一章 第五話



 豪奢な洋館のメインホールに、黒いローブを着て佇むガルグ。その周りには複数の死体が、血溜まりと共に横たわっている。

 この後ガルグは火を放ち、洋館は焼け焦げた灰になる。

 ガルグが何度も見た光景だ。よって結末も知っていた。


 ===============


 ガルグが目を覚ますと木製の、天井が真っ先に目に入る。ここはエルリアから貰った家だ。エルフの森でも人気の無い場所。そこに建てられた一軒家。

 そのベッドの上で汗だくになり、頬を一匹の猫に舐められた。


「ルルか。大丈夫だ。今起きる」


 ガルグはその猫に向かって言った。

 ルルはガルグの言わば飼い猫で、共に旅をしてきた仲だった。

 一方この家にはもう一人、新顔とも一緒に暮らしている。


「おはようございます。ご主人様」


 人間サイズの精霊は、椅子に座ったままガルグに言った。その手にはエルフ語で綴られた、本が一冊携えられている。

 ガルグが夢など見たのはおそらく、この精霊のせいもあるだろう。

 そう言う訳でガルグは起き上がり、彼女に直接問い糾す。


「精霊。お前、元は人間か?」

「人間? 私は精霊です。ご主人様のために生まれました」

「なら、そう言う記憶は無いんだな?」


 彼女は元々人間だった──ガルグはそんな疑念を持っていた。


「ありません」


 しかし彼女は言った。

 これ以上問答を続けても、望む答は得られないだろう。


「そうか。悪い。変なこと聞いた」

「構いません。私は下僕です。ご主人様が望まれる限り、私はその要望に応えます」


 ガルグが謝ると彼女は言った。だがそれがガルグの勘に障った。


「お前、その下僕ってのはやめろ。つーか名前とかないのかお前?」

「名前……ですか? ありません」

「だったら今、俺が考える」


 ガルグは言うと、スッと目を閉じた。

 考えると言うより思いつく。それがガルグの名前のつけ方だ。

 そして数秒後、ガルグは言った。


「お前はティアだ。文句はないな?」

「了解。私は今からティアです」


 精霊改めティアの返答で、この会話にはピリオドが打たれた。


「じゃ、俺は朝飯を作ってくる。まあ精霊のお前は食えないが」


 ガルグは歩いてキッチンに向かう。

 しかしその途中珍しく、ティアから言葉をかけられた。


「あの。ありがとうございます」

「なんで礼だ?」

「それは……わかりません」


 彼女は胸に手をやりそう言った。



 所は変わってレイランド。玉座の配された接見の間に、また王とフレイドとアズマが居た。

 だが今回フレイドは手を叩き、あろうことかアズマを賞賛する。


「ふふ。英雄の帰還だな。此度は実に良くやってくれた」


 フレイドがアズマに向かって言った。


「お前に褒められたいわけではない」


 しかしアズマは普段に輪をかけて、機嫌の悪そうな仏頂面だ。それには癇に障った意外にも、もう一つの理由が有るからだ。


「それで捕虜の奪還はどうやった? ぜひぜひ聞かせて欲しいのだがね?」


