第10話 「聖女様の実力」

 傷を見た感じ、私の回復魔法であれば、傷ひとつなく戻せるであろう。

 しかし、大切な天使を一度、怪我させたという魔物にたいして私は、自分の怒りを抑えるのに必死だった。

 正直、今は聖女としてのキャラがーとか、

 そんなどころではなかった。


「皆様、ここは私にお任せください」


「クレア様!?」


「いでよ、爆炎の支配者イフリート!!」


 地面に魔法陣が描かれる。そこから召喚された炎の精霊は、神々しい存在を放っている。


「あ……あれは……!」


「はは……すげぇ、生まれて初めて見たぞ……あれは、上位精霊イフリートじゃねぇか!! まさか炎の上位精霊を拝める日が来るなんてなぁ!!!」


「えぇ!? クレアが使えるのは、回復魔法と氷の魔法だけじゃなかったスか!?」


 そう、ユニの言う通り、基本的に魔術を使うものは、一つの属性しか使えないというが一般的である。それに、対極に位置する氷魔法と炎魔法を使う事ができる人間は、ほぼ存在しないと言われていた。

 しかし、そんな魔法を、私は、習得した。

 正確に言えば、最近身につけたものだ。そう、

 自身の力に自惚れていては、肝心な時に 

 ユウタ様を守ることはできないという想いが私を進化させたのだ。


 ──これが愛の力だ。


爆炎の支配者イフリート、全てを燃やしてしまいなさい。完膚なきまでに──」


「ゴアアアアアア!!??」


 イフリートが繰り出した、

 煌びやかな炎の渦に包まれながら、アイスゴーレムは消し炭となったのだった。


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