第4話 男たちの出会い

 将来に暗雲が立ち込めている王国では,知識人の減少は著しい。残るのは詐欺師や,裏家業を行う者たちや出たくても何かしらの事情で出国することが出来ない者達だ。腐りきった権威主義は,学の独占から始まり貴族の横暴だけに留まらず過剰なまでの徴税による飢餓で村を滅ぼしている。結果,手元には日々を凌ぐのも心もとない程の貯蓄と衰弱していく体。村人というの末端から崩壊し始めている。

 ここにも,泥船にいつまでも乗り続けることは出来ないと焦り始めている者が居た。

「どうする?この国を出ようにも他で職にあり付けそうな当てはねぇぞ」

「しかし私とて,既に老骨。安住の地も見つかっていない状態で安易にこの場を離れられんて」

 寂れかけた酒場で初老の老人と中年に差し掛かった男が話し合っていた。老人は草臥れたワイシャツに袖を通したその姿は,必要以上に老け込んで見える。中年も食が細いのかほっそりとした体形で,いかにも『不健康です』といった風貌だ。

「その気持ち悪い喋り方をヤメロ。取り繕ったって此処にマシな女は居ねぇぞ」

「そうは言うがね,やっぱりカッコイイ老人というのはいつの世も好評な訳じゃん?だったら取り入れるよね!男は何時までも格好良くありたい!」

「少年の心を持ち続けてるだけだと思うがなぁ…」

 頭が痛いと中年は頭を横に振った。馬鹿に付ける薬はない。残念ながら,それは万国共通だった。

「じゃなんだ?この今にも滅びそうなこの国と一緒に心中するってか?せめて俺は所帯を持ってから死にたいね」

「穏やかに死にたいのは私もだって。ただなぁ…周りの国も入国を渋ってるって聞くしぃ?亡命しようにも資金もコネも無いし?」

「手段が無いのが致命的だよなぁ…」

 無い無い尽くしの現状に涙が出てくる。しかし,現状が変わることはない。天から蜘蛛の糸が落ちることを願うしかない。要は,天命を待つしかない。

 そんな陰鬱な雰囲気を醸し出す酒場に1人の男が入ってきた。でっぷりと肥えた腹に,薄い頭髪。豪華な衣装が霞んでしまいそうなほどの特徴を持っている男こそ,金があるのに他がないフランシスだった。こんな寂れた酒場に貴族()が来ることに男達は訝しんだ。

「おい,手ごろなゴロツキは雇えるか?」

「はい?ここは一応酒場ですぜ?そんな荒くれ者の牙城じゃねぇんですよ」

 最初からクライマックスとばかりのフランシス。市井の生活を知らない貴族としての行動しては満点の行動ではあるのだろうが。因みにこの時,フランシスは大変疲れていた。どれだけ頑張っても,金で動くゴロツキが捕まらないからだ。フランシスの中では“ゴロツキ=手頃な暴力装置”なのだ。この際,鉄砲玉でも構わないから手頃な人員が欲しい。フランシスのストレスは結構限界だった。

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