第2話 同居する彼女

 それから数日、麗は和臣の自宅で過ごした。

 この世界のことを少しずつ知ることができ、同時に和臣の言葉をちゃんと理解できる自分に驚いたりもした。

 和臣が一人で暮らしていること。仕事は米と野菜を作っていること。周りは皆この集落から出てしまったこと。そして彼がとても優しくて料理上手であること。

 麗が自分は魔女だと言っても驚かず、興味深げに向こうの世界の話を聞いてくれたことも彼女の心を開かせる理由になっていた。


 とても賢かった麗は現実を受け止め、同時にこの世界について考えた。


 この世界と麗が棲む世界は遙か太古では同一だったのだろう。

 その時代に世界が何らかの理由で二つに分かれ、一つは自分の住む世界、もう一つがこの世界になった。その時の名残で言葉が通じるし、魔素も感じる。ただし、魔力を補充するほどの量は全くないから、魔素の半減期を考えれば気の遠くなるような時間を遡る必要があることはわかった。


 麗が読んだ小説を書いた作家達はひょっとしたらこの世界から転移してきた者だったのだろうか。だとしたらその人達が元の世界に帰ったという話は聞かないから、きっと自分もこの世界に留まることになるのだろう。

 向こうの世界にいる両親や姉のことも気になるが、まずはこの世界で生きていくことにしよう。限りなく小さな可能性でもいつかあの世界に戻れるかも知れない。そんな期待を持って彼女はここで暮らす覚悟ができた。


「麗、これからどうする」


 和臣が麗に問うてくるが、この世界に知り合いがいる訳もなく、頼れるのは彼しかいない。


「お世話になっても良いですか」

「もちろんだ」


 こうして麗は和臣と同居を始めた。

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