第8話 栞の過去

 〜柊人side〜


 僕たちがいつも一緒に話すカフェに栞を呼び出した。しかし、内心呼び出したことを今すぐにでも忘れてしまうぐらい柊人は焦っていた。自分が泣かせてしまったのかもしれないという、後悔や、栞自身に何かあったのではないか、という不安からだ。これについてははっきり聞くまで分からない。察してあげられない自分に嫌気がさした。そして同時に"あの日の約束"についても思い出していた。それは、僕たちが小学に上がる頃のことだ。ーー栞は小学に上がる前に大親友だったある女の子を亡くしてしまった。それがきっかけで栞が全く喋らなくなってしまった。どんなに声を掛けても反応することはなく、諦めかけていた時に、その女の子が夢に急に現れてこう言ったのだ。

「ビックリするよね、いきなり出てこられても。少しだけだから許して。時間ないから、本題の話をするね。君に栞のことを任せたいの。私はもうその、あれ、だからさ。君が栞を元気づけようとしているのは知ってる。だから頼んでるの。自分勝手だけどお願い、本当に、あの子を助け出してあげて欲しい、、」

 女の子は、栞のことを助けてあげて欲しい、そう言った。辛いのは自分も同じはずなのに、、、

 この願いは絶対に守りきってみせる。小学生ながらもそんなことを思っていた。だって、小学生の女の子が自分よりも友達のことを最優先に考えられるのだから。

 こちらが強く頷いたのを確認すると、霧のようになり消えていった。朝になり、親に起こされた自分は泣いていた。悲しい気持ちは全くなく、むしろ温かい気持ちでいっぱいだった。

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