赤緑のプレゼン⁉‼

秋月そらノ

第1話 テーマ討論!!

 「ぱっぱかっぱーん!!!!今から、物語のテーマ決めを行います!・・・気合い入れろー!!」

 突然、ふすまが大きな音をたてながら、開いたと思ったら、いきなりそんなことを勢い良く言われた。僕が驚きすぎて固まっていると。

 「どうしたー!返事は?・・・元気よく!!」

と言う。

 「いきなりどうしたの?恵未えみちゃん?徹夜明け?深夜テンション?」

と僕が驚きのあまりおどおどしながら、聞くと彼女は、

 「?」

と首をかしげる。あー、深夜テンションじゃなくても、似たような感じかな。寝てもらおう。

 「とりあえず、寝ようか。ほら、布団しいて」

 「何を言ってるの?今から、討論するって言ってるじゃん」

どうしよう、こっちのセリフだし。本当に何を言ってるのかわからない。

 「えーと。・・・どういう意味か教えてもらっていい?」

 「ふ。私は今日締め切りの仕事は終わった。まだ、他にも仕事があるが、余裕があるし、テンションが上がってる。なら、君の小説のテーマを決めようと、さっき仕事の休憩中に思った!!」

いや、仕事をしろ。というか、ちゃんと休め。今回の仕事は徹夜に近かったはずだ。今は、午前10時はまわっている。仮眠はとったのかもしれないが、眠そうである。足はふらふらとしているし、よく見ると、目はどこか遠くを見てるように見える。長い髪が、ぼさっとしてたり、前髪の一部は目にかかっており、明らかに空元気に見える。一つため息をし、何とか説得をする方向でことを進めることに決める。

 

 何とか眠らせることに成功し、一人こたつでくつろぐ。まぁ、寝ればさっきの発言も忘れるし、スッキリして頭の中もまとまるだろう。そう信じてる。うん、たぶん。

 いきなり大きな声で叫んでいた彼女は、勅使ケ原恵末てしがわらえみという。僕の彼女で同棲をしている。彼女は、Emiiとしてイラストレーターとして活動している。たまに、笑未という別の名前でもやっていたかな。彼女の絵は本当にきれいで上手い。プロに言うことでもないが上手いのである。自分が素人のためこんな感想しか出てこない。彼女は、仕事中はたまーに情緒不安定になるが、基本的には明るい性格のため本当に助かっている。

 それにしても、急に小説のテーマといわれ、びっくりした。確かになー、とも思う。自分は小説家の卵と言っていいのかもわからないが、投稿サイトなどに投稿している。今、取り組もうとしているコンクールの小説のことを彼女が言っていたということはわかる。自分もだすことは決めていたが、内容がまだまとまってないのである。でもなー、とも思いながら、ゆるりと過ごす。


 「おはよ~う」

いかにも眠そうな声を出しながら、恵末が居間に入ってくる。何もなかったことにしようと思い、挨拶を返す。

 「おはよう。仕事お疲れ様」

 「うー。ありがとう」

どうやら、まだ眠いようだ。これは、寝る前に言ってたことは忘れたな。と内心ニヤリとしていると。

 「あーそうだ。夜にでもやるよー」

と気が抜けたように言ってくる。

 「えーと?なにを?」

 「言ったじゃん。小説の題材決め」

と真顔で返さた。忘れてなかったらしい。


 夜。居間にてこたつを二人で囲み、僕の前にはパソコンが置かれている。

 「さぁ、始めようか。いくぞー!!」

 「あぁ、うん」

 話し合いが始まる。

 「さてどこまで、考えているか聞こうか?」

 「えーと、、」

細かくは考えていなかったが、ほこっとするようなや、家族、人とのつながりをテーマにするのはどうかという話をしてみる。

 「なるほど、そこまでは考えていると・・・」

机に置いている、缶の中身をぐっと飲み、缶を音が出るほど勢いよく置きいう。

 「やばいじゃない。締め切りはいつ?もうすぐでしょ!!」

 「いや、まだあるよ。あと、一ヶ月」

と顔を伏せながら言う。

 「えー。やばい自覚はあるんじゃないの。だから顔を伏せてるんでしょう??思いついても文字に起こすのは時間もかかるよー?」

 「わ、わかってるよ」

彼女が言ってることはもっともである。だからこそ、今日、決めるぞーと言い出したんだと思っている。それを聞いて正直焦った。でもなー、とも思う。何も思いつかないのも事実なのだ。

 「ふぅー。・・・でどうする?方向性はそれでいいんだろうけど・・・」

 「そういえばなんだけど、なんでお酒片手になの?別にいいんだけど」

 「性癖語るのにアルコールは必要でしょうが!!素面でできるかー」

と勢い良く言った後に、声高めに恥じらうように、「もう、そんなことを女の子に言わせるなんて、、、エッチ」と言ってくる。 くっ、かわいいけども。なんてねと言いながら、肩まである髪を揺らしながら笑う。わかってたけどさーとも思いながら、一息つきながら、彼女を見る。本当に彼女と一緒にいると楽しい。まぁ、現在自分でずらしたとはいえ、話はぶれたけど。

