サンタクロースクライシス
潯 薫
手作り工作の好きなサンタ
――子どもの頃はサンタクロースを信じてた。少し大きくなって、サンタクロースなんて居ないと
でも、それは大きな間違いだった。大人になってみてわかった。やっぱり、サンタクロースはいたんだ。
※ ※ ※ ※
ここに一人のサンタクロースがいます。あぁ、補足がいるね。よく物語の中に登場するサンタクロースって普通は一人だけだよね。でも、それは作り話。本当は沢山のサンタクロースがいます。これ、大人だけの秘密なんだけどね。
ここに一人のサンタクロースがいます。4歳の男の子、
日本だけでなく、世界中にこうした特別なサンタがいて、それぞれ受け持ちが分かれているから、一晩のうちに世界中の子どもたちにプレゼントを渡す事が出来ます。ほんとは、これ、大人だけの秘密、トップシークレットなんだよ。もし、R15のレイティングを無視して、こっそりこのお話を読みにきちゃったのなら、ホントここだけの秘密ってことでお願いしますね。
※ ※ ※ ※
彰くんは、テレビの変身ヒーローが大好きで、いつもパパと一緒に見ていました。見終わったら、朝ごはんも食べ終わらないうちからウズウズしだして、変身ポーズや、必殺技でパパ怪人をやっつけ始めます。
「あきらっ! ちゃんとごはんが終わってからにしなさい!」
ママに怒られちゃいました。
彰くんのお腹には、パパがダンボール工作で作ってくれた変身ベルトが装着されています。
本物と違って、音は出ないし、光もしません。だけど、変身はできちゃう超スグレモノ。
もちろん、必殺技だって出せます。
「ウォォォォオッ! セイヤーッ!」
彰くんの雄叫びと共に繰り出された必殺のキックが、パパの股間に決まります。彰くん渾身の一撃、そしてキメポーズ。
「!!!!」
パパは声も出せない程の大ダメージを受けてうずくまってしまいました。やったね、彰くん。パパ怪人を見事倒したよ!
※ ※ ※ ※
ハロウィンのかぼちゃ柄の飾り付けが一掃されると、途端に街はクリスマスムード一色です。
パパには、サンタクロースとしての使命があるから、そろそろ彰くんからプレゼントの希望を聞き出さなきゃならない。
でも、彰くんは、なかなか教えてはくれません。
それは、彰くんが、本物の変身ベルトが欲しかったから。折角、パパがダンボール工作で作ってくれたのに、本物の方が良いって言ったら、パパが悲しむんじゃないかなって、そう思ったんだね。
察しのいいママが彰くんに聞いてみました。
「あきらは、もしかして、変身ヒーローのベルトが欲しいの? 大丈夫よ。もしそうなら、パパにちゃんと伝えようね。それを言ってもパパは、がっかりしないよ?」
彰くんは、小さく
「本当のこと言ってもいいの? 本当はね。ぼく、変身ベルトが欲しいんだ。それでね、メダルを沢山集めるの」
メダルとは、変身ベルトに嵌め込んで遊ぶ、いろんな色のメダル型のパーツのこと。テレビ番組の中では、このメダルの組み合わせで、様々な形態にモードチェンジした変身ヒーローが敵怪人をやっつけるのです。
彰くんのママは、
「大丈夫。あきらがきちんと話せば、パパはわかってくれるよ」
そう言って、彰くんを勇気付けました。
パパは、ママから事前に聞いてはいたのですが、それは秘密にしておきました。なにしろ、パパはサンタクロースです。彰くんからきちんとプレゼントのお願いを聞く必要があったのです。
ママから勇気を貰った翌日、パパと一緒にお風呂に入っている時に、意を決した彰くんがパパに言いました。
「パパ、あのね、あのね。聞いてね。……あのね」
なかなか言い出しにくそうです。頑張れ、彰くん。
「どうした? クリスマスプレゼントのことかい?」
パパも優しく、彰くんが話しやすいように誘導します。
「うん」
今しかない! 彰くん!
「ぼくね、ぼく、変身ヒーローのベルトが欲しいっ!」
よく言えた。偉いぞ!
「そっかぁ、変身ヒーローのベルトが欲しいのか。よーし、パパ、サンタさんと一緒に探してみるかな」
「うん!」
思い切って言えたこと、パパががっかりしなかったこと、頑張って言ったから、欲しかった変身ベルトがクリスマスプレゼントに貰えそうなこと。彰くん、すっごく嬉しそうです。
ただし、パパには気掛かりなことがありました。
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