第3話 「クロノス」個人的レビュー

そんな訳で、新年一発目は2005年の舞台。演劇集団キャラメルボックスの作品「クロノス」のDVDをお取り寄せしたので、そのレビューです。おっさんが演劇?また新しい趣味に片足突っ込んだんか?とお思いかとは存じますが、推しの朗読系配信者さんが、それはそれはもう大変熱心に良さを力説した劇団でございます。まあ、正確には「オススメされたお題目は中古で万超えのプレ値が付いてる」DVDでございまして、正直な所「これで面白くなかったら、きっと旅立って行った諭吉を慮って後悔するに違いない」と言う自己防衛本能が作動した為、中古で価格が安かったコレを購入した。あと、一応原作を朧気ながら知ってたから…と言うのが本音です。

結果としては大変いい作品でしたし、万超えのオススメDVDを買う気になりました。いい意味で裏切られましたし、何ならこのシリーズの他のお題目も観たいと思ってるし、むしろ別作品も観たいと思わせられました。全く以てお財布に優しくない劇団でございます。ただ、数年前に破産した団体となってまして、現在復活してますけど限定的な活動…と聞き及んでおります。

さて、前置きはこの辺にして話を続けますが、基本ネタバレになります。ので、お嫌な方はブラバ推奨になります。


本作は梶尾真治先生の作品「クロノス・ジョウンターの伝説」と言う書籍から「吹原和彦の軌跡」を舞台化した作品で、実は朝日ソノラマの本を当時読みました。多分20年くらい前の話で、本編観るまで全然内容を思い出せませんでした。徳間が何年か前に全7話をまとめた本を出してますので、興味のある方はそれをどうぞ。間違っても舞台の物販で売り出された奴を買おうとか思ってはいけません。調べてないですが、アレはファンの足元を見る殿様商売の極みですから、多分結構なお値段になると予想されます…

さて、クロノスジョウンターの伝説ですが、タイムリープもののSFです。吹原を始め様々な人が、様々な、でも確固たる理由で未完のタイムマシン「クロノスジョウンター」を操作して、歴史の流れに干渉すべく我が身を投じる…そんなオムニバス形式の物語なんですが、記憶に残ってる限りでは「吹原だけ、他の人と違って報われない結末を迎える」だったと思います。それだけに作品の中では吹原の話は群を抜いて有名ですし、同名で映画化されましたけど、題材は当然の如く吹原和彦の軌跡になってます。


和彦は惚れた女たる来美子を事故死から救うべく、「過去にしか行けないしデメリットだらけで何なら過去に滞在できるのは短時間。だけど過去に行ける画期的なタイムマシンたるクロノスジョウンター」を強引に動かして、歴史を書き換えようとします。

タイムリープものの映画と言えば、割と新しめとなるとタイムマシンが思い出せるので、それとの対比になります。映画タイムマシンも、死んだ恋人を救うべくタイムマシンを完成させていざ過去へレッツゴー!でも、何度チャレンジして原因を防いでも、新しい理由が生じて結局恋人は死ぬ…この舞台でも、様々な邪魔が入って来美子の事故死を防げない展開が続きます。タイムリープものに付き物のパラドックスなのですが、歴史上事故死した人を生き返らせたら、それが真実になる→死んでないなら過去に行く必然性が無くね?→結局過去に行かない。と言う事象が真実になる可能性があり、物語そのものが不成立になる…だから過去を変える事は出来ない。って説があって、実際吹原も劇中にそう諭されてます。まあ諦めたらそこでエンドロールですから、吹原は行くのです。