 あーでもない、こーでもないと言いながら、話し合いは進む。

 「心温まる物語を募集してるわけでしょ?コンテストの名前なんだっけ?」

 「「赤いきつね」「緑のたぬき」幸せしみるショートストーリーコンテストだよ」

 「そうだった。そこに赤いきつねや緑のたぬきを絡ませるとわけでしょ。そのへんどうなの?」

 「こういい感じに。・・・食べて思い出すとか」

どんどん声が小さくなってしまう。

 「ほう。じゃあ、食べるか。実際に食べた方がいいでしょ」

 「そうだね。じゃあ、明日買ってくるよ」

 「うん。さて、その上でジャンルをどうするかだよ」

 「現代ドラマ?ファンタジー?かなー」

 「ほう、その心は?」

 「CM見たことない?赤いきつねや緑のたぬきを食べるときつね?の耳の美女が出てくるんだよ、あと思い出があふれ出していたり・・・」

 「ふむ。日和ひよりは美女に会いたいと.....?」

 「なんか、語弊があるけど、出てきてくれるなら会いたいってことになる?のかな」

と言うと、急に、

 「こんなに可愛い彼女と暮らしておきながら、もうこんな生活は嫌だと?」

と泣き崩れるように言ってきた。うーん。なんか、噓泣きっぽい。それでも、本音は伝えとくか。

 「会えるなら会いたいけど、一緒に暮らして、生活したいのは恵末ちゃんだけだよ。・・・だからさぁ、・・・泣かないで、ね」

と言う。それを聞き、しばらく机に突っ伏したまま、

 「・・・わかるよ」

とこ小声で言う。なんだろう。何が後に続くのだろうか。ばっと体を起き上がらせ、

 「私もあんな美女に会えるなら会いたい。かわいいもん。会えるならさぁー」

と勢い良く言ってくる。思わず、あっけにとられ、後から笑みがこぼれる。まぁ、少し安心したかな。いつも通りで。

 しばらくして、彼女は言う。

 「私との生活でもいいんじゃないの?」

 「うーん、どうだろう」

とごまかしたように言うと、

 「私との生活温かくない!?そんなに嫌?」

と言われ、笑い合う。そんな感じで会議は進み、夜も深まっていた。

 そして、時間も良いころ合いになってくる。

 「童話のアレンジも良いと思うわけよ。よくあるじゃない。童話を基にしたお話」

確かにとも思う。問題はなにをだ。

 「・・・マッチ売りの少女とか?」

 「うんそれもいい。でも、シンデレラや赤ずきんもいいかも」

またここから話がはずみ、ヒートアップしてくる。取集がつかなくなってきたので、今回はこれでキリをつける。

 「わかった。じゃあ、3日後にアイデアプレゼン対決といこうじゃない!!」

と言って、今回の話は終わった。


 3日後の夜、二回目の会議が開かれる。居間で先に僕は待っている。恵末ちゃんは仕事なのか部屋から出てこない。締め切りが重なって忙そうにしてたので、そんな中僕の作品についても考えてくれてることがありがたい。

 待っていると、いきなり勢いよくふすまが開く。

 「さぁ、始めよう。愛のプレゼン大会だーー!!」

デジャブを感じる。


 「さぁ、どうだ。どっちから発表する?」

テンションがやたら高い。まじで。仕事終わりなのだろうか。休まなくて平気なのかと心配していると、

 「じゃあ、私から。ファンタジーを入れるといいと思うの。ケモ耳の美少女がでて・・・童話だったら、赤ずきんとか・・・・」

と熱弁し始めた。そして、

 「こんなイラストとかどうだろう!!」

とイラストが出てきた。そこには、きつねや猫といった動物の耳、尻尾がついたかわいい美少女イラストだった。

 「ふん。3日で仕上げました!!徹夜しちゃったけど。出来立てほやほやだよ!!」

と胸を張りながら言ってくる。どうやら、仕事ではなかったらしい。

 

 そして、僕の番になり、語る。僕は彼女みたいにイラストと言ったものなど準備してないが自分らしく語ろうと思う。

 「僕は、童話という観点から、マッチ売りの少女を基にして、カップ麵にお湯を入れると・・・、いろんな思い出や記憶、物が見れて・・・・・・」

と話し終わる。彼女を見てみると机に突っ伏して寝ていた。いい顔して寝ている。まぁ、忙しかっただろうしと思いながら、こたつに入っていないところに毛布を掛けてあげる。

 「ありがとう。お疲れ様」

 僕は、彼女を尊敬している。絵が上手いからだけではない。作品一つ一つに真剣に向き合って仕事に取り組むのだ。かっこよくて、見習いたいと思っている。いつも助けてもらっているなーと思いながら、パソコンを開き、向き合う。


 「うーーーん」

 目が覚めて、背を伸ばす。寝ぼけた頭で周りを見る。どうやら、寝てしまったらしい。目の前の彼もパソコンを開いたまま眠っていた。パソコンの画面を見て笑みがこぼれてしまう。かけてもらっていた毛布をかけてあげる。

 「お疲れ様」

と起きないように小さな声で言う。彼は私のことをよくほめるけれど、彼だってすごいのだ。スイッチの入った彼はすごい。集中力もすごいし、作品への真剣さも尊敬している。いい彼氏という以外にも私にとっては、クリエイターとしていいライバルと思ってる。

 「休んだし、動かないと」

 私も彼に負けないように―――――

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