「指輪物語」を読もう
さて、例によってクレーム欄に来たお便りを読んでみることにしましょう。
今回は練馬区にお住まいの宇宙店主さんからです。え? いつも宇宙店主からのクレームだって? チッ。宇宙店主くらいしかクレームをよこしてくる奴がいねぇのよ。
「『指輪物語。』ってナニ?
先ずはこの『指輪物語』の詳細を、原稿用紙……ウゥゥン、そうだなぁ……。一〇〇〇枚ッ! 一〇〇〇枚位に収めて描いてくれる?」
というわけで、指輪物語の話をしていきます。後悔すんじゃねぇぞ。
今回は敢えて縛りを設け、一切の下調べや裏取りを放棄して、記憶のみを頼りに書くこととします。違います。暑いから省エネで書こうとか思っているわけではありません。
「指輪物語」は「ホビットの冒険」とともに、現代ファンタジーの祖とされる作品です。「ロード・オブ・ザ・リング」という名前で知っている人もいることでしょう。
この小説群をもとに、「ダンジョン&ドラゴンズ」といったテーブルトークRPGが生まれ、その影響で「ウィザードリィ」「ウルティマ」といったコンピュータRPGに発展しました。その後、「ドラゴンクエスト」を始めとする和製ゲームや和製ファンタジー小説につながっていきます。
著者はJ・R・R・トールキン。オックスフォード大学の言語学の教授です。彼は生涯の研究として、新たな言語を生み出すことを選びました。おとぎ話に残る妖精族エルフの言語です。彼らが実際に生きていたらどんな言語を話したのでしょうか。
それを考えるためには歴史が必要でした。どんな言葉も歴史によって生まれ、歴史によって変わっていくからです。その歴史はやがて壮大な創世神話となり、壮絶な戦いの記録となりました。
ある時、トールキンの書いたおとぎ話が出版される運びとなります。それは、彼の子供たちのために寝物語として語っていたものでした。
ホビットのビルボのもとに、厄介ごとを持ち込む魔法使いのガンダルフが現れ、13人のドワーフを連れてきて冒険に連れ出すところから、物語は始まります。彼らが目指すのは祖先の故郷である離れ山、その地はドラゴンによって奪われており、そこには財宝が待っています。
平穏な暮らしをしていたビルボは突如として駆り出された冒険の旅で足を引っ張りまくるわけですが、やがて成長し、やはり足を引っ張りまくるドワーフたちを助けることになります。そんな中、仲間たちとはぐれた洞窟の中で、一つの指輪を見つけます。それは魔法の指輪で、指にはめると姿を消すことができました。
この「ホビットの冒険」は大反響で、続編を望む声が多く出ます。
トールキンには「ホビットの冒険」の続編の構想なんてなかったのでしょう。そこで、自分の研究テーマとしていたエルフの歴史とつなげることにしました。
その歴史の中では、中つ国は冥王サウロンの魔の手が迫っており、自由の民は追い詰められています。そこにキーアイテムとして指輪が登場するのです。ビルボが拾った指輪です。
中つ国とは後の人間の世界であり、つまり地球です。無闇に乱用されるものではありませんが、中つ国には魔法があり、現代社会では考えられない怪物が多く存在します。ですが、現代の地球へと向かう世界なので、そうした不思議な力は時とともに失われつつありました。
それに抗ったのが冥王サウロンです。サウロンは自身の強大な力を指輪という形で封じ込め、固定化させます。これにより、サウロンの力は時を経ても神話時代の強大さを保ったままになる……はずでした。
ところが、指輪は戦いの中で失われます。サウロンは指輪をはめた指を人間の英雄王、イシルドゥアによって切り取られ、指輪は彼に奪われました。イシルドゥアは指輪を我が物とする誘惑に抗えず、指輪を使用したまま戦死し、大河に飲み込まれます。
水の中で行方知らずとなった指輪は何千年もの時の流れを経て、ホビットの仲良しコンビ、デアゴルとスメアゴルに拾われました。指輪を手にした瞬間、互いに自分のものにしたいという誘惑に駆られました。両者揉み合いの末、スメアゴルはデアゴルを絞め殺し、指輪の持ち主となります。
しかし、スメアゴルはそのまま村で暮らすことはできず、追い立てられ、やがて霧降り山脈の洞窟をさまようことになります。そして、指輪の魔力に侵され、死ぬこともできず、何百年も洞窟の中で過ごしました。
その洞窟で指輪を拾ったのがビルボです。ビルボもまた指輪に関しては冷静な判断ができず、ゴクリと呼ばれるようになったスメアゴルからなぞなぞ勝負してもらったという嘘の記録を残しています。
ですが、ガンダルフに促され、ついに決心して、自分の養子であるフロドに指輪を託しました。
指輪を受け継いだフロドは悲愴な冒険の旅に出ることになります。目的は指輪の破壊であり、それができるのは敵の本拠地近くの滅び山だけでした。
サウロンの追手は指輪を追い、頼りになる味方も指輪の魔力に誘惑され、時として敵に回ります。高潔なものは自らの理想を成し遂げる手段として指輪を求め、慈悲深いものは人々を救う手段として指輪を欲しました。力あるものほど欲望も大きく、それを指輪につけ込まれるのです。そして、ひとたび指輪を手にしたなら、悪に魅入られ、その善意は歪められてしまいます。
やがて、フロドは仲間との旅を諦め、単独での旅をする決心をしました。ただ、彼の真意を読み、彼についてきたものがあります。フロドの屋敷に雇われていた庭師であり、ただ忠誠心のみでついてきたサムです。
王族や貴族など高貴な血統を持つ旅の仲間たちの中で、ただ一人、サムだけが平民でした。だからこその素朴さと勇気により、フロドは助けられ、その旅路はサムによって拓かれていきます。
「指輪物語」の世界を掻い摘んで紹介させてもらいました。「指輪物語」を読みたくなったよ、そんな声があれば嬉しいです。でも、ざっくり紹介過ぎて、わけわかんねという人もいると思います。むしろ、そちらが多数派でしょう。
そんな方は、是非、ここがわかんねーぞコノヤローというメッセージをいただけると幸いです。むしろ、全部わかんねーんだわFUCKという方がいましたら、その旨をテレパシー通信欄に記載お願いします。
「指輪物語」の話はまたすると思います。
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