブリーフィングルーム、円卓の中心から赤い光球が浮かび上がる。

 「事件か? 場所は何処だ!」

 輪人達が駆け足で入って来ると、赤い光球と入れ替わりに青い光球が浮かび上がり

この世界の地図を映し出す。

 「これ、海の上だよね?」

 ヒナミが目を見張る、ユウシャインでは彼女が海や水の担当だったからだ。

 「海か、海だとダイユーシャは性能が落ちるな」

 純子が苦い顔をする。

 「地球でも、アクドーイとの戦いでは海の敵には苦戦しましたね」

 桃花も地図を睨む。

 「水中戦用のオプション類もあの時、こちらへ持って来ていれば!」

 ヴィクトリアも悔しがる。

 彼女達はダイユーシャだけ持ち出して輪人の所へ駆けつけて来たので、オプション装備は地球の基地の倉庫の中だった。


 「ご安心ください皆様、海や水でも平気です♪」

 ジーラが微笑む、それと同時に二人の人物が入って来た。

 「ケロケロ♪ 私達の出番ね、エレトちゃん♪」

 「今回は皆で出動ね~♪」

 ユウシャグリーンことケトと、ホワイトことエレトであった。

 「オ~♪ カエルの神様のグリーンと、カバの神様のホワイト♪」

 ヒナミが理解して微笑んだ。

 「そうでした! お二人は水にご縁のある神様♪」

 桃花が納得した。

 「そうか、二人のメカは水陸両用か♪」

 純子も察した。

 「と言う事は、ジーラのメカと合わせて二号ロボができるか♪」

 輪人も気付いた。


 「ピンポ~ン♪ 私のホワイトタマスとケトちゃんのグリーンフロッグ♪」

 エレトが笑う。

 「そして、私のゴールドファルコンとヒナミさんのブルーライナーの四体が合体したコダイユーシャの力をお見せします♪」

 ジーラが拳を握った。

 「オ~♪ 私も頑張るね♪」

 ヒナミは拳を突き上げた。

 

 「他の皆は、エレトちゃんのホワイトタマスに乗ってね♪」

 ケトが笑うと、全員が円卓の席に着くと椅子が地下へと沈む。

 沈んだ席は、ケトは緑の蛙型メカにヒナミはブルーライナーにと格納される。

 ジーラの席は金色の隼型メカに格納され、他のメンバーは全員が白い河馬型メカに格納された。

 「何だか、戦艦とかのブリッジみたいだな」

 輪人が周りを見回すとエレトが後ろの艦長席の位置に座っていた。

 「確かにそんな感じだな、我々も何か操作を?」

 純子がエレトに尋ねる。

 「そうです、私達もただ乗せてもらうだけでは!」

 桃花も何かできないかと気になる。

 「桃花さん、それはおいおい伺いましょう」

 ヴィクトリアは落ち着いていた。

 「ああ、まずは出動だ!」

 輪人が叫ぶ。

 「任せて~♪ ホワイトタマス、出航しま~す♪」

 エレトが穏やかな声を上げて舵輪を回すと、格納庫のハッチが開きホワイトタマスが駆け出して海へと飛び込んだ。

 それを追うように、グリーンフロッグも基地から飛び出すと最後にゴールドファルコンが両足でブルーライナーを挟んで飛び立った。

 

