第11話「フットワークコンテスト」
《BBOYリクぅ〜!!》
「クッソがあああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「何故だあああああああ!!」
「意義ありじゃボケ!!」
「フッハハハハ〜!」
膝から崩れ落ちながら醜態を晒している池谷さん達を、仁王立ちで豪快に笑っているのはリクさんだ。満足すると池谷さんの側に寄って質問を飛ばした。
「これで満足したか?ヒカルはもうウチの立派な部員だからな。今後一切侮辱することは辞めてもらおう」
「くっ……。お前ブレイクダンサーで一番体力を消費するジャンル踊ってるのに、なんでまだそんなにまだ体力に余裕があるんだよ……」
「毎日真剣にダンスと向き合って体力補強のトレーニングを欠かせてないのが1つ。それからペースの配分の仕方さ。……お節介かもだが、女遊びなんか辞めてまたダンスと真剣に向き合い続ければ、ユニットでその威勢の良さを武器に出来るぞ」
「くっそ……」
「ちっ……そうやってダイキの上からモノを言いやがって……」
池谷さんが今の自分自身に反論の余地が無いことを理解したからこそ、頭を垂れて黙り始めたが。取り巻きの1人がまだ頭ん中お花畑状態のようだな。そんな彼らを見て向井堂さんがギャラリーに一声を掛けると、話しかけに行った。
「ダイキにリク、今回もジャッジコメントを添えようか?」
「そうだな、是非頼むよ」
フッ……俺とヒカルの方を見たことからソイツにバトルの分析材料を与えるために連れて来いってことだろう。俺はヒカルと一緒に彼ら7人の集まりの側まで寄った。
「……俺の方からも頼むよ」
「ああ、そうだぜ、全部聞かせてくれよ」
「間違いがあれば訂正してやるからな」
部長がアヤカさんとリンカさんの両方に確認の視線を寄越すと、先ずはアヤカさんの方から話すことに決めたようだ。
「じゃあ先ずはあたしからね。単純にリクが作り出していた雰囲気によって、池谷がリクを追いかけてる構図が出来上がるようにと、空気が支配されてたね。それも1ムーブ目からだと思うよ。……物凄く下品な演出をしてたようだけど、そこから池谷のダンスに落ち着きが無くなった……いや、奪われたように見えたね」
確かにそんな印象があったな。ヒカルに色々と教えながらもバトルを観戦していたが、どこか池谷さんにはタガが外れたように見えた。相変わらず細かい動きを良く表現できてたが、音の早取りや欲をかいて派手な動きを取り始めたと思う。
「最初はお互いに様子見だったと思うけど、1ムーブ目からリクが池谷のムーブを上塗りするように畳み掛けていた印象があったね。気を緩めた瞬間も無かったし、6歩からジョーダンの後に続けたベビーウィンドミルからのポージングも凄く音楽にハマっていたしね。全体的にリクが常に上に立っていたと感じたからね」
「ぐっ……言い返せねえ……」
ベビーウィンドミルの速度を一瞬緩めたかと思うと、次の瞬間池谷さんの方を向いてちょっとしたプチフリーズを決めてくる辺り、やはり音楽を良く聞けてる証拠だな。それにリクがバーンズ飛ばしてた度に池谷さんが反応してたのも特徴的だった。
「じゃあ次は私から〜。アヤカが言ってたように2ラウンド目から、スクービードゥーやキックウォークも混ぜたりと池谷の勢いが激しくなってよかったけど、曲のテンポが基本ゆっくりだったから焦ってたようにも見えたわね。それに対してリクは池谷を小馬鹿にするようなジェスチャー飛ばしたり、純粋なフットワークでしっかりビート刻んでたりと常に余裕を感じたわ」
スクービードゥーとは片足でキックすると、エンカウントでもう片方の足を上げ着地するステップのことだ。またキックウォークとは、1歩目で蹴って2歩目で膝を開くステップのこと。そして&《エン》カウントとは、ダウンするときのカウントに持ち出される仕組みのことだ。
『池谷さんはまんまとリクさんのバーンズの罠に引き摺り込まれたって訳だな』
例えば音楽を流すとワンエイトのカウントで数えられるが、実はワンとツーの間にも間があって、それらの隙間をカウントに入れるときに使われるのがこのエンなのだ。ロックダンスは16ビートで踊り細かい音を表現するダンスなんだが、ブレイキンは主に8ビートで踊るため、俺たちブレイカーはエンカウントを意識しない訳なんだ。
