最終話 炎上の向こう側

「では、いってらっしゃい~」


 笑顔で手を振る下着姿の女神。


 俺は女神の転移魔法で吹き飛ばされた。


 そして、一瞬で魔王城に辿り着いた。



 - 炎上スキルの効果が上昇しました。-




 ◇




「て、敵襲!!!」


 魔王城に大きな声が響き渡る。


 俺は構わず、正面から歩いて進む。


 魔法みたいな攻撃やら、弓矢が飛んでくるが、俺には一切効かない。


 それと俺に近づこうとしたやつは全員途中で気絶する。理由は知らない。


 そして、魔王の間に辿り着いた。




「魔王はちゃんと魔王なんだな」


「ぬっ、貴様が侵入者か…………どうして魔人が我らを敵対する?」


「魔人じゃねぇよ! ただの人間だよ!」


「ぬっ!? 貴様が……ただの人間? そんな禍々しいのに?」


「えっ、『ピエル・サンタマリア三世』ってそんな禍々しいとまではいかないだろう……」


「ふむ……」


 魔王が優しく俺に鏡を投げてくれた。


 魔王なのに優しいのな。


 そして、鏡を覗いた。


「なんじゃこりゃ!!」


 鏡の中には、『ピエル・サンタマリア三世』の頃より、更に濃いペイント且つ、黒色まで足されていた。


「ガーハハハッ! 貴様の顔は最早魔人そのものじゃ」


「はぁ……まぁいいや……女神に騙された気がするけど、まぁいっか。取り敢えず魔王を倒せと言われているから」


「ふん、我はそれほど簡単にはやれないぞ!」


 魔王が飛び上がった。


 右手には禍々しい魔剣を持っている。


「魔王流! 魔王五連撃!!!」


 魔剣が凄まじい速度で俺を切り刻んだ。


 カーン、カーン、カーン、カーン、カーン――――――――。


 カーン


 カーン


 カーン


 カーン


「おい、いつまでやるんだよ。視聴者が退屈するだろうが」


「な、なぜ効かないんだ!!!」


「知らん。取り敢えず、わ~ん~ぱ~ん~ちっ~!」


 俺は緩く右拳で魔王を殴る。


 そして、今まで聞いた事もない轟音と共に、魔王がこの世から消え去った。


 こうして、俺は魔王を倒し、この世界に平和をもたらした。




 ◇




 魔王城の外に出ると、今まで会った人達が集まっていた。


 エルフくん。


 ゴリラ姫様。(いま命名した。)


 可愛い子ちゃん。


 女神。(光らないドレスを着ている。)


 くっ……ここから本当のラスバトルか!?




「魔王を倒してくれた勇者様ありがとう!!」


 エルフくんが何故か感謝し始めたぞ?


 - 炎上スキルの効果が低下しました。-



「勇者様! 必ずや魔王を倒してくださると思いましたわ! 私で宜しければ、これから末永くよろしくお願いします!」


 いや、それが一番の罰ゲームだろう。勘弁してくれ。


 - 炎上スキルの効果が低下しました。-



「あ、あの! 魔王を倒してくれてありがとう! 私の武器で良ければ、幾らでも作ってあげるからっ!」


 これが一番のご褒美かな。


 - 炎上スキルの効果が低下しました。-



「おほほっ、わらわの為にご苦労~、ルミナス発光ドレスの件は水に流してあげよう」


 あ~今すぐ殴りたい~でも何故か力が出ない。


 - 炎上スキルの効果が低下しました。-






 こうして俺の異世界冒険が終わりを迎えた。


 俺のスキル『炎上』は炎上すればする程強くなれる。


 でも代償として、人の姿を無くして行き、最終的には魔人の姿のままとなる。



 『炎上』で力を得る代わりに、人でなくなるのか……。


 昔の俺はどっちが正解か分からなかった。『炎上』だけが生き甲斐だったから。


 でも今は、可愛いドワーフの娘と、毎日イチャラブするのも悪くないかも知れない。


 これなら……わざわざ『炎上』なんてしなくていい。


 だって、俺を認めてくれる人が沢山増えたから。

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