第4話 デイリークエスト報酬

 ダンジョン5層。


「おりゃあ!」


「これでどうだ!」


 他のパーティが倒し損ねて死にかけになっているゴブリンを背後から襲い、俺とルカの二人がかりで袋叩きにする。

 俺は短剣、ルカは杖で。



■ダンジョン5層の魔物を10匹倒す(3/10)



「ふぅ、あと7匹か」


「何がです?」


「いや、こっちの話」


 ゴブリンは死亡したことで灰と化し、手の平に乗る小さな石――魔石だけが床に残る。

 現在この国の光エネルギーやら熱エネルギーやらを始めとする様々なエネルギーはこの魔石から賄っており、王都の地下に存在するダンジョンの魔物からのみ魔石を入手することが出来る。


 なので冒険者は魔物が落とす魔石を冒険者協会に買い取って貰うことで生計を立てているのだが、ゴブリンから手に入る魔石の買い取り価格は100G。

 ルカと山分けなら50Gだ。

 荷物持ちの報酬が1日5000Gなのを考えれば、なんとも効率が悪い……。


「いやー、にしても疲れましたね。ポーション飲みます?」


「いやだからそれお前のおしっこじゃん」


「だから中身は普通のポーションと変らないんですって」


 横目で自作ポーションを飲んで永久機関を完成させている同僚が差しだすポーションを遠慮しながら、自前の水筒から水分補給する。


「まあこのペースならなんとか日暮までには間に合うか……」


「エドさん! またはぐれゴブリンがいましたよ! これならウチらでも倒せますよ!」


「よし! 他のパーティに横取りされる前に倒すぞ! 逃がすな!」


 ……こうして半日後。


「よし! これで10匹!」


 途中ゴブリンが群れで襲ってきたので、ルカを小脇に抱えて全力で逃げ出してすれ違った冒険者パーティに押し付けたりとアクシデントはあったが、無事全てのデイリークエストをこなすことに成功した。


――ピコン


□仲間を見つける(1/1)

□ダンジョン五層まで潜る(5/5)

□ダンジョン五層の魔物を10匹倒す(10/10)


――デイリークエストが全て達成されました。


――以下の報酬を全て受け取れます。


【報酬1】任意のステータスを【+1】する

【報酬2】任意の所持アイテムを【+1】する

【報酬3】ランクD宝箱を入手



 ……とこのこだ。

 俺の隣で「疲れたー」と座り込んでいるルカを尻目に、報酬を上から順に受け取っていく。

 まず能力値だが、これは念じれば加算されるのか?


「であれば前衛職の割に心もとない筋力を加算して貰おうか」



――ピコン


HP40/40

MP20/20

筋力5→6

防御5

速力12

器用12

魔力3

運値9



 次は任意のアイテムを【+1】するとのことだが、これは武器や防具を強化するということでいいのか?


「んじゃ冒険者になってからずっと使っている短剣を強化」


 するとボロボロで刃こぼれしている短剣が淡く光り、光りが収まると新品同様に刃がピカピカになっているうえ、さっきよりも鋭くそして軽くなっているような気がする。


【鉄の短剣+1】

 ただの短剣。

 レア度E

 攻撃力+6


 確かに強化されているし、何より刃こぼれがなくなっているのが非常ありがたい。

 ボロボロ過ぎてもはや刃の部分よりも柄尻でぶん殴った方がダメージ高いまであったからな……。


「そして最後は……」


 最後はランクD宝箱入手とのことだが、これはどうすれば手に入るんだ?

 と思っていると、バチバチと目の前で魔力の波動が発生し、何もない空間からアイテムが出現した。


「これは籠手か?」


【赤石の籠手】

 火属性攻撃を軽減する籠手。

 レア度D

 防御力+10

 火属性防御+10


 今使っている籠手を鑑定スキルで確認した所、防御力は+5だったので、是非とも装備したい所だが、今日の稼ぎは魔石のみで買い取り価格は1000G。

 ルカと山分けにしたら500Gである。これでは生活できないので、残念だがこの籠手も魔石と一緒に買い取り出すことにしよう。


「エドさん、まーたぶつぶつ言ってる」


「いや、何でもない!」


 ルカが顔をあげたので、俺は慌てて籠手を隠す。

 すると籠手を隠したいという俺の気持ちを汲み取ったのか、俺の手から籠手が消失した。

 どこへ消えた!? と探していると、アイテムボックスと書かれている板が出現し、そのリストに俺の手から消えた【赤石の籠手】の文字が書かれている。


「もしかして……」


 ルカに背を向けてアイテムボックスのリストから【赤石の籠手】の文字に指先で触れると、再び俺の手に籠手が出現する。


「収納魔法……!」


 これは便利だ。この眼球、至れり尽くせりなのでは……?

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