 案の定フレイドは聞いてきた。

 これが彼のご機嫌な原因だ。そしてアズマの不機嫌な理由だ。おそらく「取引した」とでも言わせ、アズマを陥れたいのであろう。

 アズマもそれは理解していたので答は既に用意してあった。


「実は言いたくても言えないのだよ。間者の身を危険に晒すのでな」


 アズマはニヤリと笑って言った。


「間者だと!? 貴様、エルフにか!?」

「そうだ。エルフの中でも一部は、森を離れ旅をすることがある。それ以上、詳細は言えんがな」

「我が王にもか!?」

「ああそうだ」


 アズマとフレイドは言葉の剣をぶつけ合い、互いに戦っていた。

 一方肝心の王はと言えば、ずっと玉座でおろおろとしている。とは言えさすがに怖くなったのか──


「ま……まてまて! そのくらいにしないか!」


 王はようやく争いを諫めた。


「フレイドお前の気持ちもわかる。だがアズマは父の代からの臣。それに捕虜を取り返してきたのだ。少しはその功績をかえりみよ」


 頼りない言葉だが、彼は王だ。フレイドとしても従うしかない。


「はい。申し訳ありませんでした。確かに王の言われる通りです」


 フレイドは拳を強く握ると、暫くして王へと謝罪した。


「わかってくれればいいのだフレイド。アズマ、此度は大義であった」

「お褒め頂くことではありません。当然のことを成したまでのこと」

「さすがはアズマだ。ははは。ははははは……」


 毎回この調子では身が持たん。王は内心で呟くのだった。



 人間側がもめていたその頃。エルフの重要人物達は、森の香り漂う場所にいた。

 重要人物とはガルグとティア、エルリアとミアの四人組である。四人が今居るのはエルフの森。その中でもやや開けた場所だ。

 ガルグはこの場所へと呼び出され、ティアを伴ってやってきた。


「それで、俺は何をすれば良い?」


 故にガルグはエルリアに聞いた。


「お兄様。焦りは禁物です。二人共、出て来ても良いですよ」


 しかしエルリアは答を避けて、代わりに誰かを呼びつけた。

 すると少し離れた木の裏から、二人のエルフが現れる。二人共一見すると少女だ。一人はゆるふわロングヘア、もう一人は長髪を結っている。


「隠れるのがエルフの趣味なのか?」

「サプライズです。ですけどお兄様。お兄様なら気付いていたでしょう?」

「まあな。いつ殺ろうかと思ってた」


 ガルグはエルリアに皮肉を言うが、相変わらず通じていないらしい。


「殺されてしまっては困ります。二人はお兄様の部下ですから」

「はあ?」

「二人共、自己紹介を」


 エルリアは二人に向かって言った。

 するとまず自己紹介をしたのはゆるふわロングヘア方だった。


「あ、はい! 私はサシャ・コートツリー! ガルグ様の部下になることができ、本当に本当に光栄です!」


 彼女は右拳を胸に着け、緊張ぎみの早口で言った。

 この姿勢はエルフの敬礼だ。と言うことは確かに軍人か。しかしその目はキラキラとしており、ガルグを慕っているらしい。

