第3話

   

「さあ、ここよ!」

 週末。

 山奥行きのバスに揺られること1時間半、さらに徒歩で十数分。

 三人がやってきたのは、今では使われていないトンネルの入り口だった。

 先頭の忠代は瞳を輝かせて、真っ暗なトンネルの中を指し示している。

「どう? いい雰囲気でしょ!」

「ただちゃん、なんだか背中がゾクゾクしてきたよ……」

「そう、それよ!」

 忠代は絹恵の小声を拾って、嬉しそうに手を叩く。

「素人の私たちですら感じる霊気! これぞ本物の心霊スポットよね?」

 専門家の意見を仰ぐ、という顔で玲子を見るが、当の玲子は苦笑いしながら首を横に振った。

「興奮してるところ悪いけど、これは霊気じゃなくて冷気だと思う」

「ただちゃん、私もそう思うよ。だって、あれ……」

 玲子に続いて、絹恵も意見する。手袋に包まれた手を向けた先はトンネル入り口の上側で、そこには立派な氷柱つららが垂れ下がっていた。


「とりあえず、せっかく来たのだから入ってみるよね? 中は中で、また違うかもしれないし」

 忠代の提案に従って、三人はトンネルに侵入。

 持参してきた懐中電灯で照らしながら、奥へ奥へと歩いていく。

「中も寒いね。ゾクゾクが消えないよ……」

「これはもう、冷気じゃなくて霊気かな?」

 絹恵の言葉に反応して、後ろの玲子を仰ぎ見る忠代。

 しかし無言で首を横に振られて、残念そうに肩を落とす。

「まあ、いいわ。まだ入ったばかりだもん。もっと進めば、きっと……」

「ねえ、ただちゃん。小石が落ちてるよ」

 遥か前方を照らす忠代とは対照的に、絹恵は足元にあかりを向けていた。

「何言ってんの。廃トンネルなんて誰も掃除しないし、小石くらい落ちてて当然でしょ」

「そうじゃなくてさ。これ、天井から落ちてきた瓦礫の破片じゃないかな? だとしたら、このトンネル、崩落の危険があるんじゃ……」

「心配性だなあ、絹恵は。大丈夫だよ、かなり昔のトンネルだけど、今まで無事にってるんだから。今さら急に崩れたりしないわ」

「かなり昔って……。それ、そろそろヤバイってことじゃないの?」

   

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