第13話  モンスターの狩猟





「──────おいおいおい……ッ!マジかよッ!?あの黒い死神気は確かかッ!?」




「──────■■■■■■■■■■■ッ!!!!」




 妃伽と対峙して鳴き声を上げるモンスターが1匹。鋭い瞳を向けて、殺意と捕食衝動をぶつけてくる。喉がヒクつき、流石にこれは酷いだろと口の中で言葉を転がす。真面な武器はナイフ1本しか無いというのに、狩人が相手にしているモンスターが投げ込まれてしまった。


 食事の時間でも無いのに何かが投げ込まれて、どさりと嫌に大きな音を響かせたのに驚いた妃伽は、落ちてきたモノを見てもう一度驚いた。また新たな動物かと思えば似ても似つかない獰猛なモンスターだったのだ。最初は呆然としてしまった。


 高いところから、妃伽と違って枝や葉の積み重なったクッションが無い、固い地面に落とされて悲鳴を上げていたので、落下によるダメージを負っただろう。そのお陰で呆然と立ち尽くす妃伽に気づかず、よろりと立ち上がってすぐには襲い掛かってこなかった。明らかにモンスターに見せてはいけない隙だったので気を引き締める。


 後ろの腰に差しているナイフを抜いて右手に持つ。何度もウサギを解体した、ここ数日何度もお世話になっているナイフ。切れ味はまあまあに良く、肉を簡単に切ることが出来たが、今回は心許ない。見るからに硬そうな皮膚を持つモンスターに、頬が引き攣るのを自覚した。




「さ、流石にこれは修行の最終関門だよな……?コレやったら数増やすとはしねーよな?つか、マジで私1人でコイツどうにかすんのかッ!?」


「■■■■■■っ……■■■■■■■■ッ!!」


「……?今、変な鳴き方し……やべ来た来た来た来た来たッ!?」




 鋭い瞳をギラつかせ、思ったよりも遅い速度で迫ってくるモンスター。早速殺し合いに開始か!と身構えて後方へ下がる。すると、妃伽の足に何かが当たった。コツリと当たった硬い感触に、妃伽はハッとしてしゃがみ込み、あるものを手に取った。右手には武器であるナイフを。左手には先端に火が点いた松明を持った。


 これから日が暮れるからということで、早めに準備して置いた焚き火。その内の燃えている太めの枝を1本手に取ったのだ。穴に落とされる前に黒い死神が話していた事を思い出す。下位の小型モンスター等は火を見ると恐れて近づいてこないという話だ。


 まさかいきなり上位のモンスターを投げ入れたりはしないだろう。初心返りの森とまで言われているんだ。狩人になって最初の方で相手をするモンスターに違いない。ならば恐らく今対峙しているモンスターは下位。全長は兎も角、全高は妃伽より低い。小型モンスターと言っても良い筈。


 左手の松明の火が点いた部分を向けて突くような姿勢になり前に進む。すると、モンスターが恐れているのか驚いているのか後ろへ下がった。やはり火に弱い。コレがある限り容易には襲って来ないだろう。バクバクと鳴るうるさい心臓を落ち着かせるために、1度深く深呼吸した。




「■■■■■っ……■■■■っ……■■■■■ッ!!」


「黒い死神が寄越したのは植物図鑑だ。モンスターのことは載ってない。だからコイツがなんつー奴で、どういう特徴があんのか知らねーが、自分で判断するしかねーな……っ!」




 モンスターのことが記された本は渡されていない。渡されたのはあくまで植物図鑑。関係がある場合はモンスターのことも少し記されているものの、それ以外は一切書かれていない。なので目の前のモンスターのことは、下位であろうと知らない妃伽は、外見的特徴からどういったモンスターなのか判断するしかなかった。



 モンスターの名前は『ラプノス』と言う。細身の鳥類を思わせる体躯に、二足歩行を可能としたモンスター。腕は退化して短く、軽いものを掴むのが精一杯だが、その代わりに脚が発達している。素早い動きが特徴で、先端に行くにつれて細くなる嘴のような口には小さくも鋭い牙が生えている。


