エピローグ
数日後、レイウッド人たちは火星の日本領に無事移住を完了した。この日、高村は外務省への報告のため本国に帰ることになった。
「なにからなにまでありがとうございました」
カムランは心から礼を述べた。
「いえ、とんでもない。全然お役に立てなくて。それより、日本が地球連邦に併合された後のことなんですけど、何とか連邦政府と話がつきまして、併合後あなた方のお世話は連邦政府が引き継いでくれることになりました」
「大丈夫よ。レイウッド人は自立心が強いから、それまでに新しい星を見つけて移住してみせるわ。」
レティナは得意げにそう言った。
「頼もしいですね。これからレイウッドを背負って立つ新しい世代にあなたのような人がいてくれれば、レイウッドは再び発展しますよ」
高村にそう言われ、レティナは少してれながら微笑んだ。
「じゃ、僕はそろそろ行きますね」
「お元気で」
「気が向いたらまた顔出してね」
別れのあいさつをすませ、高村はレティナたちに背を向け去っていった。レティナは去りゆく高村の背を見て、ある思いが頭をよぎった。
「タカムラ!!」
レティナに呼び止められ、高村はレティナたちのほうへ振り返る。
「あんた、言ってたよね。自分たちはニホン人じゃなくなるって。けど、そんなことないよ」
「・・・・?」
レティナの言葉に高村は顔に疑問符を浮かべる。
「あんた、自分で言ってたじゃない。『民族の血と意思を受け継ぐ者がいる限り、その民族は存在し続ける』って。私たちがレイウッド人であり続けるのと同じように、たとえ国がなくなってもあんたはニホン人だよ。私たちレイウッド人はずっと忘れない。遠い星に住む一人の〝ニホン人〟が私たちを助けてくれたことを」
それは、高村にとって最高の言葉だった。レイウッド人からの最大級のお返しであった。高村は今にも溢れ出しそうな涙をこらえ、無言で頭を下げた。そして、再び彼らに背を向け歩き出した。
「この星に来る途中、輸送船の操縦士に彼のことを聞いたよ。彼はちょっとした有名人らしい」
徐々に小さくなっていく高村の背を見つめながらカムランはそう言った。
「へぇ、そうなんだ」
レティナも高村の背を見つめながら少し興味深そうにそう応えた。
西暦2345年(惑星連合暦1054年)。地球人類にとって〈宇宙外交時代〉と呼ぶべきこの時代、強大な力を持ちながら小国の外交機関に所属する変わり者の〈星の守護者〉がいた。当時、各国政府は皮肉と敬意を込めて彼のことをこう呼んだ。
〈宇宙最強の外交官〉
最後までお読み頂き、誠にありがとうございました。
至らぬところが多かったかと思いますが、少しでも楽しんで頂けておりましたら、大変幸いです。
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外務省官僚になったので、宇宙の果てまで人道支援に行ってきます!! 阿々 亜 @self-actualization
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