38,ファメラの過去
ファメラが真実を伝えた日から、三日が過ぎていた。
サクラは自室の寝台に横たわったまま、ずっと塞ぎ込んでいる。ネルが定刻通り食事を運んで来ても、また消灯時間が過ぎてファメラがこっそりやって来ても一切反応しない。彼女は大人の姿で居る事が嫌で、以前通りの子供の姿に自分をカスタマイズしていた。
……全部、私たちのせいにされてるんだ……!
サクラは怒っていた。その怒りようは以前の比ではなく、昼も夜も絶え間なく怒っている。
みんなが私たちの事を憎んでる。
もし私たちが天使にならなかったら、世界は滅びなかった。
もし私たちが天使にならなかったら、人類はお腹の中で暮らさなくて済んだし、天使病の女の子もナンパしてきた男の人もあの場に居た通行人も、誰もこんな酷い世界で暮らす必要もなくって、当然死ぬこともなかった。そもそも天使病自体無かった。ネルさんだって地獄の思いをせずに済んだし、ジオルムも出現しなければ、ファイガさんもレフもガブも、ALOFの誰一人死なずに済んだ。
そう思われてる。
ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ。
ぜんぶ私のせいにされた。
でも、私が何をした?
確かに地球が滅ぶきっかけにはなったのかもしれない。
でも私たちは何も知らなかった!
何も知らないまま実験されて改造されて、気が付いたら化け物にされてたんだ!
地球の未来のために犠牲になったのは、私たちだって一緒なのに……ッ!
「……ふざけんな……ッ!!」
サクラは握った拳を枕元に叩きつけた。何度も何度も殴りつけて、枕の両端を掴んで引きちぎった。中に入っていた透明な極小ビーズがバラバラと弾け飛ぶ。それでも怒りは収まらない。
「ふざけんなよ……ッ……ふざけんな……ッ!!」
「サクラ」
すると、部屋の隅で申し訳なさそうに立っていたファメラが三日ぶりに声をかけた。サクラのパーソナルスペースを理解している彼女はいつも同じ場所に立っている。そこから先には決して入らない。
だが今初めて一歩サクラの領域に踏み込む。
サクラのハートがこれ以上砕けないように、ファメラは一歩一歩、その道程を確かめるように歩み寄る。
――『うん。あたしサクラの天使になる』
その時ファメラの脳裏に、ふと昔あった出来事が浮かんだ。
十年前。
旧国名イスラエル中央地区レホボト。海が近く温暖なこの町の巨大ショッピングモールには、日本の寿司屋も入っている。
そんな町の郊外に地上6階地下5階からなる巨大な研究施設があった。その名は『アクシオス』。
年間予算7億ドル、日米英イスラエルの協力により建設された『人類救済のための英知収束研究所』。通称『ECRF(アース・コンバージェンス・リサーチ・フォー・ヒューマニティサルベーション)』である。
まるで軍事基地のようなその施設の地下で、総勢294名の少年少女らが暮らしていた。
ファメラ、もといナンバー004もその中の一人だ。
「……」
研究所の朝。
搾った雑巾で作ったみたいな湿っぽい灰色のベッドの上であたしは目覚める。
まず最初にやらなくちゃいけないのは、自分の手足を縛ることだ。部屋の片隅に設置されてる車いすに座って、硬いバンドで自分の手首と足首を縛る事。だけど左手だけはどうしても自分ではできないので、お迎えの兵士がやってくるのを待つ。
暫くすると、バンバンと同じ階の扉が蹴り開けられる音がした。『起床だ!』と怒鳴り散らす声がして、何発も銃声が聞こえる。ここの廊下はコンクリートが露出してるから反響音が凄い。
たぶん、大人しくしてない連中がまた撃たれたんだ。
あたしたちはあんまり死なないから、こんなのはお仕置きの範疇。
なんて思ってるうちにあたしの部屋の扉も蹴り開けられる。
「ナンバー004! 両手を上げて床に伏せろ!」
兵士は二人一組で、大抵は扉を蹴った方が中に入ってくる。もう一人は部屋の外で待機。二人とも軍用アサルトライフルをあたしに向けておはようの挨拶もしてくれない。
