第2話 起業

私の妄想の主体は重要人物妄想でした。私はノストラダムスが預言した世紀末の大王。画期的な論文が世界を駆け巡り、俺はノーベル3賞を同時受賞する。論文は世界各国でベストセラーになり、大金持ちになる。それには、サラリーマンをしていたのではダメだ。気分障害と診断され、出世コースからは外れており暇だ。お金もある。私は欲しい本をアマゾンでどんどん買い、寝る間も惜しんで読みました。そうして書き上げたのが「21世紀の構図」です。これは森岡正博教授のホームページにマンソンジュの名前で掲載されました。ホームページも作りました。ガンガン書いていました。メールマガジンも発行しました。そんな時、会社の欠勤日数の計算を間違えて、休職扱いになってしまいました。復職の条件はリワークに行くこと。冗談ではありません。そんな馬鹿なことはしていられません。私は主治医と相談して入院しました。スーツケースにいっぱいの本を持ち込み、朝から晩まで勉強しました。

50歳の誕生日が迫っていました。50歳で自由定年退職できる制度がある。ネクストキャリア支援金も貰える。チャンスだ。私はこれに飛びつきました。起業する。決意は固かったです。

失敗した時のリスク管理。妻子は妻が資産家なので心配なし。病状、つまり精神病の常態は不安定。最悪、離婚して生活保護。そこまで覚悟していました。くだらないことに時間を使いたくない。私には大王としての使命と宿命があるそう考えました。

最終出勤はタクシー通勤にしました。高級チョコレートのお土産を手提げ袋に入れて。挨拶が終わると本部長が飛んできました。応接室で激励されました。これは、嬉しかったです。

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