 一方、もう一人居たエルフは、サシャとは逆のつれない態度だが。


「私は……ニノ・ハートツリーです。それにしてもなんの冗談ですか? 私がハーフエルフの部下なんて」


 一応敬礼はしているものの、その言葉には露骨に棘がある。


「冗談ではないですよー、ニノさん」

「はあ。まったく貧乏くじね」


 その上姫にも不遜な態度だ。ミアなどは口に出さないものの、彼女をじっと睨み付けている。

 もっともガルグの方から見れば、ややニノのほうが好感が持てる。二人の意見が合っているからだ。


「俺も冗談と思いたいんだが?」

「事実です! 事実ですお兄様」


 だがエルリアはあえて二度言った。


「二人はブラッドエルフです。お兄様と一緒に戦うには、とても大切なことなんですよ?」


 その理由は単純明快だ。


「エルフの社会では常識ですが、ウッドエルフは森のエルフです。自分の生まれた森を離れると、その力は弱まってしまいます」


 聖樹から生まれるウッドエルフが、出来るのは森を守ることだけだ。


「ですがブラッドやホーリーエルフはその弱点が全くないのです」


 一方、エルリアの言った種族は確かに森を離れて生きられる。正確には魔法を使用出来る。


「つまり俺が小娘共を率い、人間を襲撃しろってことか?」


 ガルグはあきれ顔でそう言った。


「はい! お兄様、想像通りです!」


 しかし予想は当たっていたらしい。エルリアは両手を合わせて言った。


「仲良くしてくださいね、お兄様」

「いや断る。全力で断る」


 ガルグは彼女に訴えたのだが、ガルグ自身無駄だと知っていた。



 そしてガルグは操縦席に居た。

 ガルグはティアと共にエルギアに。サシャとニノは量産守護機兵──ククロアの操縦席へと座る。当然サシャとニノは別々にだ。

 エルギアと二機のククロアは、向かい合い距離を取って立っていた。三機で演習を行うために。


「サシャにニノ。お前らの情報は、だいたいエルリアから貰ってる。が、俺は人を信じない主義だ。よって実力を見させて貰う」

「はい! 精一杯、頑張ります!」

「ニノ機も了解。いつでもどうぞ」


 ガルグが聞くと二人が返事した。熱血系のサシャとクールなニノ。正反対だが実力は──戦うまではそれは解らない。

 二人の機兵は基本、同じ物。エルフがククロアと呼ぶ、守護機兵。ヘイザーと戦ってやられていた、ガルグもその時に見ているものだ。

 人間型。素材は木と甲殻。ただし見た目より頑丈だ。その佇まいはどことなく、硬い殻を持つ虫を思わせる。

 サシャ機はエルフ語で肩に2と書いてあり武装は両手持ちの杖。

 一方、ニノ機の数字は3で、武装はエルギアと似ている剣だ。


「では一応ルールを説明する。俺が合図を出したらお前らは、二人共エルギアに仕掛けてこい。連携しようが個別に来ようが自由だが、俺を殺す気で来い。次の合図で演習は終了。全機攻撃を停止する。それと念のため伝えて置くが、俺も反撃をする。こともある」