「サー! イエッサー!」
あたしは残った左腕で元気よく海軍式の敬礼をして見せる。ちょっとしたジョークのつもりなんだけど兵士はニコリともしない。銃口を向けたままあたしの手足のバンドをチェックして、残った左手もロックを掛ける。続けて首輪をあたしに付けた。この首輪には小型の高性能爆弾がセットされてて、万一あたしらが逃げ出そうとした時に遠隔操作で起爆できるようになってる。
それが済むとようやく銃を下ろして、あたしの後ろに来て車いすを部屋の外に押し出す。廊下にはF1のレースみたいな配置で各部屋の子たちが揃うのを待ってる。全部で31名。そのうち何人か頭を撃たれてぐったりしてる。いつまで経っても出てこない部屋があるのは、昨日のうちに『卒業』した子たちだろう。卒業した子たちがどこへ行くのか知らない。解るのは二度と会えないってことだけだ。
そんなあたしらが連れて行かれる先は、廊下の一番奥にある『教室』。廊下と殆ど変わらない一面コンクリートの室内に車椅子ごと運び込まれて、そこで授業を受ける。
内容は五科目から社会常識から人間は襲っちゃいけませんみたいな道徳教育までみっちり。その後は更に地下にある実験室(ハザードレベル4とか書いてある)に移されて、防護服姿の研究員に囲まれて夜中まで血液サンプル取られたり心理カウンセリングを受けたりする。
とまあ毎日こんな生活だけど、それなりに楽しい。ぶっちゃけ勉強受けさせて貰ってるだけありがたいと思ってる。メシも食えるし。うちの母親と居るよりは何百倍もマシだ。
だってあいつあたしの世話なんか何もしてくれなかったし。
それどころかこんな所に売り飛ばしやがった。
いつかブン殴ってやる。
「今日は新しい子がこのクラスにやってきます。仲良くしてあげてください」
なんて、あたしが机の上で頬杖突きながら考えていると、教師役らしいお姉さん兵士がやってきて平坦な口調で言った。誰も何も反応しない。あたしも特に反応しない。
また新しい実験体捕まえてきたのか。
今度のは何日持つかな。
ここじゃ大抵の子は入って一・二か月で居なくなる。
ナンバー一桁で残ってるのはあたしだけだ。
なんてあたしが思ってると、やがて車いすに乗った女の子が入ってきた。
薄いピンク色の髪を腰ぐらいまで伸ばした、そこそこ可愛い子だった。
いい所のお嬢様かな。
こんな所に来なければ、きっと幸せに暮らせただろうにって思う。
「なっ! ナンバー295です! よろしくお願いうぎゃああああ!?」
そして彼女はあたしらの方を向くなりコケた。
「「「……」」」
一同、リアクションに困る。
どうやったら段差も何もない所で転べるんだろう。しかも車いすごと。アクロバティックだ。すげえ。
「おもれぇ」
あたしは頬杖突いたまま言った。そんときは無表情だったけれど、内心ではめちゃ笑ってた。
それがナンバー295、サクラとの出会いだった。
それから暫くは授業と実験の日々が続いた。
授業にはグループでやるディスカッションみたいのもあって、不器用で頭が悪くてどんくさいサクラはいつも頓珍漢なことを言って場をしらけさせていた。そんなだから次第にみんなから無視されるようになって、一週間も過ぎる頃には男子数人からイジメを受けるようになった。授業中髪の毛引っ張られたり、やってきた宿題を隠されたりとか。女の子も遠目からそれを眺めていた。
「おい。あんま調子こくな」
あたしは微妙にサクラが気に入ってたので、男子に注意してやった。すぐに車いすバトルが始まったけれど、ナンバー一桁で生き残ってるあたしに勝てる奴はいない。車いすごと蹴り飛ばしてやった。
あー弱い者いじめ楽しい!
「あ、あの……ッ!」
なんて思いながらあたしが悪辣な笑みを浮かべていると、サクラがビクビクしながらあたしの顔色を窺って言った。
たぶんあたしが恐いんだろうな。
みんなサクラちゃんのことウザがってるからね。
「おふッ……おぱんつ見えてます!」
は?