 足の爪には1本だけ異様に弧を描いて長い、鋭利な爪が存在している。獲物を狩りをするときはこの鋭い爪を使って攻撃するのが主で、狩人の防具を切り裂いてしまうので注意するべきラプノスの1番の武器。


 性格は獰猛で肉食。大体は5、6体程度の群れで活動して集団で狩りをする。狩りをする場合にはそれぞれ役目を決めており、それに見合った行動を取る。特に正面から詰めて動きを制限する役目と、隠れながら襲い掛かる役目の2つに別れている。


 それらを行えるくらいには知能があり、それ故か火を恐れる。危険なモノとして火を認識しているので、松明の火が消えない限りは簡単に妃伽には襲ってこない。なので彼女は松明の火の大きさや燃え具合を確認しつつ、ラプノスの特徴を抑えていった。


 明らかに受けたらマズいのは足の長く鋭い鋭利そうな弧を描く爪だろう。どう見ても引き裂くのに使うだろうし、装備が普通の動きやすいだけが取り柄のジャージな妃伽では耐えられる訳が無い。爪を突き立てられたら肉が深く持っていかれてしまう。鋭い牙がある口も噛まれたらダメだろう。こういう肉食の動物やモンスターは、獲物を離さない強靱な顎を持っているから、噛まれたら離してくれない。


 皮膚も少し硬そうだ。鱗のようなものは見えないが、ざらりとした表面は見ているだけで硬いと思わせるものがある。ナイフを突き立てて通るかどうかはやってみないと解りはしないが、武器は1本しかないので慎重になるべきだ。思い切って突き立てて折れたなんて話になったらその時点で終わりだ。




「このまま松明持って睨んでても何もならねぇ……かと言って突っ込んだらアウトだろこれ……どうすりゃいい?私は考えるの苦手なんだよチクショーがよォ……ッ!」


「■■■■■ッ……■■■■■■ッ!!」


「あぁっ?オラ下がれ下がれ!火傷してーのかコノヤロウ……お?ちょっと待て、さっきからコイツ、なんかおかしいよな?」




 足が速そうに見えるのに、対峙しているだけでその場から大きく動こうとはしない。1歩詰めて、松明を近づけると遅い動きで遠離とおざかる。獲物を撹乱するのに動き回ったりもしない。というより、動こうとしていないように見えるし、何と言っても鳴き声が苦しげだ。


 その違和感を踏まえてもう一度観察する。少し危ないが松明を後ろにやって態と近づかせる。1歩……少し間を置いて1歩。今度は松明を前に持ってきて下がらせる。嫌そうに顔を背けてから、1歩……遅れて1歩。体の重心がおかしい。前から見ると下がるときに妃伽から見て左側に傾く。


 解った……と、小さく声が漏れる。ラプノスは怪我を負っているのだ。恐らく右足首辺りを捻ったようだ。でなければ動くときに庇うような不自然な歩き方にならないだろう。それに良く聞くと呼吸もおかしい。人間と同じ肺呼吸でも呼吸のリズムは違うので確信は無いが、時々ひゅっ……と鳴るのだ。もしかして脇腹とか腹にダメージが有るんじゃないか?と睨む。


 ラプノスに起きたことを整理する。見上げる高さから黒い死神に落とされたのは同じだ。違うのは着地する時。妃伽は下に枝と木の葉のクッションがあり、そこに向けて落とされたので気絶くらいで負傷は無い。いっても擦り傷だ。しかしラプノスは何も無い固い地面だ。思い切り叩き付けられていたし、足から着地した様子は無い。起き上がっているのを見たからほぼ確実だろう。


 見上げる程の高さから落とされて地面に激突。横向きに行ったら、ラプノスの場合衝撃を横っ腹で受けることになる。ならば、肋の数本は折れてもおかしくないのでは?自身ならば確実に折れてるだろうし、今頃動けないだろう。呼吸がおかしいのも説明がつく。