「それにやっぱり中盤でやってたドルフィンからの寝技で肩フリーズに入るまでの流れが綺麗だったわね。背中で一旦床に倒れて行くんかと思ったらその過程でも足をちょこちょこ動かしたりして音に乗れてたし、唐突な音ハメにはビックリさせられたわね。最後に何周も技と技の合間にトーマス入れたりもしてたし、全然体力の衰える気配が感じられなかったからリクを選んだわね。……私からも以上ね」
「……くっ……」
ドルフィンとは別名シャチでもありハウスでも使われる動きで、リクさんがやったのは四つん這いの状態から右足を高く振り上げ、それを振り下ろすときに上半身も床スレスレに近づけながら右足を右に蹴る、この一連の動きのことだ。
「じゃあ最後に俺と行こうか。最終ラウンドでリクを仕留めてやるって気迫が伝わってきて、ペイシングやファイブも混ぜて来たのが良かったけど、早く勝負を着けたくて派手な動きを沢山やり始めたようにも見えたな。ペイシングで露骨にリクを煽ってたのが良かったけど、もう少し捻りが欲しかったのが正直な感想だ」
ペイシングとは主にリズムを取ることを目的にした、横にパンチを打つような動きのことだ。バトルの際に執拗なくらいリクさんの顔面に向けてたことから、ボクシングのジャブを打ってたようにも見えた。ファイブ、別名クラップとは、相手を讃えて手を叩き合う動きのことだ。
「最後に足技を入れたりしてクロスハンドを、更に応用の効いた技にしてたのが良かったぞ。けど体力の配分を間違えたのか終盤にかかって減速したのが頂けなかったな。折角3曲目の音にもしっかり乗れてたのに、ロックダンス最大の持ち味である音ハメに乱れが出来始めていた。リクの煽りに反応して2ラウンド目でガンガン動きまくってたから、ガス欠になったんじゃないか?」
「……ッ……」
クロスハンドとは、先ず姿勢を正した状態で片手でトゥエルをして、身体の中心で両手をクロスさせたら、もう一度今度は両手でトゥエルをしてから、腰辺りで手をパンっと止める一連の動きのことだ。
「その反面、リクが最後まであんなに動き回ってもまだ余裕が感じられたからな。とにかく最初のロンダートからのバク宙からの入りが凄かったぞ。音楽に乗りながらもアップロックのステップを踏んでダイキを執拗に挑発してたし、1回エアフレア挟んでからウィンドミルに入る流れも綺麗だった。身体が軽そうに見えたもんな」
そこから発生させた運動エネルギーを利用して、トーマスからのジョーダンで少し回転しながらフリーズを決めてたのが綺麗だった。その後も肘、肩フリーズからスワイプス1回の1連の動きをこなしてた辺りぴょんぴょん跳ねてた様に見えたからな。
「特に最後のあのフリーズコンボ凄かったからな、相変わらずのフリーズ大好きマンのようだな?肘から肩へ移るときも足を入れ替えたりしてたから派手に見えつつしっかりビートも刻めてたし、締めの1990《ナインティ》から変形チェアーに持っていくまでの流れも非常に良かった。……俺からも以上というわけリクを選んだのさ」
ナインティとは2000と違って片手のみで倒立スピンを行う技のことだ。たまにパワームーバーでパームサポーター(手首用)を着けて何周も華麗に回転してみせるダンサーもいるが、リクさんは高速でほんの3周しか回らなかった。けど軸腕をそのまま曲げることで片手チェアーに繋げてみせた辺りやはり技術も凄まじい。あれを披露した瞬間会場がバカ騒ぎしてたくらいだったし。
「ありがとう、3人とも」
「くっ……ありがとう……」
「ぐぬぬ……」
「ちっ……」
3人から褒められもしたがボロボロにも言われた池谷さんが拳を握理ながらワナワナと震わせて床に視線を固定していたが、3人とも落ち込んでも仕方がなかろう。懐かしいな……俺も初バトルの時は悔し過ぎてその場で泣き崩れてしまったんだから。
「……リク!!」
「なんだ?」
「くっ……認めてやるよ……あそこのオタクにはもうウザ絡みしない……けどな、次にこそお前に勝ってやるからな!!最後に勝つのはこの俺だ!!」
「ハッ、やってみろや。いつでも相手してやるから準備が整ったら掛かって来い」
「……覚えてろよ!!」
