第5話 「聖女様の嫉妬」

「ユウター!!」


 バフッ。


「ちょ、ちょっとユニ! そんなに引っ付かれると歩きにくいよ」


 ユニの豊満な胸が身体に押し付けられる形になっている。

 パーティを組んでわかったが、ユニは、人との距離感が近い。


「ハハハ! ユニは甘えん坊だからな!! まぁ、ただ仲が良いと言うのは良いことだ! なぁクレア、お前もそう思うだろう?」


「……えぇ。とても仲がよろしいことで……」


「ん? クレア、どうした? 身体が小刻みに震えているような気がするが……

 寒いのか?」


「いえ……何でもありません」


(……ちょっとおおおおおおお!! 何よあのユニとかいう女ああああああああ!!! 最近、ちょっと、ボディタッチが多くないかしら!? 私だって、ユウタ様に抱きつきたい気持ちを必死に押し殺してるのに!! あぁ、抱きつきたい抱きつきたい羨ましい羨ましい羨ましい!!)


「んんっ? ユウタ、何か頬にゴミがついてるっスよ? うちが、とってあげるっスね」


 そういうと、ユニはペロッと舌を出して、ユウタの頬に近づけた。

 ユニは、獣人族である。恐らく獣人族は、基本的には、人との距離が近く、ユニにとっては、普通のことだったのだろう。


 しかし──


氷石アイス


 ピュン。


 突如、放った呪文により、ユニとユウタの間を割くように氷の塊が通過し、それを阻止する。


「ク、クレア様……? 今のは?」

「クレア危ないっスよ!!」

 

「……ユウタ様達の近くに、小さなそれはまた小さな魔物がいましたので……

 それに……戦闘中に気を抜きすぎてはいけませんよ?」


「魔物がいたっスか!! 全然気づかなかったっス! さすがはクレアっスね!!」


(そんな小さい魔物までいたなんて聞いたことがないけれど……流石はクレア様だ! 今日は調子が良さそうだし、もしかして昨日のポーションがきいたのかなぁ……それなら嬉しいな)


(……あっぶなああああああああ!! バレなくてよかったああああああああああああ!! 適当な嘘で誤魔化せたからよかったものの、思わず、氷魔法唱えちゃったわ!!)

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