八話 「こっちこそ……ありがとう」
「んっ……」
目がようやく覚めた。
向こうのリビングの方で足音が聞こえていた。
桜が引っ越しの荷物を片づけているのかな。
「よいしょ」
体を起こし、桜の方を向かった。
「桜」
「えっ! あっ仁……」
桜の顔が一瞬で真っ赤になっていた。
「あぁ……」
そういえばさっき桜にキスされたんだよな。
そう思い出してくると桜の口の柔らかった感触が一気にきて。桜の体温と匂いまでもが鼻の奥で蘇っていった。
「あぁ……」
もう、慌てて口元とを塞ぐが心臓の鼓動がハンマーで叩いたかのような感触だった。
「……あつ」
自分の耳がジンジンとして熱い。
桜も口元を隠し、後ろをふり向いた。
「もう午後の二時だけど仁はお昼食べる」
「えっもう二時!?」
慌てて時計をみると桜の言った通り二時を指していた。
「……」
そのせいなのか、二時だと聞くとお腹が空いた。
「欲しいです」
「わかった……」
桜が頷き。キッチンの方に向かって用意をしてくれた。
「朝、焼こうと思った鮭だけどいい?」
「ありがたいです」
桜の顔がまともに見れない……。見てしまうと恥ずかしい気持ちになってしまう。
「……ごめんね仁」
「えっ」
桜が謝ってきた。
「その仁がイケメンでカッコよくて……小さい頃からちょっとキスとか憧れてた」
「……俺も同じだよ。桜とキスなんて憧れてました」
「――っ」
桜の顔をみると顔が真っ赤になっていた。
「……嬉しいです」
「こっちこそ……ありがとう」
桜とキスできた今が本当に幸せ過ぎる。
「……」
「……」
お互い無言のまま食事をしていたが、やっぱり桜の顔が見れなかった。
なにか会話を繋げたい。
「このあと、また荷物の方を整理すればいいのか」
桜が小さく頷いた。
「そうして下さると助かります」
「わかった」
たまに骨とか引っかかりながら焼き鮭を食べるが、味の方は少ししょっぱいくて美味いくらいしかわからなく。
この焼き鮭より桜の唇の方が何度も蘇り最高だったなんて言うまででもなかった……。
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