 ガルグは二人に演習の、ルールを大雑把に説明した。


「以上。説明終了だ。なお質問も変更も無しだ。それと木は出来るだけ倒すなよ。一応お前らエルフの森だろ?」

「サシャ機、了解です! ガルグ様!」

「ニノ機了解。準備は出来てます」


 二人はルールを理解したらしい。ならば躊躇う理由も無いだろう。


「ではこれより演習を開始する。全機用意……」


 ガルグが指示すると、二人のククロアの魔力が上がる。それに合わせガルグもエルギアの、魔力を増大させ対抗する。


「初め!」


 そして演習が始まった。


「吹き渡る風よ、集まり切り裂け!」


 初めに動いたのはニノだった。

 ニノ機が胸の前に構えた剣。その刃に風の魔力が集う。


「風刃閃!」


 そしてニノの言葉で──風の刃が放たれた。

 当然エルギアへと向かってだ。


「鉄障壁」


 しかしそれはガルグの、障壁に激突し霧散する。


「人間の魔法!?」

「俺はハーフだぞ? 当然、全ての魔法が使える」


 ガルグにとっては当然の事だ。ニノは多分に驚いたらしいが。

 さて、次はサシャが仕掛ける番だ。


「たああああああ!」

「ほー。杖で格闘か。まあ意外性はそれなりにあるが……」


 なんとサシャ機は杖を持ちながら、エルギアに向かいただ走ってきた。


「あ……!」


 その上途中で躓いて、転んで大地をずざざと滑った。


「そこで転けるなよ! 問題外だ」


 しかし──


「でもここから挽回です! 母なる大地よ棘となり、無数に飛び出し天を突け!」


 なんとサシャはうつぶせになったまま、魔法を詠唱しはじめた。


「その詠唱は……」

「土柱連撃波!」


 魔法は地面を這って次々と、巨大な棘を作り出す物だ。

 それは高速でエルギアに迫り、やがてはその足下に辿り着く。


「やるな。よっと」


 しかしエルギアは、大地を蹴って横にステップした。

 すると少し軌道を変えつつも、棘の流れは通り過ぎていく。


「発想は良いが、誘導が甘い」

「えい!」


 サシャは切り替えが早い方だ。

 魔法が外れたのを見るやいなや、軽い魔法で地面を殴打した。おそらくその反動で立ち上がり、次の行動をとる気なのだろう。

 だがその隙を、ガルグは突いた。


「風衝弾!」


 ガルグが唱えると、エルギアが風の球を繰り出した。

 それは起き上がり際のサシャ機へと直撃し、今度は仰向けにする。


「きゃ! あわわ!」


 サシャも踏ん張るのだが、流石に魔法には敵わなかった。


「痛たたた……」

「サシャ機。そこまでだ」

「はい。すいません」

「謝らなくて良い。別に俺は怒っちゃいないからな」


 ガルグは天を仰ぐサシャに言った。

 これで──残るはニノだけだ。


「さてニノ。お前、何故援護をしない? 一応隙は見せてやったはずだ」

「サシャ機の邪魔になってしまうかと」


 そのニノにガルグが聞くと答えた。

 だがガルグはそれに納得しない。


「意外と真面目だな。だが俺には、仲間を見捨てたように見えたがな」

「心外ですね」

「まあそう言うな」


 ガルグの考えではこうだ。ニノはサシャ機を捨て駒に使った。エルギアの情報を得るために。

 兵隊にはあるまじき考えだ。

 とは言えまだニノ機は生きている。


「では、行きます! 風刃閃!」


 ガルグの言葉が気に障ったか、語気を強めニノは魔法を撃った。

 前回と同じ魔法だが、無詠唱なので威力は低い。


「ふん」


 当然、ガルグはその風を、軽々障壁を作って防ぐ。

 しかしそれはただの、目眩ましだ。


「土風跳躍!」


 ニノ機は走り出し──途中で大きく空へと舞った。跳躍魔法。使い方次第で魔法は移動や回避に使える。

 ガルグはその意図に気付いていたが、あえて攻撃を受け止めた。

 斜め上から斬りかかるニノ機を、剣を上げて無理矢理弾き飛ばす。


「やるな」

「防がれた!?」


 ニノ機はエルギアの後方にそのまま着地。する瞬間に──


「風衝弾」


 ガルグが放っていた魔法。風の弾を食らって転がった。


「まいりました」

「だな。ここまでだ。演習終了。全機帰投せよ」

「「了解」」


 そして演習は終了。二機のククロアは背中を向けた。

 ガルグもエルギアを自宅の横に、戻すためゆっくりと歩かせる。その直後、ティアがガルグに言った。


「ご主人様」

「なんだ?」

「お見事でした」

「やめろ。今自己嫌悪してるんだ」


 だがガルグは、頭が痛かった。



 例え頭が痛かったとしても、やらねばならないことがある。

 演習した日の夜。エルフの森。魔法の明かりが灯る森の中、ガルグはサシャとニノを待っていた。

 丸太で作った椅子に腰掛けて、目の前には四角く広い机。その上には美味しそうな料理が、皿一杯に盛り付けられている。尚、ティアは置いてこようとしたが、着いてきてガルグの横に座った。

