16:Thanks

山下さんの家に行く。隣の部屋に住んでるわけだし断るのもなんか違う気がする。てかなんで誘われてるのだろうか。

「別にいいけど、どうして?」

「う〜ん、お礼みたいな?」

「お礼?」

「うん。お礼」

「なんの?」

「まあ、色々」


一緒に山下さんの家に向かう。と言っても、俺の家と同じ建物だからいつも通りの帰り道である。

それでも何かドキドキする気持ちと、特別感の様な物があった。


「着いたよ」

うん。俺の隣の家である。

「お邪魔しまーす……」

「そんな、かしこまらなくていいよ」

と、苦笑いをしながら言う。

間取りは俺の部屋が左右対象になっていると言った感じだ。

ちなみに初めて女子の部屋と言うものに来た。

可愛い小物やぬいぐるみがあり、まさに女子の部屋という感じだ。そして甘くていい香りがふんわりと漂っている。


「それで、お礼っていうのは?」

「そこ座ってちょっと待ってて」

なんなんだろうか。


十分くらい待っただろうか。一体何をしているんだ。ちょっとみに行ってみるか

と、立ち上がろうとした瞬間

「ごめん、お待たせ〜」

山下さんは料理らしきものを持ってやってきた。

「何これ」

「ん?オムライス」

うん。オムライスだな。何故かケチャップで『LOVE』と書いてあるが。更にサラダやスープもある。たったの十分でこんなに作れるものなのだろうか。

「なあ、なんで『LOVE』って書いてあるんだ?」

「うーん。オムライスにケチャップでも字を書くと言ったらこれじゃない?」

確かにそうなのかも知れない。まあいいか。

「食っていいんだよな?」

「どうぞどうぞ」

「では、いただきます。」

美味いな。めちゃくちゃ美味い。そこら辺の店より普通に美味いと思う。

「いつも自分で作ったりしてるのか?」

「うん、基本自炊かな」

俺も自炊してみようかなとか思った。


あっという間に食べ終えた。

「ご馳走様でした」

「お粗末さまでした」

「すごく美味しかったよ」

「なら、良かったよ」

「また作ろっか?」

「え、いいの?」

「うん、いいよ。家も隣なことだし」

「じゃ、またお願いするよ」

「ごめんね、時間取っちゃって」

「全然いいよ、むしろ俺の方こそありがとうな」

「どういたしまして」

「じゃあ、そろそろ帰るな」

「うん、またね」

手を振ってくれた。少しドキッとした。

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