池谷さんが取り巻き達を引き連れて踊り場を後にした。これを機会にダンスと真面に向き合ってくれれば良いんだがな。すると部長たちが各々の練習に戻って行き、リクさんはヒカルに声をかけた。
「ヒカル、これがダンスバトルというやつだ。どうだ面白いだろ?」
「……ハルトさんにブレイキンバトルの背景を教えられてから、バトルが少し怖くなってきましたよ……」
……まあ最初はそう思っても無理なかろう。ブレイカー同士のバトルが誰が相手の自信を崩せたかなのもそうだし、物凄く怖い煽りを飛ばしてくる奴もいるからな。
「心配するなヒカル。バトルは地道に慣れて行けば良いんだ。それじゃあ早速今からちょっとしたゲームをしようか。良ければリクさんも皆でやりましょう!」
「それってどんなゲームですか?」
「ちょっとしたフットワークコンテストだ。文字通り、パワームーブやフリーズ無しの縛りプレイで、ワンムーブ30秒だ」
このゲームの目的は30秒間、何がなんでもフットワークをしなければならないため、発想力を捻り出さざるを得なくなるし、ヒカルにダンスする体力をつけられるのだ。それにセシルのお悩みの解決にも貢献するはずだし、俺も足技のバリエーションを増やしたり、おさらいもしたいからな。
「良いアイデアだなハルト。それじゃあ皆を集めようか」
--
「よし皆、ルールは覚えたな?」
「……はい……」
「もうバッチリよ!!早く始めましょ」
「じゃあご褒美どうすんの?」
「……え?そんなの要りますか?」
「それじゃあくうちゃんから頬っぺたにチュウで良いんじゃない?」
「えっ、えっ!?」
そうやってリョウスケさんの質問に魅力的な……じゃなくて到底聞き捨て成らない回答をしたのはリオだ。このアマぁ……。するとセシルが調子乗りやがった。
「やっと俺のモテ期来たっしょおおおお!!」
「テメェがフットワークで俺に勝てるとでも思ってんのかこの脳筋野郎!?リオもクルミに何か恨みでもあんのか!?」
「酷くね!?」
「アハハハハ、……自然にブチギレてるハルト超ウケるんだけど〜」
「まあそうかっかすんなよハルっちぃ……今回も勝つのは私なんだからさ、くうちゃんの唇は私のもんだかんね〜」
よしオレ、コイツラコロス。
「おーいグダグダうるせえからもう始めんぞ」
「はぁ、全くね……それじゃあクルミ、いつものお願い!」
「……は、はい……」
するとスピーカーからブレイクビーツが流れ始めたので、前回のサイファーと順番で踊っていくから、先ずはリョウスケさんだ。彼もパワームーバーなこともあってか基本基礎的な足運びしかしてないが、所々にアレンジやトリックを盛れてる辺り、あまり迷いを感じられずビートも刻めてたのが好印象だ。
「ナイスナイスぅー!」
「よ〜し、じゃあ私が勝ったらとりあえずハルトの顔面をビンタする権利頂くわね」
「なっ……」
「ぷっ、くっはははは」
そういえばデスノートにもう1名追加するの忘れてたわ。……っといかんいかんバトル中は冷静にとヒカルに言ったのは俺だ。師匠が弟子の模範にならなくてどうする……その間にもミキコさんは多彩な足使いで床を彩っていく。やはりスレッドやバックロックの引き出しが多いと、こういった遊びや音ハメでは有利になるな。
「ハッ……」
「頑張ってサユリちゃん!」
「いけいけサユリー!」
また俺を指差して帰っていったミキコさんだったが無視だな。そんなことより、サユリがどれだけフットワーク縛りで踊れるのかが気になった。……熱いドラム音に合わせて先ずは普通の、次にCC入れながら、今度はリーチを短くしたりとアレンジを加えた様々な6歩を1周ずつ披露していく。……俺の勘がそう告げてるが……やはりバトル経験が豊富なんじゃないかな、サユリは。
『何というか……基礎的な動きしかしてないのに物凄く洗練されてる気がするな』
その間にも3歩で方向転換を入れてはあちこち動き回りながら、跳ねながら、緩急をつけたりと色々な3歩を披露していく。……年下を格上と見做すのはちょっと癪だが、サユリの足運びは俺にとっても凄く参考になるな。俺も自分のムーブに取り入れてみるか。
「サユリちゃん凄い!!フットワークの引き出しめっちゃ多いね!!」
「はい!……ありがとう、ございます……」
「くうちゃんのキスはウチが貰うんだから〜!」
