11:Lover

店に着いた。

「じゃあ、俺は裏口から入るから、山下さんはどっか適当に座ってて」

「了解」

と、敬礼をしながら言う。なんか表情も柔らかくなってきたな。

山下さんが店に入るのを見届けてから俺も裏口から店に入る。

「お疲れ様でーす。」

と言い休憩室に行くと、真優さんが寝ていた。野上のがみ真優まゆ。かなり偏差値の高い大学に通ってる二年生だ。非常に絡みやすい。『下の名前で呼んでいいよ』と初めて会話した時に言ってくれたくらいだ。

てかなんで寝てるんだ。いつもは休憩中寝たりなんかしないのに。

「んん……」

あ、起きた。

「おはようございます」

目を擦りながら俺の顔を見て

「ん、海斗くん。おはよ……あれ、寝てた?」

「ええ、ぐっすりと」

「ああ、ごめんね」

「別に全然いですけど。それよりなんかあったんですか?」

「い、いや。別になんでもないけど?」

明らかに何かを隠してる顔をしていた。

(夜通しダイエットしてたなんて言えない……)

と、例の能力で聞こえてきた。

「は?ダイエット?」

やっべ。声に出してしまった

「な、なんでそれを……え、声に出てた?」

うーん、なんか説明するのも面倒くさいし、そう言うことにしておくか。

「はい、声に出てましたよ」

「うそ……」

「てか、真優さんダイエットするほど太ってないでしょ」

「そう……?」

「はい。むしろ細い方だと思いますよ。それ以上細くなってどうすんだって感じですけど」

「そうなのかな?」

「はい。てかなんでダイエットしてるんですか」

「だってあともう少しで夏休みだから、海とかプール行くから水着を着ないとじゃん。だから……」

「じゃあ、彼氏とかいるんですか?」

「い、いないけど……」

「じゃあ、良いじゃないですか」

「むむ、言われてみれば……。い、いやでも夏までに彼氏作れば良いだけの話だし……」

「できるんですか?」

「お黙り、小僧」

無理なんじゃねえか

「なんなら、俺が一緒に行ってやっても良いですけど」

「なんか上からなのが腹立つけどいいの?」

「夏休みとかどうせ暇なんで」

「じゃあ、その時はよろしくね」

「はい、こちらこそ」

「というか、彼氏いないんですね」

「いないけど、悪い?」

「別にそう言う意味じゃないですけど、真優さん可愛いからいるもんだと思ってました」

「わたしって可愛いのかな?」

「普通に可愛いと思いますよ」

なんか山下さんとも、こんなやりとりをした気がする。

「褒めても何も出ないよ」

「分かってますよ。でも本当に可愛いと思いますけどね」

「そういう君は彼女とかいないの?」

「どっちだと思います?」

「いないと思う」

「なんか失礼ですね。まあいないですけど」

そんな話をしてるところに遙香さんがやってきた。

「ほら、仕事しなよ」

「はーい」

気づけば十分近く話していた。そういえば山下さんを待たせてしまっているな。

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