14,ぬくもりあふれる日々を夢見て

 18歳になった私は、まだ恋を知らない。だから、愛の告白をされても、正直なところ困惑が先走り、私に好意を寄せてくれた嬉しさこそあれ、相手はどれだけの勇気と覚悟を持って私にぶつかってきてくれたのか、その重みをいまいち理解できていないと思う。


 異性に興味がないとか、誰かを愛せないというわけではなくて、テレビを見てイケメンだと思う芸能人はいるし、誰かを愛し、寄り添い合って生きてゆきたいという願望もある。


 私の周りには特に好意を抱く対象になる男子が現れてないだけ。恋を知らないから断言はできないけれど、今はそう思っている。


 午前2時、布団を並べ隣で虫のような寝息を発てる秋穂ちゃんは、随分変わったと思う。当たり前といえばそうだけど、小さい頃はとても破廉恥な言動に及ぶような子には見えなかった。というよりそもそも年齢的に興味が湧かない年頃だったのか、それとも心をオープンにするきっかけがあったのか、いずれにせよ、言葉を交わさなかった六年の間に色々な変化があったのだろう。


 よく遊び、よく学び、恋を知り、やがて愛を知る。秋穂ちゃんはいまも昔も私の一歩前を歩いている。それだけは相変わらずで、けれど私に焦燥はない。きっと恋や愛は人との廻り合いの中で自ずと芽生えるもので、誰かとの関係を発展させるために無理矢理引き出す情ではないと思うから。


 それよりも、私の胸の中は秋穂ちゃんと再会した嬉しさでいっぱいだ。一年以上同じ学校に通っていて、どうして気付かなかったのだろう。人間関係の広範化とか勉強やバイトで忙しくなったとか、思い当たる理由はいくつかあるけれど、それでも大好きなお友だちの存在に気付けなかったのは、森を見る能力が退化してしまったからだろうか。知らないうちにつまらない大人の仲間入りをしかけていたのかと思うと、自分に少々嫌気が差して、少し落ち着いてリフレッシュする時間が欲しいと思った。


 あぁ~、秋穂ちゃん可愛いなぁ。レンタルショップで再会した瞬間、本当は大はしゃぎして抱きついて頬擦りしたかったけど、公衆の面前なのではやる気持ちをグッと抑えたのだ。


 でも、これからはぎゅうぎゅうし放題。眠りから覚めたらさっそく抱きついちゃおうかな。小さい頃のように温もりあふれる日々を夢見て、今宵はおやすみだ。

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