第3話 Aちゃんの手帳
私は手帳をつけている。中学生の頃から続けていて、今はもう何冊目か分からない。
題して「好きなものノート」
始めたきっかけは少し特殊。
思春期だったとか、家庭環境とか、学校のこととか、理由ははっきりこれ!みたいなことはないけど、なんだかいろんなことが重なって、リストカットをしていた時期があった。
中学時代はよく保健室にお世話になっていたタイプで、保健室の先生にリストカットのやめ方を相談していたときに、
「つらいときとか自分を傷つけたくなったときに、見て落ち着くものを作ってみたらどうかな。」
と言われて、手帳に自分の好きな言葉や歌詞を書き始めた。
今は文字だけじゃなく、映画の半券とかカフェのカードを貼ったりしている。
この手帳を見ていると不思議と気持ちが落ち着く。
「孤独を感じるのは孤独じゃない時間を知っているからだと思います。」
私の尊敬している先生が教えてくれたこと。
この言葉を思い返すと、私の抱える寂しさや虚しさは私が楽しかった時間、笑っていた時間の証明なんだと思える。
そう思うと、寂しさや虚しさも悪いものじゃないかもって思える。
たまごサンドを食べ終えて、真っ白なページを開いてペンを握る。
最近観た映画が面白かったから、その映画監督の名前をネットで調べて書いて、簡単な感想を書いた。
また宝物が増えた。
形ないものを見えるようにすることで確かに存在するんだと確認できる。
形ない宝物を形ある宝物にする。
いつでも見返せるように。
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