 ユウシャインが出撃した頃、北側にある女神ムーナの領海では青いパネルを帆のように展開している黒いガレオン船に似た船と、巨大な槍のような灰色の巻貝が戦っていた。


 ガレオン船は、北方の国スウェーランドの魔導軍艦まどうぐんかん

 巻貝の方は、魔王軍の海魔部隊のモンスター軍艦だ。


 魔導軍艦が船体の脇の砲塔から青い光の砲弾を発射して、モンスター軍艦から出て来た船幽霊達を攻撃する。

 軍艦のブリッジでは、地球の軍服に似た青い軍帽、青のダブルのブレザーにスラックスと言う青で統一された服装をした黒髪に褐色の精悍な顔つきの中年男性が

艦長席で部下達に指示を飛ばしていた。

 「動力魔導士官は急げ、マストの魔導パネルにエネルギーを溜めろ!」

 館長の指示に従い、ブリッジ内で水兵たちが動きまわる中で一人の士官が自分お席で水晶玉に魔力を込めていたが席に突っ伏した。

 「艦長、士官殿が魔力切れです!」

 「至急、砲術魔導士官をこちらに回せ!」

 魔導軍艦とは、その名の通り乗組員の魔力で航行や戦闘を行う軍艦である。

 スウェーランド国海軍は、他国に出遅れる事五年かけてこの試作魔導軍艦を完成させて試験航海に出たばかりであった。


 「くっ! もはや、女神ムーナに祈るしかないのか!」

 艦長はそう言いつつも状況把握に努めて、頑張ろうとしていた。


 一方、モンスター軍艦の中は敵側とは違っていた。

 「エ~ビッビ♪ 死霊共、ラム酒を飲め飲め暴れろ~♪」

 艦長になったエビ―だがこちらは海賊の頭のノリであった。

 それもそのはず、こちらは海賊のガイコツ達を手下にブリッジで宴会をしながら戦っていたのだ。

 「キャプテン、次はどうしやすか?」

 手下のガイコツがエビ―に尋ねる。

 「おう、なら次は潜水してみるか?」

 エビ―が嫌らしく笑う。

 この巻貝型のモンスター軍艦は、潜水艦でもあるのだ。

 「あいさいさ~♪ 船幽霊共はどうしやす?」

 「元から死んでるから気にするな~♪」

 エビ―が身もふたもない事を言うと、モンスター軍艦は海の中へと沈み出した。


 その様子を見た魔導軍艦の艦長は敵の狙いに気付いた。

 「いかん、奴らの船は水中に潜れるのか! 総員、急いで逃げるぞ魔力を回せ!」

 魔導軍艦も、水中の敵への備えはできていなかった。


 絶命のピンチに陥った魔導軍艦のクルー達。

 だが、彼らに予想も想像もできない所からの救いの手がやって来た。

 「艦長、今度は白い巨大な河馬と、青い槍を挟んだ黄金の鳥と緑の蛙が接近してきます!」

 オペレーター担当士官が叫び、ブリッジ何にスクリーンが浮かび上がる。

 「……そんな馬鹿な、女神ムーナは我らを見捨てたのか!」

 艦長が嘆いた。


 潜水をしたモンスガ―軍艦も、一気に酔いが醒めた。

 「キャプテン、こちらのレーダーに新手を確認あれはまさか勇者って奴じゃ!」

 副長の骸骨がエビ―に聞いてくる。

 「いかん、勇者が出て来るなんて聞いてないぞ!」

 モンスター軍艦のレーダーには勇者達の魔力が判別できていた。

 「ええい! もう示威行動は止めるぞ、浮上して逃げるんだ! 次は巨人が出て来るはずだ!」

 死霊部隊から共有された情報から、エビ―は勇者達のパターンを知っていた。

 だが、知っていたから対策ができるとは限らなかった。

 モンスター軍艦を急浮上させると、予想通り彼らを断罪する巨人が現れた。


 「皆~♪ そろそろ戦闘するから変身しましょう♪」

 ホワイトタマス内でエレトが母性溢れる声で告げる。

 「思わず、童心に帰りそうな素敵な声だな」

 「この母性、強敵です」

 「実家の乳母を思い出しましたわ」

 「は~い♪」

 それぞれがエレトについて思う中、輪人だけは彼女の母性に当てられていた。

 そして変身するユウシャインの面々。

 そこにゴールドから通信が入った。

 「ホワイト、グリーン、皆さま、合体の時です♪」

 ゴールドが合体を宣言する。

