17,晴れのちくもりのモーニング

「うーん! 朝だあー」


 八時少し前。が覚めて上半身を起こし、大きな欠伸あくびをしながら、両手を思いっきり天に伸ばして鼻で深呼吸をする。今朝は隣に秋穂ちゃんがエビのように丸まって眠っている。毎日お勉強三昧で疲れているだろうから、敢えて布団を掛け直して寝かせておく。


 今朝はまだ、カーテンを開けないでおこう。


 嬉しいな。心までほっかほかの夜なんて、何年ぶりだっただろう。もう会えないと思っていた秋穂ちゃんと、また一緒にいられる。それが凄く嬉しくて、眠る前とお目覚め早々、思わず目の下を人差し指でなぞった。


 しゅわしゅわしゅわしゅわー!


 カーテンの向こうから女の子を誘うクマゼミの男の子たちの元気な声が聞こえてくる。私は女の子だからって誰にも迫らずいつまでも彼氏をつくらないでいるのも青春らしくないのかな。かといってそういう意味で気になる男の子がいる訳でもないし、無理して誰かと付き合うのも相手に失礼。妹分だと思っていた秋穂ちゃんが先に恋をしたからといって、私が急ぐ必要はないのだと、冷静になった。


 あぁ、肩が痛い。首筋から胸にかけて凝り固まっている。生理前はつい食べ過ぎちゃって、バストがワンサイズ大きくなる。元々気負いやすい性格で、なるべく前向きなことを考えるようにしているけれど、どうしたってそうはいかないときもある。


 とりあえず、目覚めの歯磨きをしよう。約3分だけは無心でいられる。


 歯磨きを終えるとそこから丸一日、ほぼノンストップで思考を巡らせる。意図的にではなく、そうなってしまう。


 昨日初めて言葉を交わした望くんは、ちょっと心配だ。水分を吸収するだけでは動植物は生きられないのと同じで、ただ勉強をするだけでは、どうにもならない。与えられたカリキュラムをこなすだけならば、きっと教師や講師のように勉学そのものを職業にしたって人生において良い結果は出ない。懸命に勉強して職を得たならば、社会をより良くするために自ら何かを生み出すか、意見を述べなければならない。でなければ、生き残れない。社会が発展を望む以上、私の推論はほぼ正解だろう。分野によって一部例外もあるだろうけれど、そこで努力に見合った喜びや生き甲斐を見出すのは難しいだろう。それが現実。そんなことを言ったらほとんどの人からは反感を買ってしまうのに、つい言葉にしてしまう私は未熟者だろうか。


 あぁ、この世界には新しい発見や素敵な出会いや温もりがたくさんあるのに、無機質な要塞に閉じこもっているなんて、勿体ない。けれど、温もりに飢えているのは私も同じ。やっぱり、私もまだまだだ。


 さて、朝ごはんの支度をしよう。昨夜は食べ過ぎちゃったから、今朝は軽めのハムエッグにしよう。

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