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 ぼくは廃墟と化したニューヨークにそのまま居着き、日がな日向ぼっこをして暮らしていた。断食したくらいで死ねれば世話はないわけで、飯を食っても食わなくてもほとんど何も変わらないが、たまに海水をがーっと飲み込んで魚を漉しとって、食事をする。鯨がやってるやり方を真似てみたんだ。


 どうも、人類の科学技術などでは僕をどうにかする手段はいまだに見つからないらしい。たまに戦車などが近づいてくることはあったが、脅かしてやると逃げていく。砲撃されることもあるが、もはやその程度のことで痛痒すら感じることはない。


 だが、今日は様子が違った。夜、星空を眺めていたら、見た事のない飛行物体がぼくの方に向かって飛んでくるのが見えた。長官がNASAの予算を使って何か新しいものを開発させたのだろうか、ぼくをどうにかするために。しかし、それにしてもヘンテコなデザインだった。時代錯誤というか、昔のSFに出てくる宇宙船、そのものだった。


 そこから、何かが地上に降り立った。僕の眼からでは小さな粒のようにしか見えないが、それが見る間に巨大化した。すごい。素晴らしい。ぼくの倍々での増大など比較にならない、すさまじい『変身』だった。


「デュアッ!」


 そいつは、まさに『巨人』としか言いようのない、しかしスマートなシルエットをしていた。僕が肉の巨人であるのなら、そいつは光の巨人だろう。僕よりは小柄だが、今のぼくの体格に伍することのできる大きさがあった。


「シェアッ!」


 そいつは、僕に向かって素手(こういうのを、人間がする動作がそうであるのと同じように素手と表現していいのならば、だが)で、パンチやチョップで、攻撃を仕掛けてきた。面白い。相手になってやる。


 組み手が始まる。丁々発止のやり合いになった。ぼくはただの膨れ上がった元人間だから炎を吐くことも分身することも何もできないが、とにかく体だけはでかいから、それなりにさまになる戦いを演じることができた。だが、向こうは明らかに『戦い慣れている』雰囲気だ。僕とは違う。このような大きさを持った存在で、そして自分と同じような大きさを持った相手と戦い慣れている、何者か。地球外の生命体、地球外の知性体だろう。どうか願わくば、これから人類との間に適切なコンタクトを構築し、人類の科学の曙を切り拓くことに貢献して欲しいものだ。


 さて。


 戦いはどうやら、佳境に入ったらしい。相手は、腕をクロスさせた。その腕の先から、なんだか分からないが、何かビームのようなものが照射される。エネルギーは感じなかった。熱でもない。


「シュワッ!」


 だが、その光の刃は確かに、ぼくの中の何かを破壊した。それが分かった。ぼくは地に倒れ伏す。ああ、多分、これで、死ねるのだ。と、光の巨人は僕を抱え上げ、飛び立った。あっという間に速度が上がり、成層圏を突破する。宇宙空間だ。地上が見える。僕の意識は薄れていくが、まだ見ることはできる。地球が見える。


 ああ、地球は。なんと青く、美しいのだろうか。

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ふくれあがる きょうじゅ @Fake_Proffesor

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