第41話 ヒロインちゃんは怒る フェリシア視点
「なぜ、私は建国祭のパーティーに参加できないんですか?」
建国祭では国内の貴族が王都に集まりあちこちの屋敷で建国を祝う宴が催される。その中でも王宮で開かれるパーティは国外からの来賓を招き桁違いに豪華だと聞く。
他国の要人に顔を覚えてもらうチャンスなのに、なんでなの?
「あ——、まったく参加できないのではない。王宮で開かれるものは参加できないだけで、他の貴族の邸宅で開かれるものなら大丈夫だ」
「なぜ、王宮だけダメなんです?」
「王宮で開かれるパーティーの招待状は上位貴族にしか送られない。外国の王族も多いし失礼があっては困るからな。他には爵位や領地を新たに受ける者、功績を讃えられる者も招待される」
なんですって!
でも、ゲームでは建国祭には間違いなく参加していたわ。
ここでの人脈が後々お役立ちアイテムとして助けになるんだから。
「まだ、君は正式な聖女であると認められていないので今年は招待されないだろう。だが、来年は私と正式に婚約すれば参加可能だ」
一緒に参加はできないがドレスはお揃いにしよう。とサージェは呑気に紅茶を啜った。
やっぱり……聖獣を見つけていないことでシナリオに影響が出てきている。
『薔薇の乙女に花冠を』は、とてもシンプルな乙女ーゲームで攻略が成功すればあとはアイテムを収集し理想通りの結婚式を挙げるという単純な展開だ。モフモフの聖獣もアイテムの一つだし、聖女の力も建国祭で出会う他国の王子様もみんなレベル上げのイベントでしかない。結婚式が終われば次のヒロインにバトンタッチして私は儲けたお金でのんびり贅沢三昧してればいいはずだった。
それなのに、アイテムを手に入れるのにこんなに苦労するのはおかしい……早急に修正しなくちゃならないようね。
やっぱり、エレノアを修道院送りにできなかったことから狂い出しているのかしら。
今からでも、修道院送りにする?
「フェリシア、そんなに悲しそうな顔をしないでほしい。建国祭が終わったらどこか旅行にでも行こう?」
悲しんでいるんじゃないわ。私はあんたに幻滅してるのよ。
「サージェ様。どうしても王宮のパーティーには参加できませんか?」
「うーん。すまない。招待客のことは私の権限にないんだ」
招待客だけじゃなくて、あんたの権限が及ぶところなんてないでしょ。
そう突っ込んでやりたかったが、グッと我慢した。
「では、王宮のパーティーのことは諦めます。その代わり、フローズン卿の参加するパーティーを調べて、一緒に行ってください」
どんなにシナリオが狂ってると言っても、聖獣だけは手に入れて聖女になるために覚醒だけはしなくては。
そうだわ!
光の聖獣のほかに、この世界には闇の聖獣がいたんだった。
万が一に備えて、そっちも調べておくほうがいいわね。
「サージェ様、もう一つお願いがあります」
私はサージェの隣にピッタリと座り、膝の上に手を乗せた。
「なんだい?」
だらしなく笑い、サージェは私の肩を引き寄せる。
うげっ。
昼間っからそのいやらしい目つきで胸を覗き込むのはやめろ!
「私、王宮の図書室に入りたいんです」
引っ叩いてやりたいの我慢して上目遣いでお願いすると、緩んだ顔を私の顔に近づけてきて「私のフェリシアは勤勉だね」とチュッとほっぺたにキスをする。
うざーい。
心の中で叫んで、私は頬に手を当てて恥じらうふりをした。
「フローズン卿の参加しそうなお茶会を知っている」
「本当ですか?」
「ああ、カイルの家で開かれるお茶会にあいつと一緒に参加してから領地に連れて行くそうだ」
「カイルの?」
なんで、カイルの家のお茶会に?
「あいつって誰ですか?」
「クレイドだ。母上はやっとあいつを王宮から追い出すことができたようだな」
クレイドって毒殺されるはずの第五王子じゃない。
「王妃様がクレイドをフローズン卿の領地に連れて行くように仕向けたんですか?」
「多分な。あそこは魔獣や隣国と常に戦いが起きているから」
ククク、と下品に笑サージェは「いつ死んでもかしくない」とつけ加えた。
うーん。
死亡フラグが立っているのは変わりはないけど、毒殺と野獣に襲われて死ぬのでは死因が違い過ぎる。
「私もそのお茶きに参加したいです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます