第4話 環境調整

ヤブ医者は偉そうな若造で好きになれませんでした。なお、リアルでこの医者はヤブです。論文偽造で、指定医の資格停止処分を受けたのですからね。

私は、病院を変わりました。その病院の院長は「再起を目指さない治療など治療ではない」と言いました。また、こうも言いました「貴方は貧困で生きられる人ではない。生活保護は無理だ」。

威勢は良かったのですが、治療は上手く行きませんでした。まったく意欲がなく、体調も悪い。糖尿病で緊急入院もしました。やっと、大手企業との委託契約の話にたどり着いたのですが、ドタキャンをくらいました。焦りました。お金がありません。何しろ、月100万円以上使う生活をしていたのです。退職金を使い果たしました。収入は月額約14万円の障害年金と、2万円の企業年金のみ。私は銀行ローンでお金を引き出し、最後の勝負と「次世代文明の誕生」という本を出版しました。

夏が終わり、遂に、発狂してしまいました。画期的な日本の防空システムを開発したので、防衛省から25億円が現金輸送車で届くと妄想しました。

空き巣が入ったと警察に連絡しました。女性警官が来ました。私は障害者手帳を見せ、いろいろと話ました。署に来るよう言われ、警察の車で署に行きました。そこでも1時間ほど、意味不明のことを喋ったようです。結局、山奥の病院に連れて行かれました。入院でした。

妄想が激しかったです。ここが政府が容易した特別会議室かと思いました。なにしろ私は、国際政治の権威なのですから。

生活保護でしたね。この病院の主治医は、環境調整が終わるまで退院はさせないと言いました。環境調整。精神科はそこまで介入するのか。驚きました。

離婚しました。妻と娘が喫茶店に来てくれて、ささやかなお別れ会をしました。

引っ越しを強制されました。家賃の安いところに引っ越さないと、退院させないと言うのです。何度も外泊をし、不動産を見つけ、引っ越しの段取りをしました。

行政の相談員には、引っ越し費用は社会福祉協議会から借りろと言われ、民生委員の面接を受けました。驚くべき低金利でした。私は、日本の福祉の懐の深さを知りました。

妄想もなくなり、引っ越しを終え、私は4ケ月で退院しました。環境調整。いよいよ生活保護だなと思いました。

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