第17話 神に愛された少女

マリアンヌ・デュミトレス

レベル16

HP50/50

MP60000/60000

筋力3

防御2

速力4

器用4

魔力6600

運値8

スキル【ポーション作成LvMAX】【自動MP回復LvMAX】【聖餅拝領LvMAX】

魔法【清潔魔法LvMAX】【回復魔法LvMAX】【付与魔法LvMAX】【強化魔法LvMAX】【障壁魔法LvMAX】【蘇生魔法LvMAX】【閃光魔法Lv1】



 なんじゃこりゃ。

 改めてマリーを鑑定スキルにかければ、ステータス数値が変化しているしスキルや魔法もとんでもない数とLvになっている。


 神は自分と同じ特徴を持つ人間を贔屓する。

 神に愛される徴であり神と同じ特徴を〝天賦〟と呼ぶ。

 黄金の髪と浮世離れした美貌はまさに〝天賦〟と呼ぶにふさわしく、マリーはその髪と顔をあえて曇らせることでステータスを抑制していたということか。


 そしてルカがマリーを見上げながら呟いた言葉――小聖女。

 教会の象徴とも言える聖女という存在は、ダンジョンが誕生し教会が設立された1000年から世襲によって受け継がれており、歴代聖女が積み上げてきたステータスと美の遺伝子を継承し続けている存在である。


 マリーが本当に現聖女の娘である小聖女で間違いないのであれば、レベル15にしてバカみたいなMP値や魔力値、そして異様なLvの魔法を習得しているのも納得がいく。


「教会は危険を冒して魔石を回収し、人々の生活を豊かにしてくださる冒険者を支えるために存在しております。なればこそ、エド様はここで死んでいいお方ではありません。どうかお願いします。この力で魔物たちを祓って下さいませ」


「無論、そのつもりだ!」


『グギャアア!?』


 足を強く踏み込む。

 大地が爆ぜるような威力で床を蹴り上げ、オークの首を一刀両断する。

 武器に付与された強化魔法によって、魔力の膜が刃を包んでおり、更にその膜がナイフのリーチを伸ばしている。


「【ダッシュナイフ・2連】」


 そのまま空中で身を翻し、数メートル隣にいるオークとの距離を刹那の時間で詰め、その次の瞬間にはオークの首から上が消失する。


――レベルが上がりました。


――【ダッシュナイフ・2連】が【Lv3】になりました。


――【スキル】【鬼斬り】を習得しました。


【鬼斬り】

 鬼系魔物に対して大きなダメージを与える。

 スキルLvに応じて威力が上がりクールタイムが縮む。

 クールタイム20秒。



 ゴブリンやオークといった鬼系魔物を短時間で大量に討伐するのが獲得条件だったのだろう。

 今の状況にぴったりなスキルを獲得する。


「エド様! また新しいオークが!」


「問題ない!」


 転移魔法陣からオークが出現するも、出現と同時に可能な限りのオークを斬り伏せる。



――レベルが上がりました。



 数を減らすと補充するかのように魔法陣が次々に現れ続け、赤い肌をしたオークの上位種、ハイオークが出現する。

 手に持っている棍棒はオークが持っているものより大きく、無数のトゲが生えていて凶悪な見た目をしている。



【ハイオーク】

推奨討伐レベル35

筋力A

防御B-

速力E+

魔力なし

弱点:雷属性



 今度こそこいつがボスであって欲しいと願いながら、ハイオークへ向かって駆ける。


「【鬼斬り】!」


『グオオオオオオ!!』


 斬ッ――と威力の乗った刃がハイオークの顔面を2つに割る。

 マリーが施した強化魔法は推奨レベルを20以上上回る魔物を一撃で屠れるだけの加護があった。



――レベルが上がりました。


――スキル【急所斬り】を覚えました。


【急所斬りLv1】

 魔物の急所へ的確に攻撃を入れる。

 Lvに応じて威力が上がりクールタイムが縮む。

 クールタイム20秒。



 魔物の首を一撃で切断し続けたのがトリガーになったのだろう。

 新たなスキルを覚える。

 格上の魔物から経験値を得ていることで、凄い勢いでレベルが上がっていく。

 これなら本当になんとかなるかもしれない。


『『『『グオオオオオオ!!!!』』』』


 ハイオークが灰になると、何度目かになるか分からない転移魔法陣からハイオークが群れとなって出現する。

 重なる咆哮がビリビリと空気を震わせ、威圧感で怯ませようとしてくるが、脅しには屈しない。


「まだ終わらねぇのかよ!」


『グオオオオオオ!!』


「っ!? マリー! やばい!」


 ハイオークの内一匹が、ルカとマリーに狙いを定める。


「リフレクト!」



――ゴンッ!



 だがその攻撃はマリーの張った障壁に阻まれる。


「わたくし達のことは気にしなくて結構ですわ」


「ああ、分かった」


 後ろを心配する必要もなくなり、縦横無尽に玄室内を駆ける。

 強化された肉体とスキルで強化した俺のスピードに、動きの鈍いハイオークは付いてこれず、一匹また一匹とハイオークは数を減らしていく。

 俺は速力の高い盗賊な上にマリーによって更にスピードを強化されているため、鈍足のオーク種などもはや動かない的に等しい。


「最後の一匹!」


『グギ…………ッ!?』


 ダッシュナイフで肉薄し、次の瞬間にはハイオークの首が飛ぶ。

 ハイオークの頭部が落下し、灰に還る。

 玄室内に静寂が訪れる。


「……これで終わりか?」


 新たに魔法陣が出現しないのを確認してから、武器を下ろす。

 マリーもまた障壁魔法を解除する。


「終わり……ましたの?」



――ブオーン。



「っ!?」


 一拍遅れて、うんざりする程聞いた魔法陣が出現する音が、静寂を破る。


「もう、いい加減にしてくれ……」


 身構えながら勿体ぶって魔法陣から現れる新手の魔物を観察する。


『グオオオオオオオオオオオオオ!!!!』


 魔物の咆哮に玄室内がビリビリと震える。

 たった一匹にも関わらず、オークの群れが一斉に吠えた時よりも強力な威圧感。

 現れたのは、引き締まった筋肉を青い皮膚で覆った身の丈3メートルにも届こうかという巨体。

 左右の腕には人が片手で扱うには大きすぎる大剣が1本ずつ握られている。

 白目のない赤い瞳が凶悪に光り、豊かに生えた頭髪からは2本の角が伸びている。


「……【鑑定】」



【オーガ】

推奨討伐レベル50

筋力A+

防御B+

速力C

魔力なし

弱点:なし



「ここ30層だぞ……」


 新たに出現した魔物は目の前にいるオーガ一体だけ。

 これが最後のボスであることを切に祈りながら、オーガの巨体を見据えて武器を構えた。





エドワード・ノウエン

レベル28

HP290/380

MP150/240

筋力38【+50】

防御27【+50】

速力50【+50】

器用36【+50】

魔力22【+50】

運値32【+50】

スキル【短剣術Lv3】【双剣術Lv3】【ダッシュナイフ・2連Lv3】【鬼斬りLv1】【急所斬りLv1】【開錠Lv1】【鑑定LvMAX】

魔法【回復魔法Lv1】【清潔魔法Lv1】【火属性魔法Lv1】【付与魔法Lv1】【強化魔法Lv1】

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