流石スタイル重視のダンサーで、細かいドラム音のビートも拾って行く。だが今回のフットワークはいつもの緩やかな感じではなく、単純に速いのだ。6歩やってから前進する際にもしっかりビート刻んでたし、方向転換やCCも挟んでいる。
「やっぱりリオっちのフットワークも凄いな……」
「……交互にフットワークの向きを変えたりと器用だな」
『……曲の雰囲気に合わせてただビートを刻むためのダンス……本当に見てて気分が良くなるな、俺が一番好きなタイプの踊りだ。今度は時計回りに6歩したかと思えば、左足で逆方向に1歩の繋ぎを入れることでスレッドに入るし……今度は両膝でクルッとスピンすることで時計回りに戻ったりと、芸当の多い奴だな』
やがてズールースピンから立ち上がると今度はユウカのターンだ。音楽が重低音のドラム音が目立つ曲に切り替わった。パワースタイラーに努力を惜しまない性格もあってか、フットワークの研究も相当にしてるはずだ。
「よし見せてやれユウカ!」
「ファイトー!」
2歩から入ると6歩に移って、回る途中に伸ばしてる方の足をもう片足の膝裏に合わせてポージングを取ったり。ただフロントの姿勢になると右足を宙にカクカク動かしたりして、床に落とすと反対の足をお腹に引き寄せながら、帽子を指でスッと触って一瞬だけポージングを取ったり。フットワークしながらでも静止を表現できるのもかなり優秀だな。流石パワースタイラーと言ったところだろう。
「砂っちもやるわね……」
「何でこんなに思いつけるんだ!?」
なっ……これは巻き脚という奴なのか。ユウカのやついつの間に習得してたんだ……巻き脚とは文字通り足をクルッと回す動きのことで、例えばチェアーに入るときにこれをしてるかどうかで、見栄えがかなり変わってくる程だ。ユウカがウィンドミルに入る感じで足を巻きながらバックロックに移ると、また片脚を巻きながらまた起き上がって以下略。
「本当に勉強熱心な奴だな……」
「ウチもうかうかしてられないわね……」
主な練習方法は背中に寝ると膝を中心に、足で空中に円を描くようにして回すのだ。両足で内と外回りを習得すればフットワークの切れ味が鋭くなるのは知ってたが地味そうな練習だったからサボっていたが……ユウカのこのダンスを見せつけられたら、また向き合って行こうかと思えてきた。その後も自分の得意な足技を披露するとセシルに交代。
「頑張れセシルー!」
「捻り出せー!」
ムーブを整理するように少々長めにステップを踏むが、やがてドロップから入ると6歩をしてキックアウト。それから3歩を連発すると時計回りに向きを変えて6歩に移ってスレッドを披露して行く。横に転がりながら足を抜き差ししてたので音に乗りはしていたが……やはり6歩とCCの組み合わせがやけに多かった印象だな。まあこれからもフットワークのストックを増やして行くと良いさ。
「く〜むずいわこれ〜!」
「ナイストライだったぜセシル!」
「よし行けハルト!!」
今度は俺の番だ。ドラム音が床からも手を通して体へと振動して行くのを感じながら、6歩からCCへ。……俺だって巻き足が使えるんだからな。俺は1度背中に寝転がると、太陽が西から東へと登っては落ちる工程を再現するようにして、両足を左から大きく弧を描くようにして、巻きながら右に下ろす。3周程繰り返すと、右足を左斜め前に伸ばしながら、左足で前に少し滑ることでファンキーな雰囲気を演出。
「……お洒落……」
「この雰囲気を作るまでの流れが凄いなハルト……!」
嬉しい褒め言葉だ。さて個性的なフットワークならもっとあるぞ?俺は6歩を1周すると次にウィップも挟みながら披露した。これは本来時計回りの6歩の3歩目で膝カックンするところを、代わりに右足で斜め前に短い弧を描いて戻す動きのことだ。実際に見てみると地味なアレンジでしかないだろうが、キレとダイナミックさの付加価値がつく。やるときのコツは腰ごとグッと前に出すことだな。
「ハルトも勉強熱心だな〜!」
無難に6歩すると、勢いを利用してスワイプスを一度だけ披露。本来はパワームーブだが3歩から直接派生した技だと考慮して1回のみはアリとなった。そこから体勢を立て直して3歩をすると、背中に寝転がった。
『……よし』
