02:New Life

「この店で働く?俺がですか?」

「そう。海斗くんに働いて欲しいの」

別に時間がないわけでもないし、ちょうど高校生になったからバイトもしてみたいと思ってたし。

「まあ、いいですけど。」

「ほんと?」

遙香さんは意外そうに俺を見つめてきた。

「はい、いいですよ。」

「ありがとうね、ほんとに助かるよ。」


店の中を眺めるとフロアに出ている店員は一人しかいないようだ。なるほど、人手が足りないのか。

「それで、いつから働けばいいですか?」

「う〜ん、まあ明日とかかな。まずは色々説明とかしないといけないし。」

「わかりました、よろしくお願いします。」

「こちらこそ、よろしくね」

と、互いに頭を下げ合う。すると遙香さんが

「そういえば、お父さんに相談してくれたって聞いたけど、どうだった?」

「それが自分で考えろって言われたんですけど……」

「そ、そうなんだ。それで海斗くんは何か思いついた?」

「ええ、まあ少しなら」

「じゃあ、聞かせてもらえる?」

「はい」


考えたことを色々話す。


「あと今思ったんですけど、ここって原宿とか渋谷に近いから若い女性とか結構来ると思うんですよ。だからインスタ映えとかそういうのも意識した方がいいんじゃないですかね。」


優依と遙香さんが目を丸くして俺を見つめる。

「え、なに。二人とも」

すると遙香さんが

「いや、結構真剣に考えてくれてるんだなって」

「そりゃ、返しても返しきれない恩がありますから」

「なんのこと?」

と優依が聞く。

「その事はもういいっていったでしょ?だから気にしない気にしない」

「わ、わかりました」

「だからなんのこと?」

「まあ優依にはそのうち話すよ」

「ふーん。わかった」

「じゃあ、採用面接しようか。まあ採用するのは決まってるからちょっと話す程度だけど」

「は、はい」


場所を控え室に移す。


「それで、厨房かフロアどっちやりたい?」

「別にどっちでもいいですけど」

「じゃあ、フロアやってもらえる?」

「わかりました」

「ということで、明日からよろしくね」

「はい、お願います」

「特にやることもないし今日は帰ってもらっていいよ」

「そうですか、では失礼します。」

「はーい、また明日ね」

一つ会釈をして店を出る。


フロア、つまり接客ということだが正しい接客の仕方なんて知らんぞ。

家に帰ったら調べてみるか


帰宅し、自室のパソコンに目を向ける。


『喫茶店 接客』で検索をかける


正直どの記事を参考にしたらいいかわからないな…

とある記事を一通り読んでみたが、別に間違った知識を植え付けられた感じもしないしこの記事に書いてあることをやっとけば大丈夫だろう。


夕方の六時頃になり親父が帰ってきた。

いつものように親父が飯を作り食卓に並べる。


「そうだ親父、俺明日からバイト始めるから。」

「随分と急だな。どこで働くんだ?」

「昨日言った遙香さんが経営してる喫茶店」

「そうか、頑張れよ」

「いいのか?」

「親というもんは子供のやりたいことをやらせるもんなんだよ」

「そうか、わかった。頑張るよ」


次の日になり、いつものように一日が始まり昼になる。コミュ障なこともあり、昼は一人で食べることになりそうだ。優依は早速友達作ってるし。まあいいか。とか思ってると

「志崎、一緒に弁当食べないか?」

声のする方を見ると

「え」

なぜか担任の桐島先生がいた。桐島きりしま若菜わかな、俺のクラスの担任。独身であることを気にしているとどっかから聞いた。

「『え』とはなんだ、悲しくなるだろ」

「あ、すみません。てかなんで俺と食べたいんですか」

「まあ、ちょっと話があってな」

「は、はあ。まあいいですけど」

「良かったらさ、生徒会入らないか?」

・・・

「はい?」

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