88 運命か必然か
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~研究所~
無事コノトキ草を見つけたレイ達はDr.ノムゲの研究所に戻ってきていた。
「博士、コノトキ草持ってきたぜ!」
レイは今しがた採ってきたばかりのコノトキ草を博士に渡した。
「ほぉ。よく見つかったの。しかもこんなに早く」
「俺の頼れる仲間が速攻で見つけたからな」
そう言ったレイはドヤ顔でリエンナを博士に見せつけた。
「やるじゃないか若者達。これはラッキーじゃった。研究で使っていた在庫が切れそうだったからのぉ。良かった良かった」
これにて無事クエスト終了。……なのだが、余りに想定外の展開に、ローラとジャックはまだ落ち込んでいた。
コノトキ草を見つけてから今に至るまでずっとこの調子である。
「おい。いい加減にしろよお前ら」
「「だって~……」」
遂に声まで合い始めたローラとジャック。誰がどう見ても、落ち込んでいるのは一目瞭然だ。
「何かすいません……ローラさん、ジャックさん」
コノトキ草を見つけたリエンナが、バツが悪そうに二人に謝った。
「謝る事じゃないだろリエンナ。寧ろ見つけたんだから褒められるべきだ」
「ランベルの言う通り」
珍しくレイとランベルの言う事がとても正論に聞こえた。リエンナは当然悪くない。そんな事はローラもジャックも百も承知だ。
ただ、盛り上がっていただけに、気持ちの切り替えが直ぐに出来ないだけなのである。
不憫そうな二人を見て、リエンナが一つの案を出した。
「あ、でしたら、無事クエストも終わって、本当に時間が出来ましたから、今からもう一度森に行くのはどうでしょうか? コノトキ草を探さなくても良いですから、思う存分魔草を探せます」
リエンナの提案に、沈んでいたローラとジャックの顔に一瞬で生気が戻った。
しかし、これに納得いかないのがまた二人。
「それはダメだぜリエンナ。もう用は済んだ。ローラ達に合わせて森に行く必要はねぇ」
「勿論だ。コノトキ草を探すついでだったら別に構わないが、目当てのコノトキ草を見つけたのに何でわざわざまた魔草探しに行かなきゃならねぇんだよ」
ごもっともな意見に、再びローラとジャックがガクッと肩を落とした。
「ワシの研究所で何をブツブツ揉めておる。魔草探しなど何時でも行けるじゃないかジャック」
「初めてこんな話の分かる子に出会ったんですよ僕……でもまぁ仕方ないね。また行こうよローラ。今博士が言ったみたいに、僕は何時でも行けるからさ」
「ジャックさん……。分かりました。今回は私が我が儘を言ってます。珍しくレイとランベルの言う事が正しいので、今日はもう帰りますね」
「大丈夫! 魔草はどこにも逃げたりしない。いつでも僕達を待ってくれているよ。そうだろ?ローラ」
「ジャックさん……!」
最早返す言葉がない。
レイ、ランベル、リエンナは勿論、博士もそう思っていた。
「大袈裟だな全く。ジャックさんが何時でも大丈夫って言ってくれてるんだからまた来ればいいだろ」
「そうね……分かったわ」
「俺が騎士団入れば嫌でも時間出来るだろ。その時にレイとリエンナに頼んでまた来いよ」
落ち込むローラを励まそうと声を掛けたランベル。その言葉が思いのほか効果があったのか、ローラは急にパッと顔つきが変わった。
「そっか! 確かにそうだわ。ランベルが騎士団に入れば、その分今までより時間が生まれるわね!」
「おいおい……」
「ジャックさん、もう少し待っていて下さい! そうすればまた直ぐに来られるので」
明るく言い放つローラ。「どういう意味だよ」とツッコミたいランベルであったが、もう色々と面倒くさいのでそのままスルーした。
何はともあれ、無事に話もまとまった様なので、レイ達は冒険者ギルドに戻る為、博士達に挨拶をした。
「じゃあ俺達行くから。また何かあったら頼んでくれよ博士!」
「騒がしくてもう御免じゃわぃ」
「ランベルいなくなったら直ぐ戻ります!」
「いや、ローラ……君達仲間なんだよね……?」
流石のジャックも、ローラの切り替えの早さに戸惑っていた。
そんな会話をして別れを済ませたレイ達は、研究所を出ようと扉に向かう。
それと同時、“誰か”が研究所を訪ねて来た様だ。
――コンコンコンッ……。
研究所の扉を叩く音が聞こえる。
「誰だろう……今日はやけに人が来るな」
ジャックが扉を開けると、そこには一人の少年と何やら体格のいい男がいた。
「ここがDr.ノムゲの研究所ですね」
少年はそう言うと、ずかずかと研究所の中へ入って行く。もう一人の体格のいい男もそれに続いた。
「え……⁉ ちょ、ちょっと、アナタ達……!」
突然の事に困惑するジャック。
だがそんな事は他所に、少年と男はどんどん中まで入って行くと徐に足を止める。
それに気付いたレイ達の視線も、自然とその二人の方へ向けられていた。
「“君達”か……」
少年は小さくそう呟いた。レイ達の顔を見て。
全員面識がある訳では無い様子。
ジャック、ローラ、ランベル、リエンナは、その二人の顔を確認したが、自分達に思い当たる節は無かった。
研究所に来たのだからきっと博士の知り合いなのだろうと誰もが思っている。
その証拠に、この二人に反応を見せたのは博士だった。
「おやおや、これはまた珍しいわぃ。随分ご無沙汰じゃな。しばらく見ない間にまた大きくなられましたなぁ」
やはり博士の知り合い。
そう誰もが思っていたその直後、思いがけない方向から“その声”はした。
「お前は――」
そう言ったのはレイ。
口を半開きにし、目を見開きながら注がれた視線は、一人の少年へと向けられていた。
「久しぶりだね……
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