19:Ability

「お前、俺の能力の事知ってるのか……?」

「うん。知っている。」

「なんで」

「わたしも同じように能力を持っているから」

「なんだと」

「わたしも過去に君と同じ病に侵され手術をした。君も知っているだろう。五感病ごかんびょう、不定期的に五感が失われる病だ。」

「じゃあ、お前も声が聴こえるのか?」

「わたしは君のとは違う。私は数秒先の未来を視ることが出来る」

「そんなことが出来るのか?」

「あそこの交差点を見ててみ。あの自転車が大型のトラックに撥ねられるから」


交差点をじっくりと眺めていると、クラクションとドンと言う鈍い音が鳴った。こいつの予想した通り自転車は大型のトラックに跳ねられた。


「ほんとに、撥ねられた……」

「言っただろう?」

「お前の言っていることが正しいことはわかった。それで俺にどうして欲しいんだ、わざわざ呼び出してこの話をするってことは何かあるんだろう」

「早い話が人助け、だね。」

「人助け?なんで俺が」

「君のその能力が必要だからだ」

「どう意味だ」

「君、御崎さんとやらから電話が来るよ」

「は?」

すると、携帯のバイブが鳴りこいつが言った通り優依から電話が来た。


「もしもし」

「もしもし、海斗。今どこ?いつ頃来れる?」

「申し訳ないが、今日は行けなさそうだ」

「そっか、じゃまた明日」

「ああ、悪いな」


「話を戻すぞ、人助けとはどういう事なんだ」

「そのままの意味だよ」

「もっと、こう、具体的に説明できないのか?」

「どのように説明しても人助けとしか言いようがないね」

「そんな曖昧な話にのるわけがないだろ。出直すんだな」

「まあいいさ。いずれ君から、わたしたちに寄ってくる」


なぜ奴は俺のことを知っているんだ。あの時、読み取れるではなく聴こえるとあいつは言った。そう、俺の能力は読み取るわけではなく、勝手に聴こえてくるものだ。一体どこまで知っているんだ。

あいつは、わたし『たち』と言った。一人ではなく複数人いるということなのだろうか。更にあいつは俺の方から寄ってくるとも言った。そして、さっき初めて言葉を交わした時に気づいた、根拠はないが俺はあいつと昔に会ったことがある。


これから、一体何が始まると言うんだ。

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