第6話 気づいた気持ち
〜柊人side〜
今日の栞はいつもよりさらに変だった。なぜかは分からないが、とんでもない化粧をしてきた。そして今日1回も話しかけてこない。それどころか避けられてすらいる。なんか一定の距離を保っている様子だ。昼休みになり、このままじゃ埒が明かないので僕はその空気をぶっ壊して近づいた。
「おい、いつまで逃げるんだよ。俺がなんかしたか?」
栞は見ないでとでも言うように顔を隠した。そして栞は言った。
「ごめんね、化粧すらまともに出来なくて、こんな私なんて嫌いだよね。ごめん帰る。」
そう言いながらヨロヨロと立ち上がり、帰ろうとした。しかし黙って変えさせるわけには行かない。このまま行かせるとどこかに消えてしまいそうで。だから僕は栞の手を引いた。
「やめて、もう無理!耐えられない!離してよ、、、」
そう言った栞は泣いていた。それを見た瞬間、思わず手を離してしまった。その隙に栞は教室を飛び出ていく。だがそれを止めることは出来なかった。
(ダメだ!ここで引き下がる訳には行かない!追うんだ!取り返しのつかないことになるぞ!)
本能的な何かがそう叫んでいる、でも体が動かない。あのいつもニコニコしている栞が泣いていたのだ、衝撃が大きすぎて何も出来ない。
結局ニコニコしていても栞は女の子だったのだ、化粧だってしたいし、嫌なことがあれば傷つきもする。
(守ってやらないとな、あいつのこと)
途端に力が湧いてきた。今なら追える気がする。心の中はいつも栞でいっぱいだった。助けてもらったぶん今度はこっちが恩返しをする番だ。
「おい!どこへ行くんだ!もう昼休み終わるぞ!」
生徒指導の先生がいた。だがその声は柊人の耳には全く届かなかった。
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