「よし……よしよしよしッ……コイツは足ぐねって真面に動けやしねーし、肋(多分)へし折れて激しく動けねーみてぇだな!ツイてるじゃねーかッ!」


「■■■■■■ッ……■■■■ッ………■■■■ッ!!」


「運が回ってきたじゃねーの!全快ならちっとやべーけど、負傷して真面に動けねーなら大丈夫だろ。あとは松明の火さえ消さなきゃ──────」




 ポツリ。ポツリ。。ハッとした様子で上を見上げる妃伽の頬に、雨粒が落ちてきた。初心返りの森は良く雨が降る。それは水不足に陥っていない妃伽にとっては今更な情報。この雨に何度も救われたし、何度も喉を潤させてもらった。しかし今回ばかりは呪わずにいられない。


 何故、このタイミングになって雨が降り始めるのか。焚き火の火に雨粒が落ちてジュッ……という音が聞こえてくる。少しずつ雨粒が落ちてくる頻度が上がり、左手に持つ松明からも消えそうな音が聞こえてきた。これは本格的に危険だと察する。考えるよりも先に、妃伽はその場から駆け出した。


 走り出した妃伽に反応してラプノスも動き出す。負傷の所為で動きは遅いが、獲物と考えているのか後を追い掛けてくる。それをチラリと振り返って確認すると、距離を開けられていることを確認する。雨が強くなってきた。急がねばならない。


 こんな時に限って雨が降ってくるなんて最悪だと思いながら形振り構わず走り、ある壁の元へ辿り着いた。肩で息をしながら上を見上げる。何度もお世話になっている登ると決めた壁。左手の松明は火が消える寸前なので、要らないと判断して放り投げた。


 ナイフの柄を口に咥えて壁に手を掛ける。1番慣れて速く登れるルートは頭の中に入っている。何十回と繰り返していれば自然と頭の中に入って覚えているものだ。妃伽は背後からラプノスがやって来ている事に焦りそうになるのを堪え、冷静にいつも通り手を掛けて登っていく。1メートル、2メートルと登っていき、3メートルと少しのところまでやって来た。その頃には真下にラプノスが居る。


 上を見上げて調子の悪い鳴き声を上げていた。本来ラプノスは発達した脚により高い跳躍力がある。約3メートル近い崖の上も跳躍1つで登れるのだ。なので今の妃伽が居る場所は絶妙に危険な高さなのだが、今は脚を捻って負傷しているので跳躍はできない。よじ登るには腕が退化しているので無理だ。なのでラプノスは見上げることしかできない。




「……これで登って来られたら死んでたな。つか、アイツ絶対ジャンプすんだろ。もしかしてここも結構ヤバかったか?けど、だからな……まあ、今回はちょっと大目に見てもらうか」


「■■■■ッ……ッ!■■■■■■……ッ!」


「……すーっ……はーっ……集中しろ。チャンスは1回だ。モンスターだってバカじゃねーだろ。同じ手は通用しねぇと考えて、1発で決めねーと私が死ぬ。大丈夫だ。私なら……やれるッ!!行くぞ巌斎妃伽ッ!気合いと根性見せろやオラァッ!!!!」




 己を鼓舞する。必ずできる。遣り遂げられる。だから生き残れる。勝つのは私だ。負ければ死ぬのだから勝てば良いんだ。妃伽は高い精神力を活かしてモンスターに立ち向かう。右手に咥えていたナイフを持ち、ほぼ左手だけで体を支える。下を覗き見して、ラプノスを見て観察している。


 雨が強くなり、壁を掴んでいる手が濡れて滑りそうだ。長い髪やジャージが濡れて重い。しかしそれが気にならないくらいの集中状態に入る。瞬きもせずにひたすらラプノスの事を見ている。ラプノスも見上げて妃伽の事を見ていたが、雨が強くなったのと、降りる様子が無い妃伽に一旦諦めたのか、顔を下ろして体ごと振り返った。


