第4話 Aちゃんの散歩
喫茶店を出て、少し歩くことにした。
中高時代はバスケ部で体を動かしていたのだが、大学で軽音サークルに入って以来、体を動かすことが本当になくなった。
大人になるとこうやって身体能力が衰えていくのかと早くも人間の衰えを感じている。
散歩のお供は、やっぱり音楽。
イヤホンを片耳に入れる。最近のイヤホンは性能が良すぎて両耳つけると車にひかれそうで怖い。
お気に入りのバンドの曲を流して歩くと、すぐに気分が上々になってしまう。
細い路地に入って周りに誰もいないことを確認してから、スキップしたりするのが私の変な趣味。
ふと我に返ると、車の後ろにいる猫がじっとこっちを見ている。
人間ではないことにまず安心して、猫にとっても変な人に見えてるのかしらと思う。
「まあ、いいのよ、どうせ猫だし。猫にどう思われようが全然恥ずかしくなんかない。」
と思ってまたスキップしはじめると、曲がり角からおじさんが出てきた。
「やばい」
と思って普通に歩いてましたけど感をだす。心臓が少し跳ねるのを感じる。
できるだけおじさんの方を見ないようにする。
すれ違ったあとに振り返る。
冬なのに頭が寒そうなおじさん。
「まあ、いいのよ、冬なのに頭が寒そうなおじさんだし。冬なのに頭が寒そうなおじさんにどう思われようが全然恥ずかしくなんかない。」
心の中でそう唱えたけど、もうスキップするのはやめた。
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