第2話

   

 絹恵の言い方は大袈裟だが、確かに玲子は、特殊な能力を持っていた。

 少しだけ霊感が強いらしく、いわゆる霊のたぐいが見えるのだ。

 といっても、漫画やアニメの悪霊や妖怪みたいにハッキリと見えるわけではない。部分的に蜃気楼のように空気が揺らいで、黒っぽく感じられる程度。モヤモヤした人影を感知できるだけだった。

 今も教室を見回せば、後ろの隅にそれらしき存在が見える。掃除用具入れと柱の間に挟まるようにして、窮屈そうに潜んでいた。

 休み時間はそうしているのだが、授業が始まると少し前に出てくる。玲子は最初「勉強が好きだった学生の霊?」と思ったが、今では「人見知りだから、みんなが動き回る時間は引っ込むだけ」と考え直していた。


 このように生きた人間との接触を嫌う霊は、玲子の経験上、良い霊に分類される。

 しかし中には、積極的に生者に纏わりつく霊もいる。いわゆる「人間に取り憑く」というやつであり、取り憑かれた者は、怪我や病気が多くなる。

 そんな状況を目にすると、見える玲子としてはほうっておけなかった。盛り塩や数珠、八角鏡や十字架など、簡単な除霊グッズを使って、霊を引き剥がしたり追い払ったりするのだった。

 また、除霊グッズに関してアドバイスを求められる場合もあった。水晶玉やパワーストーンなど、霊的効果を謳い文句にしている道具の中には、本当に効き目があるもの以外に、全く効果のない代物しろものも混じっているのだ。

 一般人には見分けがつかず、玲子も手にしただけでは道具の力までは読み取れないが、周囲に漂う霊に近づければ一目瞭然。霊たちが嫌がって逃げる場合は本物、何も反応しない場合はインチキアイテムというように識別して、それぞれ持ち主に伝えることにしていた。


 そんな日頃の玲子の活動を知る親友たちは、彼女をいっぱしの霊能力者だと考えてしまうのだった。

   

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る