 そして、その場から後にするために右脚を少し持ち上げた瞬間、妃伽は跳んだ。掴んでいた壁から手を離して、飛び降りる。もう慣れた浮遊感を感じて約3メートル下へ落下。その時に、ラプノスは負傷した右脚で体が傾いた。こちらに気づいてもすぐには動けない絶好のタイミング。


 何かを察知して上を見上げるラプノスだが、もう遅い。妃伽は全身全霊の踵落としをラプノスの頭に向けて振り下ろした。ばきりと嫌な音が鳴り、ラプノスが蹌踉めく。妃伽は高い身体能力と落下の慣れで踵落とし後にしっかりと着地した。そして、蹌踉めいたラプノスに向けて、右から体当たりをした。


 右脚を負傷していて踏ん張れないラプノスから見て左側から右へ衝撃を与える体当たりは、狙い通り崩れさせて倒すことに成功した。まだ踵落としの効果が聞いていて目が回ってる。やるならば今が絶好の機会。危険な爪を持つ脚側ではなく、背中側から回り込んで首を抑えて頭を固定し、ナイフを振り上げた。




「悪ィが……──────生き残るのはこの私だッ!!死ねやクソがァッ!!」


「──────ッ!?」


「死ねッ!死ねッ!死ねッ!さっさとくたばれゴラァッ!!」


「■■■■ッ……■■■■■──────ッ!!!!」




 ラプノスの体の中で1番柔いだろう目に向けてナイフを振り下ろす。突き立てられたナイフと痛みで暴れようとするラプノスを力の限り押さえ付けて逃がさないようにし、何度も何度もナイフを目に向けて振り下ろした。


 ナイフを握る手が血に塗れていく。ラプノスから上がる絶叫を無視して、生命活動を停止するその時まで止まるつもりはない妃伽は、勘で脳味噌があるだろう位置に向けて何度もナイフを突き立てた。10回は目に向けてナイフを振り下ろした。刃先が真っ赤になって、手も赤く染まっているのに、雨の中ひたすらナイフを振り下ろす。


 暴れていたラプノスは少しずつ動かなくなった。体の方がビクリと反応するだけで、暴れることも無い。妃伽は念の為に、死んでいるというもう少しの確証が欲しくて、ラプノスの長い首に腕を巻き付けた。人間に首を絞めるように回した腕に力を入れて、体を捻り込む。首の関節の可動域を超えさせて、巌斎妃伽は……ラプノスの首の骨をへし折った。




「はーッ……はーッ……はーッ……んんッ……はーッ……どうだ……やったぜ……やってやったぞコノヤロウがッ!モンスターぶち殺したぜざまぁ見ろやッ!!」


「……っ……っ………──────────。」


「ふーっ……ふーっ……私の勝ちだ……私のこと、食おうとしたんだから……はぁ……恨みっこ無しだかんな」




 血に塗れたナイフと右手から、雨と一緒に地面に滴り落ちていく。顔にも掛かった血を左の袖で乱雑に拭い、左手で前髪を掻き上げた。少し前までのモンスターを前にして怯えていた巌斎妃伽はもう居ない。彼女は今……狩人への道第一歩を踏み出したのだ。


 負傷していつも通りの動きができない下位モンスターのラプノスとは言え、たった1本のナイフのみを使って狩猟した。突き刺された目から血を流して倒れるラプノスを見下ろして、妃伽は遅れて自身がモンスターを狩ったことを実感した。そして、喜びを表現するが如く、大雨の中天に向かい雄叫びを上げた。勝利の雄叫びである。

















「……──────思い切りが良いな。雨が降ってきた事に対する対応が早かった。壁を登る速度はいつも通りのもので冷静さを欠いていない。登る高さは甘いが、着地は見事。踵落としも確実に決めて脳震盪を起こさせた。ラプノスの肌にナイフの刃が負ける事を想定して目を狙ったのか。……ふむ。狩猟のことを何も知らなかった元一般人からしてみれば、良い動きだった」




