第5話 自己破産

退院して、商店街近くの7階マンションの4階に引っ越しました。オートロックの1Kで、家賃は42000円です。元の医者に戻りました。すぐに躁転しました。

行政の相談員は生活保護でと言っていたのに、保護課は年金の額が生活保護を越えるので生活保護には該当しないと言いました。約束が違います。

気の緩みでしょうか、パチンコ屋で、10万円以上の現金とカードや免許証の入った財布を擦られました。当然、警察に届けましたが出て来ません。バッグの中に別の会社のカードが入っていたので、20万円キャッシングしました。それでも苦しい。

家賃が払えないと保護課に相談に行きました。通帳の残高を無くして、食べ物を買うように言われました。愕然としました。知り合いの弁護士に相談しました。

「自己破産しましょう。借金が100万円以上あれば出来ますよ」

そこからは早かったです。この事を知った相談員は激怒して電話をかけてきました。以降、口をきく事はありませんでした。手続き開始から約3ケ月で免責決定がおりました。

長年の贅沢癖は抜けません。朝は喫茶店でモーニング。喘息なのにタバコを吸う。缶コーヒーの100円がお金だと分からない。友達から頻繁にお金を借りました。返すことはありません。最低の輩です。

この時には、相談員の勧めで居宅介護のヘルパーさんが週2回入っていました。障害者地域生活支援センターの担当もついていました。節約ですよ。それが出来ないのです。医師が働けというので、B型事業所に通いだしました。医師は工賃が月15000円と知ると天を仰ぎました。そして言いました。

「追い詰められたら、どんな仕事でも出来るでしょ」

私は、この医師ではダメだと転院します。新しい主治医は生活保護推奨でした。お金が無いなら、1日家に引きこもって瞑想しましょう。1日2000円で生活出来るようになれば、道は開けますよ、と言われました。地域活動支援センターにも通い出しました。行政は、企業年金が切れる2年後に、保護を申請しろと言いました。家計相談のコンサルティングも無料で受けました。

心身共に調子が悪く、転倒骨折、躁状態、頻脈発作、喘息。記憶があいまいですが、2週間ほど車椅子生活を経験しました。

支えてくれたのは、友人のくろいぬさんです。毎週、差し入れを持って、遊びに来てくれました。車椅子でバスに乗り、病院に連れて行ってもらったこともあります。

救急車で搬送された時の病院代が数万円になり、父親に払ってもらったこともあります。家賃を滞納したこともあります。ただ、電気、ガス、水道、電話は止めませんでした。

歯が1本も無くなりました。ストレスで折れていったのです。入歯を作りましたが、うまく行きませんでした。歯科医も無理なら入歯はしない方が良いと言いました。

環境調整から2年以上が過ぎました。私は生活保護申請のタイミングをうかがっていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る