第4話 結局は夢

 〜栞side〜


「一緒に帰ればよかった!寂しいよぉ!!」

 ベットの上で足をバタバタさせる。真子の案は確かに良かった。柊人がこっちを見てくれたからだ。だが、そうはいっても栞自身に対するダメージも大きかったのである。

「いくら気を引くためとはいっても柊人の顔悲しそうだったなぁ」

「よし!次からはちゃんと一緒に帰ってあげようっと!」

 こうして真子の案はあっさり拒否された。そしてその夜、夢を見た。柊人がどこか遠くへ行ってしまうというものだった。栞は思わず飛び起きて隣にある柊人の家へとダッシュした。小さい頃から変わっていない合鍵の隠し場所へ行き合鍵を取りそのまま許可なく入っていった。


 〜柊人&栞side〜


 柊人は下から聞こえる物音によって起きてしまった。

(なんか嫌な予感がする、めんどくさくなりそうだ)

 なぜか分からないがそう感じたのだ。そしてその予感はズバリ的中した。ドンドンドンドン!バタン!!最初階段をかけのぼるような音がしたと思った矢先にかなりのスピードで自分の部屋のドアが開いた。出てきたのは泣きじゃくっている栞だった。

「おいおい!どうしたんだよ、何かあったか?」

 想定外の事態に慌てて対応する。そして栞が答えた。

「私ね?夢を見たの。柊人がどこか遠くへ行ってしまう夢」

「それを見たときにほんとにいなくなっちゃうんじゃないかって心配になって来ちゃったの!ねぇ行かないよね?」

 突拍子もない事を言われて柊人は思わず笑ってしまった。

「逆に栞は僕がどこに行くと思ったんだよ?どこにも行くわけないだろ」

「本当に?なら頭撫でてよ!」

 急に訳が分からないことを言い出した。

「はぁ!?なんでそうなるんだよ!」

「別にいいじゃん!それぐらい!頭撫でてもらうまで帰んないからね!」

 これ以上睡眠を邪魔されるわけにはいかなかったのでしぶしぶ撫でてやった。

「えへへっ」

 栞はご満悦のようだ。こんなようでは先が思いやられる。

「全くお前は、、誰にでもそんな感じなのか?」

 気になったことを聞いてみた。

「なんでそんな事言うの?柊人だからするのに、、そんなに私のこと嫌い?」

 栞がまた泣き始めてしまった。

 さすがに今回は僕が悪かった気もするので謝る。

「ごめん、さすがに僕が悪かった。そんなつもりはなかったんだよ。好きだから(友達として)泣き止んでくれ。」

 栞はピタリと泣くのをやめたが、今度は固まったまま動かなくなってしまった。今日はやけに栞の様子がおかしい。栞は変な薬でも飲んでしまったのだろうか。そしてゆっくりと栞が動き出したと思ったら今度は僕には聞こえないような声量で喋り始めた。

「えっ?今好きって言ったよね?嘘でしょ?ほんとに?気になるけど聞けないよぉ怖いもん!どうしようどうしよう...,」

 やっぱりまだ栞はおかしくなってたようだ。栞の反応を伺っていると、途端に話しかけてきた。

「ねぇ!さっきさ、も、もしかして好きって言ってくれたり〜した?」

 栞は暗闇の中でも分かるぐらい顔を真っ赤にしていた。

(何の話をしているんだ?好き??あ、さっき言った気もするが、だけどあれは友達としてという意味でそれ以上の意味は無いんだが、なんであんなに顔が真っ赤なんだ???)

「言ったけどそれがどうかしたのか?」

(友達としてとは言ってないけどこいつなら大丈夫だろ。)そう思いながら栞の方を見ていたが、どうやらこっちはそれどころじゃないらしい。さびたロボットのような動きをしながらドアの方に向かっていた。

「もう帰るね!ご、ごめんね!夜遅くに!じゃあ!!」

 テンパっていてドアを開けるのにも一苦労している様子だった。

(なんだあいつ?さっきから様子が変だが、まぁいいか!眠てぇから早く寝よ)

 特に気にすることなくすぐに眠りに落ちた。

 この少しのすれ違いが後でふたりの関係を大きく変えてしまうとは誰も気づけなかった。

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