 「ケロケロ~♪ 蛙のパワー、ユウシャグリーン了解よ♪」

 「河馬のパワー、ユウシャホワイトも了解♪」

 ホワイトとグリーンが応じて、合体が始まった。


 ホワイトタマスが、カバが直立歩行するように立ち上がると河馬の頭が胴へと摺度する。

 ゴールドファルコンも、隼の頭部が胴体と分離し頭部は落ちてホワイトタマスの新たなヘッドになり翼付きの胴体はホワイトタマスの背部に合体。

 ファルコンが離したブルーライナーはホワイトタマスの右腕に合体。

 グリーンフロッグはホワイトタマスの左腕に合体した。


 隼の頭を持ち、河馬の頭の胴、蛙の左腕と列車の右腕を持つ勇輝戦隊ユウシャインの二番目の巨大ロボ。

 その名も、コダイユーシャが誕生した。

 「完成、コダイユーシャ!」

 合体後の名乗りはゴールドが決めた。


 この光景を見た魔導軍艦もモンスター軍艦も、双方が驚愕して身動きが出来なくなった。

 合体後のコダイユーシャの胴体部分に、ユウシャインが全員集合した。

 「あ、コダイユーシャは全員同じコクピットになるんだ」

 レッドが少し驚く。

 「ご飯も戦いも皆一緒よ♪」

 ホワイトがマスクの下で微笑む。

 「そうだな、皆で戦おう♪」

 ブラックが納得する。

 「そうですね、私も頑張ります」

 ピンクも同意した。

 「では皆で、あの巻貝を捌きましょう♪」

 イエローがマスクの下で釣り人の目になった。

 「ケロケロ、黒い船の方も助けましょう」

 グリーンは魔導軍艦側を心配した。

 「では皆さん、参りましょう♪」

 ゴールドが音頭を取り、巻貝ことモンスター軍艦に向かい突進した。


 「げげっ! こっちに来た、砲撃だ!」

 エビ―の命令でモンスター軍艦から、黒い怨霊の砲弾が発射される。

 だが、その攻撃はコダイシューシャに直撃するも相手は無傷だった。

 「ケロケロ♪ 神が三柱も乗っている神器に怨霊何て強制浄化よ♪」

 グリーンが笑い、スティックを操作する。

 「タングホイップ、受けて見なさい!」

 お返しにと、左腕となったグリーンフロッグの蛙の頭から舌がムチの如く飛び出しモンスター軍艦を打って巻きつける!

 「イエローちゃん、ヒットよ♪」

 グリーンがイエローに操作を頼む。

 「お任せあれ、釣り上げですわ♪」

 今度は自分の席でイエローが操作を行い、モンスター軍艦をグリーンフロッグの舌で釣り上げては海面に叩きつけた!

 

 「ぐえええ~~~っ!」

 モンスター軍艦の内部ではエビ―があちこちに体を叩きつけられて苦しんでいた。

 「あの河馬と鳥と蛙が合体した巨人は、味方なのか?」

 魔導軍艦では艦長が驚いていた。

 「艦長、どうされますか?」

 オペレーターが指示を仰ぐ。

 「決まっている、全速回頭して脱出だ!」

 魔導軍艦は、自分達の魔力を総動員してこの海域から逃げて行った。


 「皆さん、あの黑い軍艦が脱出して行きます!」

 ピンクが魔導軍艦の離脱を確認した。

 「良かった、人的被害は無しだな♪」

 ブラックも安堵する。

 「よっし、ダイカタナ―を召喚してぶった切ろうぜ♪」

 レッドが叫ぶ。

 「オ~♪ 私も賛成だよ~♪」

 ブルーもレッドに同調した。

 「では、止めはゴールド様にお願いね~♪」

 ホワイトがゴールドに話を振る。

 「では、ダイカタナ―召喚です!」

 ゴールドが叫ぶと、天から陽光と共にやって来た真紅の太刀がコダイユーシャの右腕に掴まれる。

 「行きますよ、ダイカタナ―黄金三角おうごんさんかく斬りっ!」

 グリーンフロッグのタングホイップで空中へと放り投げられたモンスター軍艦。

 そこに止めで、真紅の太刀が黄金の三角形を描くように光る刃を走らせた!


 モンスター軍艦は、中にいたエビ―ごと爆散し光の粒子となって消えたのであった。

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