ここで、数々の矛盾を上手く丸め込む設定が登場です。そう。「クロノスジョウンターの欠点の数々」です。

まず、クロノスジョウンターで同じ人が行ける過去は、必ず 前回よりも未来に位置しないといけない。つまり、前回より過去には行けません。以前、劇場版の仮面ライダー電王で、様々な時間軸の良太郎くんが戦いのために拉致られて、結果同じ時間に何人もの電王が出るという矛盾を生じさせて、更にそれを利用して戦いましたwこの理論を是とするならば、この理論が確立した際にはもれなく「人生の節目節目で様々な未来から来たドッペルゲンガー的な自分が何人も現れて未来を都合のいい様にねじ曲げようとする未来」が見えてきますし、もっと未来から、もっと都合よく開発されたNewタイムマシンに乗って助けに来れば良い…と言う話になります。タイムリープした先は、やはり一期一会なのでした。

その他の制約として、「過去には短時間しか滞在出来ず、未来へ弾き飛ばされるし、時間をねじ曲げる反動からなのか、飛ばされる先は現在よりも先の未来」があります。長時間滞在出来たら、もう世の中宝くじとか競馬の大穴当てて一攫千金を実践した阿呆共の栄える未来が待ってますので、それはタイムマシンも浮かばれないでしょうw

あと、考えなくても「過去に行くという事は何らかの理論で時間軸をねじ曲げる行為」ですから、ねじ曲げたものが元に戻る力…反作用が起こるのは当然なのかもしれません。ねじ曲げる力は無理矢理でも、戻す力は自然の摂理ですから、より飛距離が伸びる…そんな理論でしょうか?かくして和彦は少し未来に飛ばされます。でも目的は達成されてないから、また同じ時間帯(正確にはさっきの数分後)にタイムリープ(結果としてより長い時間をリープする)→さっきよりも更に未来に飛ばされる→以下繰り返し…となり、現実問題として無限に繰り返すのを防いでいます。

これらの制約があるから、この物語が成立してると思います。結末は勿論言いません。皆さんがご自身で見て下さい。


実は舞台を生で観た記憶は少なく、知り合いの草の根劇団の公演のチケットを押し売りされて仕方なく行った公演の他は、たまたま接待で貰った宝塚の公演(20年以上前の風と共に去りぬ。レット・バトラーが何と星組?の天海祐希)位のもんで、うんちくを語れる身分ではございません。まあ、PAとか照明さん的なお話なら少しは出来そうですが、舞台は役者さんありきですし、著名な劇団の公演でしかも映像作品として残ってるものですから、批判のあろうはずもなく。

強いて言えば、15年くらい前の舞台ですから、「そうそう、あの頃はこんな照明使ってたよねー」的な気持ちになれた作品です。

キャラメルボックスの作品を観たのは初です。このシリーズは全7作品あるんですが、そのうちの5つを舞台化してるそうで、ちょっと見てみたいです。ただし、推し配信者さんが異常なまでにオススメしてくるのは、同劇団の代表作「サンタクロースが歌ってくれた」ですから、ほかのエピソードのDVD手に入れるのは、少し先になりそうです。いや、何年か前に一度破産した劇団なんで、当時物の関連商品はまあプレ値なんですよね…

ここまで読んだ方。舞台そのものに対するレビューがないやん。とお思いでしょう。いや、おっさんに舞台の解説とか誰が良かったとか、そんなの期待する方が間違ってるよwだから、映画的なレビューになってしまいました。どうぞご容赦ください。


余談になりますが、DVD届いた時のツイートに、林貴子さんと仰る知らない方からいいねを頂戴しました。誰だろうと思ったら、現役の団員さんだったと言う、身に余る光栄を賜りまして感謝感激にございます。2月の公演にご出演なさるご予定との事。ご出演なさるお題目「ミス・ダンデライオン」は、このシリーズの「鈴谷樹里の軌跡」が原作のお題目の様で、個人的には何とタイムリーなお方が登場したもんだ…と偶然に驚いております。


世間では元日真っ只中でございまして。

今年も残すところ、あと11ヶ月と30日程になりましたwこれをここまでお読みになった物凄く奇特で珍妙なそこの貴方に、どうぞ素敵な1年が訪れますように!


2022年元旦


最終更新日:2022 1/2 加筆訂正しました

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る