ヒロの機械

「はい じゃあ今日は世界史B 49ページ 主権国家体制についてだな。ええと、社会的、地理的には分散していながらもローマ教会や神聖ローマ帝……」


 ん?これは…………。


「どうした?!安達!座りなさい。ほら な 教科書を返しなさい。お前も同じ教科書あるだろ!」

「こ これは?!この国の名は?私がここの者だとすればいや、違うのか!?な なに??!!」

「落ち着け、な 一回落ち着こう 安達」


 またしてもおかしな行動をしてしまった。私には自制心というものが欠如しているのか、いやこの国の人々が奥ゆかしいのだろうか。


 キーンコーンカーンコーン


 私は昨夜鳴り響きヒロと思われる声がした機械をモナの机に置いた。


「昨夜、これが鳴り響き、中からヒロと名乗る男が声を出した」


「え?!」

 モナは驚いた様子でその機械に手を触れた。そこに映し出されたのは数字だけであった。あ?!モナの肖像画は夜間にしか現れないのだろうか。摩訶不思議である。


「ヒロ、パスコード知ってるの?」

「なんだそれは」

「知るわけ無いか。あ、アプリ通話だったのかな。着信時だからコード要らなかったんだ。」

「コードとは?数字の暗号か」

「うん。そんな感じ」

「では、モナの誕生日はどうか」

「え?なんで私の?!」

 戸惑いながらもモナはなにやら触りだした。

「あ」

「どうだ?」

 どうやら暗号を解読したようだ。

 どうした……その儚げなヘーゼルブラウンの瞳に長い睫毛を被せじっとそれを見つめている。


「モナを守ってください。セレナのようにならないようにってメッセージが……これはヒロから……?」


「セレナ……」


「だ 大丈夫?ヒロ、あ 大丈夫?」


 私は無意識に涙が滝のように流れていた。


「ああ、すまない。つい、思い出して」


「どーしたんだあ?!!ヒロが泣いてるぞ」

 ああ……またあの赤茶髪の男だ。名前はなんだ。


「君、名は何だ?」

「は?カイセイだろ。えマジで?忘れた?!嘘だろ」



 その晩、モナがうちの屋敷を訪ねてくる事となった。ヒロの消息と連絡手段を調査する為だ。

 オカン様と妹のナオとしばし団欒し我々は自室へ向かった。


「わあ なんで漫画散乱してるの?!」

「何か分からないか書物を一通り見ていたのだ」

「ふうん。幼馴染が最近ボインになったらしいって書物をね……」

「ボインとは結局どういった意味合いを持つ?」

「もうっ、その話は終わりです」


 なんだ、自ら話を振っておいて人を軽蔑したように見るモナであったが、改めて機械を確認するが大した情報がない。


「向こうからの履歴はすべてunknownになってるし」

「不明ということだな」

「あ!英語いけるんだっヒロ、ん……あなたは結局ヒロ?それとも……?」


「外見はヒロで中身はイアンであろうか。ヒロは今頃私の姿となり魔術師に囚われているようだ。早く救わねば。ああこの不可思議な状況は魔術師の仕業か。だとしたら、モナ、君には魔力があるか」


「魔力?!」


「あっしまった」


「なに?!」


「こちらの世界で正体を明かすなと言われた。聞かなかったことにしてくれないか モナ。私はヒロだ。そうだヒロだ」


「……わ 分かったけど」

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