第45話 デートって……コト!?
翌朝。
昨晩に引き続き朝食もまたゼノレイ家の馳走になった。
小麦のパンにサラダ、生ベーコン、ゆで卵、サラダといったシンプルなラインナップだが、普段俺が露店街の屋台で買うものよりも品質がいい。
飲み物は俺がコーヒーでサーニャはフルーツジュースを飲んでいる。
「うまいな、これ」
「本当? 口に合ってくれて良かったわ」
「庶民舌なもんでな。ぶっちゃけると昨日の飯よりこっちの方が好みだ」
昨日のディナーとは違い料理人やメイドの姿もなく、2人っきりなのもあって落ち着いて食事が出来るのもありがたい。
昨日居心地悪そうにしていたのを見抜かれており、気を利かせてくれたのだろうか?
「サーニャ、グラス空いてるぞ」
フルーツジュースの入ったデカンタを掴み、サーニャの空いたグラスに注ぐ。
人間サイズのテーブルでは、卓上のものに手を伸ばすのは大変だろうから。
「……それじゃあ私も」
「いやサーニャはしなくていいよ」
サーニャがお返しに、コーヒーサーバーに手を伸ばすのを制止する。
なんのために俺が気を利かせたと思ってんだよ……。
「なんか……夫婦っぽいやり取りで良いわね」
「ぶっ!? 何に言ってんだよ。結局その話は反故にしただろ。悪いけど俺の子種は諦めてくれ」
「残念だけどしょうがないわね」
頭髪と同じ桃銀色のまつ毛を伏せながら嘆息するサーニャ。
罪悪感が出てくるが、ホビットと子作りする罪悪感と比べたら圧倒的にマシである。
そんな時、ダイニングに置いてある魔導時計が鳴り出して8時を告げる。
――ピコン
――本日のデイリークエストが更新されました
■仲間を1人集める(0/1)
■62層の魔物を10体討伐する(0/10)
■62層のマップを20%埋める(0/1)
本日も時間通りにデイリークエストが発行される。
思い返せばロリエルフのデイリークエストに付き合ってもうひと月ほどになる。
既に妹の病は治り、十分な蓄えもあり、今後も十分な魔石集めを出来るステータスを持っている故、これ以上ロリエルフの言いなりになる必要などないのだが、あいつには俺をここまで育てて貰った借りがあるし、何よりデイリークエストに失敗すると眼球が爆発して死ぬと脅されている。
奴の手の平の上で踊らされているのは癪だが、悪魔に魂を売った代償として甘んじて受け入れている。
1つ気になることと言えば、あいつが俺をここまで強く育てた上で何をさせたいのかが未だに分からないこと。
自動に生み出され続ける魔物の殺処分のために俺を使っているという程度の考察しか出来ていないのが現状だ。
「にしても……62層へ仲間1人連れていくのか……逆に危険度が増すな……」
「どうかしたの?」
俺の目線を追いデイリークエストが書かれている板の方を注視するも、板を見ることの出来ないサーニャは不思議そうに首を傾げる。
……いるじゃん。俺と同じくらい強くて、62層でも十分に戦力になる冒険者がここに。
「正宗に勝手に経験値を貯めてしまった責任なんだけどさ、サーニャのレベル上げに俺が協力するっていうのは、どうだ?」
「え?」
俺は提案する。
ついこの前であれば、まずありえないセリフ。
「俺とパーティを組んで、62層へ行かないか?」
サーニャはレベルが上がり、そうなれば再び正宗を使えるようになる。
俺はデイリークエストを消化できる上に、正宗の件で負った責任も取ることが出来る。
俺の都合にサーニャを利用している形になってしまうが、サーニャにも利がある話だと思う。
「なるほど……」
サーニャは小さな手を小さなあごに当てながら考える素振りを見せる。
「62層のマッピングや生息している魔物の情報も欲しいし、あなたがいてくれると心強いわ。私が正宗の主導権を取り戻せる協力、お願いね」
無事サーニャの了承を得ることが出来たが、もしかしてあのロリババア、俺の目を通してこの光景も見ているのではないか?
このタイミングで仲間を1人連れて深層に潜れというクエストを出してくるのは、あまりにもタイミングが良すぎる。
プリムに悪態を付きながらも、俺は体力をつけるために朝食を口へ放り込んだ。
「……!(も、もしかしてこれって、デートって……コト!?)」
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