 そんな状況で待機していると、やがて二人が訪れた。


「ほ……本日はお招きいただきありがとうございます! 隊長!」

「私、夜は早めに寝たいです。なのでお昼にやってくれません?」


 かしこまるにも程があるサシャと、早速文句を言いだしたニノだ。

 二人が到着した以上、ガルグが嫌でも始めるべきだ。


「あー。ではこれよりエルフ軍、特殊部隊懇親会を開く」


 ガルグは心底嫌々言った。


「今日の食事はエルフ仕様にした。肉は無いから安心して食べろ」


 まずは一応、食事の説明だ。

 エルフは基本的にベジタリアン。その上森の中に居るときは、食べる必要も特に無い。森の木々からエネルギーを貰う。よってこれはレジャーの一環だ。


「では乾杯」

「かんぱーい!」

「乾杯」


 そして懇親会が始まった。


「ふわぁ! どれもこれも、美味しいです!」

「確かに。これは普通に美味ですね」


 幸い食事はサシャにもニノにも、喜ばれているようである。

 ガルグも腕を振るったかいがある。


「ま、長々旅をしてきたからな。料理の腕なんて勝手に上がる」

「これ、隊長が作ったんですか!?」

「そうだ。エルフにシェフはいないだろ?」


 サシャに聞かれてガルグは返事した。

 だが何事にも裏がある。この旨い料理にも同じことだ。


「お口に合ったようで嬉しいよ。ではこれから反省会をする」


 ガルグは棒読み加減で言った。


「やっぱり裏があった」

「ニノうるさい。まずはサシャからだ。お前はその後」

「ひゃあ!? えとその、私からですか……」


 二人共反論ありそうだが、生憎ガルグは認めない。


「サシャ。お前はまず鍛練を積め。それと動きが少し素直すぎる」

「はあい。隊長。善処します……」


 ガルグが言うとサシャはうなだれた。

 しかしまだ言葉には続きがある。


「ただし発想は良く、機転も利く。転けなけりゃもう少し戦えた」

「はい! 頑張ります! ガルグ隊長!」


 今度は、サシャは褒められ喜んだ。

 さてさて次はニノの番である。


「ニノ。お前はかなりの手練れだな。積み上げた訓練が見て取れる」

「どうも。ありがとうございます」


 ニノの方は賞賛から始まる。無論指摘も後に続くのだが。


「ただし仲間を軽く見過ぎている。サシャを助けておけばあの瞬間、フォローが見込めたはずだ。たぶんな」

「気をつけます」


 彼女はクールである。賛辞を受けても、指摘を受けても。

 さてこれで部下二人は終わったが、この部隊には──もう一人が居た。


「よし。じゃあ最後は俺達の番だ。お前ら何かあったら言ってこい」


 ガルグは二人に向かって言った。

 嫌々とは言え部隊長。部隊員の意見は大切だ。


「正直、想像より強いです。今の話も納得できました」


 するとまずニノがガルグに言った。

 意外にも肯定的な意見だ。てっきり貶されると思ったが。


「私も凄いと思います! 隊長は最高の隊長です!」


 一方サシャの方は予想通り。両手を合わせてガルグに言った。今にも飛び跳ねそうな雰囲気だ。

 この二人でより問題なのは──おそらくはサシャの方だろう。


「おいサシャ。さすがにおかしくないか? 俺が何かしたなら謝るが」


 ガルグは素直にサシャへと聞いた。

 彼女の態度は最初から変だ。ただでさえガルグは、ハーフのエルフ。好かれる要素などは何処にも無い。

 だが彼女からは露骨なほどに──尊敬のような思いを感じる。


「謝るなんて……とんでもないです! 私、隊長に助けられました。その恩返しが出来ればと!」

「俺が助けた? あー……もしかして、鉄機兵を鹵獲したあのときか?」


 サシャの言葉で思い当たるのは、ガルグの記憶の中では一つだ。

 ヘイザー達が攻めてきたときに、ガルグは聖樹とエルフを守った。


「私、戦いは好きになれなくて。通信士を務めて居たんです……。そこからガルグ隊長の勇姿をたっぷり見させて頂きました!」

「なるほど。それでこうなったわけか」


 その話を聞きようやくガルグも、今までのことに納得がいった。

 とにかくガルグが嫌でもなんでも、部下が出来た事実は変えられない。ならせめて、関係を築くべきだ。たとえそれが仮初めだとしてもだ。


「よし。サシャ、ニノ。二人共聞きやがれ。こうなった以上、俺たちゃ仲間だ。しかもこのコロニーにおいてかなり、重要な策を担うことになる」


 故にガルグは二人へと言った。


「だから仲良くしろとは言わないが、背中を預けられるよう務めろ。これは俺からの、まあお願いだ」

「はい! 頑張ります!」

「それが任務なら」


 その返事はなんだか頼りないが、これも取引だ。仕方ない。


「なら今日は共に楽しんで食え。それが明日の活力に繋がる」


 こうして三人はそれから少し、食事を摂り互いに話し合った。

 しかしティアだけはそれを見ていたが、結局一言も喋らなかった。

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