事件の日(モナ視点)

 今日もヒロの非日常会話が繰り広げられる中、うちのクラスはテストの返還がされているんだけど、先生がヒロの前に立って少し睨んでいる。


「安達、おまえふざけてるのか」

「いえ 私がふざけた態度を先生にとることなどありません」

「じゃあ、この解答欄はなんだ?私には知り得る術がありません。神のみぞ知る。

 ……その時がこれば分かる。」


 皆は笑うけどヒロはしょんぼりしていた。


「はいっじゃあ休憩」


 皆が立ち話する中ヒロはお手洗いへ行ったみたい。

 ちょっとテスト出来なくて凹んだのかな。



「動いたら刺すぞ」


 ……え

 教室のドアから入って来た男に皆静まり返った。手には包丁。

 高岡先生が「な 何を 落ち着いて まず話しましょう 職員室で」と近づいた。


「うるせー!!!!全員窓側後ろへ行け!」


 みんな腰を抜かしながら後ろへ移動する。私も席を立った。まさか学校にこんなこと どうしよう……隣のクラスも気づいてるか気づいてないのか 誰か警察……


 その時男が近付いてきて私に包丁を向けた……。

「お前全員のスマホ集めろ」と誰かの鞄を渡す。


「隠し持ってる奴が居たら最初にこの可愛い子刺すぞ お前らの裏切り1は刺し傷1だ」


 みんな制服からスマホを出して床に集めた。

 私はそれを男が睨む中鞄に入れる。

 手が 手が震えて スマホが何度も手から滑る……。


「来い」

 大丈夫、もうすぐ警察くるよね。多分誰か通報したはず。

 男は私を皆から離れた一番前の席に座らせた。

 なんで……男の妙な目に恐怖を感じる。

「私と代えてもらえないか、せめて」

 と高岡先生が少し前に出る。

「止まれ!お前じゃ意味ねえ引っ込んどけ」

 とまた私に包丁を突きつけてきた瞬間、後ろの女子が数名悲鳴をあげた。


「「キャーーーッ」」


「黙れ! 脱げ シャツを脱げ」「お前らもだ!女全員シャツ脱げ」

 私は震えた手でボタンに手をやった。


 その時教室のドアがカチャカチャなる

 鍵を内側からかけているからか開かない……誰……?あ……!


 男はドアの方へ向かった。すりガラスの窓から廊下をうかがうように顔を近づけている。高岡先生がその隙に多分なんとかしようと男子とヒソヒソ話しだした。


「しゃべるな!」と男が振り返ったその時


 ガシャーンッ

 ガラスが割られて椅子が飛び入ってきた。

 続いてモップ片手にヒロが飛び込んできた。

 ヒロ……男は包丁持ってるのに……。

 私はヒロにやめてと叫んだ気になったけど声は出ていなかった。


 男は包丁片手にヒロに身を向ける。

 だがそれと同時にモップの棒先が男の目を直撃した。

「うあ゛ーーー」男が叫び痛みに耐えるも間も与えず

 左脇に椅子担ぎながらモップで男を突いて突いて蹴り飛ばし、椅子ごと男を押さえた時、私も駆け寄り男の手から落ちた包丁を拾った。

 男を抑え込むヒロを改めて見ると、ボサボサ頭でパンツ一丁。


 後ろの方に黒い塊が落ちていた。きっとあれはヒロのズボン……トイレから急いで悲鳴がしたから駆けつけたのだろう。


「モナ 無事であったか」

「……うん」

「良かった……もう二度と守れなかった男にはなりたくなかったのだ」


 警察も駆けつけてきた。


 その後私達のクラスは平日の朝立てこもり未遂事件発生の被害を受けニュースにも出る。



「クラスメートが人質となり誰も踏み込めない中、素晴らしい勇気と的確な犯人確保の術。将来の夢は?警察官ですか」


「私は大切な者を守りたかっただけ。将来……私は国を導く王となる。」

「…………?」

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