第6話 キャラメル
先輩が、キャラメルをくれた。
「二箱貰ったから、 君にあげようと思ったんだよ」
多分、一人で食べるのが恥ずかしいから、先輩は二箱買ったのだろう。私は有難く頂いた。
「煙草が吸えない時は、これに限る」
あまり肺が良くない先輩は、それでも煙草を吸っていた。
「身体には、キャラメルの方がいいですよ」
「あの苦さは、何故か虜になる。煙草を覚えた舌が憎い」
光で顔の見えぬ先輩は、それでも笑っていたのだろう。
小さな頃、キャラメルをよく食べていた。森永のキャラメル。
パッケージは変わったが、味は夢の私が食べたキャラメルと変わらない。
先輩、今もキャラメルを食べていますか?
名前も思い出せない貴方を、今も愛しています 七海美桜 @miou_nanami
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