世界が始まった日

太古からの訪問者

 ザクッザクッ!


 削るような音は歩く騎士達から聞こえる。

 緑生い茂る森の中。戦いすらなさそうな平和な空気が流れる森の中心に突然、人がやってきた。

 突然空気が変わったのに気がついたのか。赤い小さな木の実を食べていた茶色い動物が逃げた。

 そこを騎士達が通り、木の実は潰された。

 騎士達が守っているのは美しい馬車。

 角が生えた馬が引く馬車は程よく金を使い、磨きあげられた王族専用車だ。


「姫様。到着しました」


 女性の声が馬車の外から聞こえた。

 馬車の中で座っていた女の子は扉が開かれると外へと出ていった。


「道中の護衛ありがとうございます。ここから先は不要です」


「……わかりました」


 騎士はそう言うと一歩退き、姫様を見送った。

 長い髪が風でゆらりと流れ、木漏れ日が金色の髪を光らせる。

 石畳の上をコツコツと歩き、そして緑が包み込む1つのカプセルの前へとたどり着いた。


「どうか、起きてください。いにしえから守りし勇者様……」


 そして、蒼く光るところを割れ物を扱うようにそっと。人差し指で押した。

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