第2話 エルフくん

 まあ、いいや。


 前世の事など、既にどうでもいい。


 俺は割り切るスピードが速い事だけが取り柄だからな。


 炎上系ユーチューバーになった時も、「別に~」って感じだったしな。



 っと。


 異世界って事は、『ステータスボード』なんてのがあるんじゃないか!?


 思い付きで声に出してみる。


「ステータスボード」


 ……。


 ……。


 ……。


 出ねぇじゃん!


 ほら、ちょっとくらいあるだろう!


 RPGゲームとかやったら『ステータスボード』とか見れるだろう!


 レベルとか、能力値とか、スキルとか!


 ちょっとワクワクして損したわ。



 取り敢えず、こんな所にいても仕方ないから歩く。


 丁度山の向こうから煙が上がっているから、町でもあるんだろう。




 ◇




 ――と思っていた時期が俺にもありました。


 はい、三度目の台詞です。



 って!!


 山の向こうにあったのは町じゃなくて、戦場だったよ!!


 めちゃくちゃ重そうな鎧を着たやつらと、鎧はないけど見るからに悪魔しい格好のやつらが戦ってるよ!!


 鎧のやつら、多分人間だよな?


 こういう時って大体人間だからな。


 今度こそ、期待を裏切らないでくれよ?






 ――と思っていた時期が俺にもありました。


 いい加減に四度目、ふざけるな!! と視聴者の声が聞こえそうだ。


 だが、俺は止めない!


 何故なら炎上系ユーチューバーだからな!



 っと。


 鎧を着ていたやつら。


 結果から言ったら、人間じゃなかったわ。


 めちゃくちゃ綺麗なエルフ達だったわ。


 美男美女しかいねぇ……妬ましいね~。




「そこの男! 何をしている!?」


 一人のエルフが俺を見つけた。


 既に戦いは終わって、エルフ達の圧勝で終わってた。


 良く分からないけど、魔法みたいなのをバンバン飛ばしてたら、悪魔しいやつらが吹き飛んで、それでも突っ込んで吹き飛んで…………あいつら知能指数相当低そうだったわ。


「えっと、道に迷って」


「は!? こんな魔族だらけの呪いの森に!?」


「ええええ!? ここ、森なのかよ!?」


「驚くとこそこじゃないだろう!」


「だってよ! 森って言ってるけど、木が一本もないぞ!?」


「そりゃ、全部焼き払ったからな」


「焼き払っ…………俺払われなくて良かったわ」


「そうだな。それにしても人間がこんな場所で一人で何をしている!」


「だから、道に迷ったって」


「は?」


 どうやらエルフって頭悪いみたいだね。


「あ、そうだ。エルフくん」


「誰がエルフくんだ。俺は――――」


「ステータスボードってどうやったら出せるの?」


「名前を聞けよ!! お前、人の話を聞かないってよく言われるだろう!」


「あ~、確かによく言われるな?」


「くあ~、調子が狂う…………まぁいいや、すてーたすぼーど? そもそもそんな言葉聞いた事もないが」


「なんだ、このエルフ使えないな」


「使えないとはなんだ! 人間風情が!!」


 そして、エルフくんは俺を吹き飛ばした。




 ただの風魔法でね。

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