第21話 お父様が捕まったそうです
やっと伯爵家が見えて来た。急いで馬車から降り、ノア様と一緒に屋敷に入る。
「お父様、お母様、お兄様、これは一体どういう事なの?」
「ステファニー!あなた、どうしてここに?そんな事より、お父様が…」
私の顔を見るなり、飛びついて来たお母様。ずっと泣いていたのか、鼻も目も真っ赤だ。さらにワーワー声を上げて泣きだしてしまった。
「お母様、一体どうしたというの?」
「父上が、昨日逮捕されたんだ…」
唇を噛みしめ、そう教えてくれたのはお兄様だ。
「えっ?お父様が。お兄様、一体どういう事?」
「海は我々エディソン伯爵家が管理している。その海を汚し、生き物を死滅させた罪で捕まった…」
「何を言っているの?海を汚しているのは、あの工場のせいでしょう?とんだ言いがかりだわ!」
「そうだよ!言いがかりも良いところだ。散々父上が“海が汚れる。このままでは海の生き物が死滅してしまうから、どうか工場の建設をお止めください”そう訴えて来たのに、それを無視して工場を建て続けた、王妃とモリージョ公爵のせいだ!そもそもあの2人は、口うるさく言う父上が疎ましかったんだよ。だから父上に言いがかりを付けて捕まえたんだ…」
「そんな…」
お父様…
「まだ地下牢に入れられただけだから大丈夫だよ。そもそも、自由奔放に動いている王妃やモリージョ公爵に対して、貴族の間でもかなり不満が溜まっている。とにかく、他の貴族を見方に付けて…」
ゴォォォォ
「キャーーー」
お兄様が話している途中、今までに感じた事のない揺れを感じた。
「ステファニー」
私に覆いかぶさるように抱きしめてくれたノア様。しばらくすると、揺れがおさまった。
「お兄様、海の神、ポセイドン様が今回海を汚したことで、かなり怒っている様よ。まずは、ポセイドン様の怒りを鎮める事が先決かと。このままでは、大陸ごとポセイドン様に沈められてしまいますわ!」
「やっぱりポセイドンが怒っているのか…そうだな、でも、どうやって怒りを鎮めればいいのか…」
確かに怒りを鎮めるのは簡単な事ではない。でも、とにかくポセイドン様に会って、話をする必要がある。その為に、わざわざ王都に来たのだ。もちろん、それだけの為に来たわけではないが。とにかく早く海に潜って、ポセイドン様が住む神殿を探さないと!
でもポセイドン様に会いに行くと言ったら、きっとお兄様は反対するわね。という事は、やっぱり黙って会いに行くしかないか。よし!
「お兄様、とにかく長旅で疲れましたわ。一旦部屋に戻ります。それから、ノア様の部屋も準備してもらえるかしら?」
「あぁ、ノア殿下の…て、ノア殿下!どうしてお前がノア殿下と一緒にいるんだ!まさか、お前が殿下を誘拐したのか?」
物凄い勢いで迫って来るお兄様。どうして私が殿下を誘拐すると言う発想になるのよ。この人は。
「違うわよ、陛下に頼まれて、家の領地で匿っていたの。お兄様は、お父様から何も聞いていないの?」
「何だって!そんな話は聞いていない!でも、ノア殿下が生きていらしたというのは朗報だ。こうしちゃいられない。とにかく、ノア殿下が生きていたという事を、皆に知らせないと」
物凄い勢いで外に出て行くお兄様。とりあえずお兄様が出掛けてくれてよかった。早速海に向かう為の準備をしないと!
少し落ち着いたお母様をメイドに預け、私とノア様はそれぞれ与えられた部屋へと向かう。
「それではノア様、一旦部屋で休憩しましょう。それでは」
「ああ、分かったよ。僕もさすがに疲れたから、少し休むよ」
よし、ノア様は疲れている様だわ。これでノア様を置いて、ポセイドン様に会いに行ける。ノア様はまだ頬の傷が完全に治っていない。それに何より、王都の海はノア様の大切なお母様が亡くなった場所。きっと行くのも辛い場所だろう。そんな場所に、ノア様を連れて行きたくはない。
早速いつもの様に、ワンピースに着替えた。よし、行こう!そう思ったのだが、なぜか海で見つけた真珠が気になった。ふと真珠を手に取る。なんとなく、“私も連れて行って”そう言っている様な気がして、真珠を首からぶら下げた。
よし、いよいよ出発だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。