 崖下で雄叫びを上げている妃伽を見下ろして、黒い死神は評価を口にする。大きな負傷の1つはすると思っていたのだが、怪我などはせずにラプノスに打ち勝ってみせた。元より全快のラプノスを落とすつもりはなかったので態と脚を捻らせたのだが、それにしたって良くやったなという思いだ。黒い死神からの評価は悪くない。高いくらいだ。


 天気を読み忘れた点と、知らなかったとはいえラプノスが届くかも知れない高さで満足した点が気になるが、それ以外はまあ良いだろう。特に褒めるべきは、肌に刃が通らない可能性を考えて目を狙った事と、確実に殺して動けなくさせるために首の骨をへし折ったことだ。


 普通なら、動物を最近殺したばかりというだけで生物の首の骨を折ることは憚れるだろう。やりたいとは思わない筈。それでも妃伽は何の躊躇いも無く実行した。そうしないと自分の身が危ないと理解しているからできる行動だ。黒い死神でも、同じように首は折る。なんだったら最初に折る。




「総評は……良くやった。巌斎妃伽。お前を正式に俺の弟子として認める。ようこそ──────我々狩人の世界へ」




 口では弟子にすると言ったが、何も知らない状態で弟子にするつもりは無かった。ある程度の行動パターンと、狩人に向いている性格かどうかを確認するまでは仮の弟子という風に心の中で決めていた。コレはその試験の1つであり、同時に修行でもある。妃伽は黒い死神の試練と修行に耐えたのだ。


 最初は弟子にして育ててみなよと言われて困惑したし、本当に狩人になるのかと懐疑的ではあったが、ここまでの心の強さを見せられてお前は狩人に向いていないとは言えない。これからは正式な弟子として、狩人に必要な知識と経験を積ませる。まあ、その前にこの大穴からどう出て来るかが見物だが。







 最近でも無かった強い雨に打たれながら、妃伽と黒い死神はその日を終えた。狩人の世界への入門。弟子への微かな期待。それぞれは色々な感情を胸に、その日を終えた。









 ──────────────────



 ラプノス


 細身の鳥類を思わせる体躯に、二足歩行を可能としたモンスター。腕は退化して短く、軽いものを掴むのが精一杯だが、その代わりに脚が発達している。素早い動きが特徴で、先端に行くにつれて細くなる嘴のような口には小さくも鋭い牙が生えている。


 足の爪には1本だけ異様に弧を描いて長い、鋭利な爪が存在している。獲物を狩りをするときはこの鋭い爪を使って攻撃するのが主で、狩人の防具を切り裂いてしまうので注意するべきラプノスの1番の武器。


 性格は獰猛で肉食。大体は5、6体程度の群れで活動して集団で狩りをする。狩りをする場合にはそれぞれ役目を決めており、それに見合った行動を取る。特に正面から詰めて動きを制限する役目と、隠れながら襲い掛かる役目の2つに別れている。





 巌斎妃伽


 負傷しているとはいえ、ナイフ1本で下位のモンスターに立ち向かい、見事狩猟に成功した。


 3メートル強の高さが、足から落ちて綺麗に着地できる現時点での限界高度。一番速く登れるルートから登って距離を取り、諦めて離れる行動且つ、負傷した右脚を踏み込もうとする瞬間を狙って飛び降りた。


 踵落としは完全に決められると思って狙ってやり、一番ダメージを与えられると確信していた。殴って手を痛めたらナイフを振り下ろすことができなくなるため。乗らなかったのは、振り下ろされた時のことを考えて。彼女の中での最善の一手。





 黒い死神


 口では弟子にすると言ったが、本当は仮の弟子。性格が向いているのか、やっていけるのかを今回の大穴へと落としから、モンスターとの戦闘で見極めるつもりだった。結果は合格。巌斎妃伽は黒い死神の弟子となったし、彼女のことを認めた。




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