第2話 決戦

 バルカンが唸り、弾がルシファーの頭へと真っ直ぐに飛んだ。

 そして、砂煙が舞った。


 それが晴れるとそこには少し抉れた地面と……空薬莢があった。

 直ぐに周囲を索敵し始めるが、一人。また一人と地面へと倒れていった。

 最後の一人がなんとか銃を撃つが、刀に斬られ、地面へと突っ伏した。

 粒子になるのを見送ったルシファーは川のほうを向いた。

 そこには、最初の狙撃で死んだはずの宿敵が居た。

 このゲームを開発し、新たな世界を引き寄せようとしている元凶。


「やあサタン。お久し振りだね?」


「ええ、オプス。丁度今日で3年ですね?」


「日付まで覚えていたのかい?」


 そして、銃を手にしたオプスに対し。ルシファーは何もせず構える。


「良いのかい?」


「初手ならあげるよ」


「なら何をくれないんだい?」


「お前が望んで止まない新たな世界だ!」


 そして、川を走り始めた。


{スライドラン}

 30%の慣性移動を追加

 地上での進行滑りの効果発動

 35.8秒の効果時間


 川を滑るように渡り、頬に銃の弾丸が掠る。

 刀が月明かりを反射し、透明になる。

 クリティカル率がはね上がった。

 当たれば420%の攻撃は確実。

 掠りさえすれば良い。

 しかし、そんな思いの乗った刀は空を斬る。

 刀が月明かりを反射して透明になった時のデメリットが発動した。

 放熱だ。

 その刀は鎧袖一触の刀と呼ばれ、悪魔憑きとも呼ばれた刀。

 放熱の熱い湯気が手に届く。


「さすがに危なかったよサタン。その残月刀の威力は我々が一番知っているからね」


「そちらのP653も魔改造済みだろう?APが8割も削れたよ」


 このゲームは体力値で言えばAPが一番高い。

 強化もしやすく。修復も簡単でHPよりも被弾時の二次被害も小さい、超有能なシールド系に当てられるものだ。

 そんな物が8割も削れた。

 先ほどの対空射撃もプラスすると、もうAPは無いのである。

 そして、APが無くなり。頬から血が出ているとゆうわけだ。

 ガチャンと豪快な音を立てて刀が元に戻る。


「さあ、死の果てまで共に行こうか」


「先ほどから痛い言葉ばっかりだが……その言葉。乗った!」


 戦闘が再開された。

 刀を避け、至近で銃は発砲され、両者共に互角に戦う。

 しかし、先に力尽きたのはオプスの方だった。

 膝を着き、立つ事すらできずに荒い呼吸をする。

 ルシファーも満身創痍だが、残月刀よりは遥かにマシだろう。

 無茶苦茶な使い方をしたのだ。壊れてない事が奇跡だ。


「ハァ…ハァ…先に行くからな……お前も、すぐに来るだろう?」


「行きたくない。でも、これじゃあ無理そうだな?」


「ハハッ。勘違いしている者に従っていた気分は……どぅ…だ…?」


「勘違い?待てッ!!」


 自害したオプスは粒子となって銃をそこに遺していった。

 P653。

 ハンドガンHGでストーリーの中期から後期まで良く使用されるラバーグリップが印象的な物だ。

 しかも運営の魔改造品。

 先ほどの戦闘で乱射していたとゆうのに耐久値は減っていない。


「勘違い?一体何が間違いなんだ?まさか!?」


 新たな世界との結合の為のゲームだと思っていた。

 しかし、ブラックホールの実験は意味がわからない。

 ただ単に引き寄せるなら、別にそんな実験はしなくて良かったはずだ。

 ブラックホールは世界を繋ぐ穴として古来のアイルランドから伝承されている。

 つまり、この世界ゲームは新たな世界へ侵略する為の実験場。


「このゲームに居る全員を新たな世界に送り込むつもりか!?」


 そうなればもう遅い。

 やれる事はただ一つ。

 たた呆然とブラックホールに飲まれるしかない。

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ブラックボックス ~最強を目指す一人の男の娘の話~ デルタイオン @min-0042

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