バックロックの体勢に入ると起き上がって6歩に戻って、また1周すると両足でしっかりCCを踏んだ。だがこれは通常のではなく俺が独自にアレンジしたものだ。本名がスイッチーズとも言われているこの動きは、左側にするとしたら、先ずは右手を床に付けながら、右足を伸ばすと折り畳んでる左足を、斜め上に弾くように蹴り上げるものだ。だが一般的にはキックアウトの通り名で浸透しててあまり知られてない。
「わぁ〜それもお洒落だなハルっち〜!」
以上の前提を踏まえて、俺のアレンジCCとは先ず右に普通のCCをすると、そこから宙に浮かせた右足の膝裏に左足を嵌め込むようにくっつけてから、再び右足を斜め上に蹴り上げるのだ。右手を帽子に添えるとなおカッコ良く見せられるから、個人的にも鋭さのある足運びだし良さそうと思って開発したものだ。そこからズールースピンで立ち上がるとリクさんに交代。
「ナイスムーブだったぜハルト!!」
「行けーリク!」
向井堂さんが言ってたようにリクさんはフリーズ大好きマンだから、普段のムーブでは主に技と技の繋ぎとしてフットワークを披露することが多いが、決して疎かをしている訳でもない。……膝で滑りながらフロアに入ると、膝を交互に上げながら手で叩いたり、両足を順番に上げては最後の左足の膝裏に、自分の右腕を引っ掛けたりと、独自なフットワークの引き出しも意外と多いのだ。
「オリジナルフットワーク、イケてるなぁ〜!」
「……皆どこでこんなにも色んなフットワーク覚えてきてるの……?」
肘を床に置きながら6歩したりと基礎にアレンジを加えた足運びもしていくリクさん。スワイプスを挟んで3歩も披露すると、最後に床を太鼓と見立てて戯れるようにあちこち叩くと、高速でリーチを短くしたズールースピンで立ち上がった。
「ナイスだったぜリク!!」
「おっしゃ来いヒカル!!」
「頑張れー!」
「ユーモアラスな動きも意識してみると面白いぞ!」
念のために、そう声をかけておいた。ヒカルがやがてフロアに入ると先ずは6歩をしていき、次の周回で逆CCを挟んできた。よは2歩目で膝カックンを強調する動きを反対方向にもやった。次に普通のキックアウトをすると、フロントの姿勢で両脚を大きく開脚させては閉じるを、ビートに乗るようにしてやって行った。次にその両脚を引き寄せてう◯こ座りすると、両手を膝裏に差し込んで両方の足をガクガク揺らせる動きをして見せた。
「おおおおヒカル、今の面白かったぞ!!」
「アハハハ、何今のんウケるんだけど〜」
「へ〜そういうことも思い付くんだな?」
俺が咄嗟に吐いた言葉を参考にしたのだろうか?……だとしたら動きを思いついて実行に移すまでの過程が短過ぎなかったか!?いや考え過ぎだろうか……どっちにしろ前のサイファーで披露した独特なフットワークと言い、ヒカルの発想力が飛躍してるのは間違いないだろうな。その後も3歩を披露するとムーブ終了の意思を見せた。
「よっしゃあ!一旦終了〜!」
「じゃあ早速だけど、ウチらで誰が一番良かったのか投票しましょう!」
「それって例のご褒美のやつなん?」
「え……本当にやるの?……」
そうやって苦笑を浮かべているのはクルミだ。まあ大丈夫だろう、俺の見立てでは、俺かユウカ、リオの誰かに票が集中すると予測している……俺を選べ!!
「はあ……まあいいだろう」
「当然俺っしょおおおお!!」
「うるっせーよバーカバァーカ」
「……ふふふっ……」
「じゃあ……」
「じゃあ皆でいっせーのーで、投票しよ!はい、いっせー、のー、で!!」
票が俺の予想通りに3択にバラけたが、半分の表を集めていたのは……。
「よっしゃあ〜!!」
「ちっ……やはりユウカだったか」
「まあ、おめでとう、砂っち……けど次はウチだって負けないわよ!」
するとユウカがクルミの方へ走って行ったので、最初は渋ってたようだけど。あの可愛い子の上目遣いに根負けしたのか、本当にユウカの頬っぺたにキスをしてあげたようだ。
「やったね〜!!えへへ……ありがとう、くうちゃん」
「……ううぅ〜……」
そうやってそっぽ剥いて2人とも床を見てても、顔赤くしながら微笑んでるのが可愛いって知ってるんだからな。また今度俺も是非混ぜて頂きたいものだ。
その光景を見ながら改めて俺は思う。やはり百合は良いな……と。
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