第2話 アフターランディングチェック

 母艦を見据え、着艦する。

 翼を畳んだら、ハンドリングオフィサーに従い、コックピット右側にあるハンドルで、狭い甲板を移動していく。

「アフターランディングチェック」

「はい」

「ブレーキ」

「ミドル」

「フック」

「アップ」

「オートスロットル」

「マスタースイッチオフ」

「スタビライザー」

「スタンドバイ」

……

 

 駐機しているグリペンの隣に機体を止めたら、エンジンを停止。アフターストッピングエンジンチェックを終え、機体を降りる。

「わーやっとご飯食べれる~」

 石炭穴というあだ名で親しまれているオブザーバ席から降りた高宕は、縮こまった体を、海からの強風を浴びながら伸ばした。

 

 だが、世界は残酷だ。

 

「え゛!? ご゛は゛ん゛残゛っ゛て゛な゛い゛の゛!?!?!?」

 

 食堂に、高宕の悲痛な叫びが響いた。

 

 本来であれば、もっと早く帰れるはずだった。その予定が伸びた内に楽しみにしていたミートボールは全て屈強な船乗りの胃袋で消化されてしまったという。

 高宕は力なくその場でくずおれた。何もない海の上で、数少ない楽しみと言えば食事くらいなモノ。それさえ奪われてしまえば、文字通り、何を糧にして生きればよいのか。

 

「高宕さん……ないモノは仕方ありませんよ」

「蒼樹君……! 」

 落ち込む高宕の側に、蒼樹が立った。

 目線を合わせ、肩にそっと触れる。

「こんなことで、くじけてはいけませんよ」

「蒼樹君……」

 高宕は、蒼樹の顔を覗き込んだ。

「めっちゃ泣きそうな顔してるじゃん」

 泣きそうな顔で、カップ麺を握りしめていた。

「いっしょにカップ麺食べましょう、高宕さん」

「そうだね……。カップ麺食べようか……」

 

 哀れな二人に、他の乗員は声すらかけてやれない。

 二人はそこそこ広い食堂の中で、虚しくカップ麺を啜った。

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