コトノハ
仕事に家事に育児に。
ぜんぶがぜんぶめいっぱいどころか、限界を超えて立ち向かう両親に伝えた言葉は、間違いはなかったと断言する。
だって、壊れていたから。
家庭円満にしか見えなくたって、そう遠くない将来に家族がめちゃくちゃになる。
断言できる。
だから、両親を必死に追いかける姉を見て、どうしてと疑問しか浮かばなかった。
両親の笑顔の裏側がわかっていたら、追いかけるなんてできないはずなのに。
捕らえに行かないはずなのに。
自分みたいに器用にこなせないから、どんどんどんどん捕らえられていく両親。
家族に、近所に、社会に、情報に。
少なくとも家族と近所という枷がなくなって、自由になったんだ。
喜びこそすれ、それ以外の感情なんていらないだろうに。
どうして。
十年経った今でさえ、隠れて、もしくは、寝ている時ですら、涙を流す姉の気持ちがわからない。
わからないけれど。
胸がざわついて、胸がちくりと痛んで。
罪悪感、だろう。
年を重ねていくにつれて、初めて芽吹き、のろく成長する。
両親への言葉に間違いも後悔もないけれど。
姉には申し訳ないことをしたと。
今になって。
(泣いてほしくないのに)
泣かないで。
そう言えないんだ。
(2022.1.14)
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