言われて視線を下げると、使い捨ての雑巾みたいなあたしのスカートの前部分がめくれ上がっていた。
いや、そんなのどうでもいいし。
思いつつも、あたしはやっぱりニヤついてしまう。
こいつやっぱおもろい。
あたしの舎弟にしたろ。
「お前、今日からあたしの舎弟な?」
「……えッ!?」
という訳で、その日からサクラちゃんは舎弟という名の友達になった。
それから四か月が過ぎた。
サクラは案外タフで、四回あった投薬試験も見事にパスしていた。
あの時サクラを虐めていた連中ももういない。っていうか、あたしとサクラ以外誰も残っていなかった。
いじめっ子も居なくなると寂しいもんだ。
そして、明日はいよいよあたしたちの『卒業』の日。
あたしたちも居なくなる。
「
「
あたしとサクラは二人きり、誰もいなくなった教室で話をしていた。
とっくに本名も明かしている。ちゃん付けも恥ずかしくない。
「
あたしは言った。
サクラちゃんは黙ったままあたしを見る。どう反応しようかなって顔だ。こんなにあたしが自分をさらけ出してるのに、サクラはまだあたしを警戒してる。
「
「
「
「
あたしは話した。
あたしんちが貧乏だったこと。
ある日お父さんがいなくなって、お母さんと二人きりで生活していたこと。
だけどお母さん怠け者で、家じゅうゴミの山になってたこと。
だからあたしの人生サイアクだったんだけど、お母さんの機嫌がいい日に一度だけアイドルのライブ見に行って、それがすごかったってこと。
夢中で歌とか振り付けとか勝手に作って練習して、でも全部ぱーになっちゃったこと。
そこまで言うと、あたしは車いすから立ち上がろうとした。バンドで拘束されてたけど、実は余裕で外せる。今日までの実験やらなんやらで、あたしらの体は化け物染みてたからだ。もうパンツめくれても全然恥ずかしくない。
それでサクラちゃんに自慢の歌とステップを見せようと思ったんだけど、途端に兵士たちが入ってきて銃口を向けてくる。
そんなに警戒すんなよ。
今更逃げねえから。
逃げたって帰れる場所ねえし。
つうかせっかく二人きりなのに空気読まねえなこいつら。
ムカつく。
「……
全く空気読まない兵士にあたしがイライラしてると、サクラが言った。
気を利かせたというよりは、素朴な疑問って感じだ。
サクラちゃんは未だに空気読めないけど、解ってやってる連中より一億倍かわいい。
「
あたしは素直に答えた。
それがあたしの夢だ。
「
当の大人連中の前であたしがそう愚痴ってみせると、サクラはちょっと困った顔で俯いた。困った顔も可愛い。
「……
そして言った。
でもあんまりにも現実味が無さ過ぎて、逆に突き放すように聞こえる。
「
「
「
「で、でも
「
クッソ甘い言葉を吐かれて、あたしはブチ切れた。
別に怒ってないけどキレる。
「
あたしが怒鳴りつけると、サクラちゃんはビクンと身をすくませて両手で頭を押さえた。それは親からぶん殴られている人に特徴の仕草だった。あたしもよく解かるから申し訳なく思う。
「……
サクラちゃんは怯えながらも訴えてくる。
なんで!?
諦めるだろこんなの!
だって誰もあたしたちの事なんか愛してくれないのに!
あたしは叫びたかった。
すると、
「
サクラは言いながら、泣き出しちゃう。
それを見てあたしはハッとした。
そっか。
サクラちゃんが頼れるのはあたしだけ。だから、そんなあたしがナヨナヨしてたらサクラちゃんは増々不安になるだけなんだ。
それに気付いて少し気持ちが落ち着く。
落ち着くってのも不思議だった。
明日死ぬって不安で押しつぶされそうだったのに、今はもうなんだか楽。急にそんな風に感じている自分がおかしくなってきて、あたしはついつい笑ってしまう。
「
言いながら思う。
頼ろうとして逆に頼られるのってなんか変な感じだけど、イヤじゃない。
こんないい加減なあたしでも、サクラの役に充分立ててるんだってそう思えるから。
「
「
サクラは俯く。
その顔には絶望の色が浮かんでいた。絶望っていうのはあたし自身よく知ってる感情で、あたしのそれには空元気とか中身のない笑顔とかが付き物なんだけど、サクラちゃんのそれは少し違っていた。顔が強張って緊張してる。なんだか怯えているみたい。たぶん不安で頭が真っ白になっているんだろう。そういう時もある。
「……
サクラが殆ど消え入りそうな声で言った。「
「……
サクラが苦しそうに眉を顰めて言った。
本当に辛そうで、見てられない。
あたしはサクラに優しくしようとして、その肩を抱くために手を伸ばした。するとサクラはわっと口を開けて両手で頭を隠す。
ああ。
このクセ、サクラちゃんもなんだな。
大人から暴力を受けて育った子供は、相手の手が肩より上がると咄嗟に頭を隠す。
暴力が怖いからだ。
あたしは強くなってこのクセなくなったけど、サクラちゃんはまだみたい。
「
あたしはそう言うと、下からサクラの肩を抱きしめてやって、それからゆっくり頭を撫でた。
「……
サクラは微笑んであたしに身を任せてくれる。
そっか。
あたし、皆を笑顔にすることは無理だけど、サクラちゃんだけなら笑顔にできる。
だったらサクラちゃんだけは笑顔にしてあげなくちゃいけない。
それがあたしにできる精いっぱいだから。
「
あたしが後々までお笑い草になりそうな、そんなこっぱずかしい誓いを立てるとサクラは、
「
ぐずぐず泣きながら言った。
あたしはサクラの天使。
だからサクラちゃんだけは笑顔にする。
他の全員の笑顔を犠牲にしてでも。
「――
―――そうだ。
あの時あたしは決めたんだ。
あたしはサクラの天使。だから何があってもサクラちゃんだけは守ってみせるって。
ファメラは過去を思い返した。
苦しかった研究所生活。そんな中で出会ったサクラは心の支えだった。
「来ないでよ一人にして!!」
「ううん。一人になんてできない。だってあたしたち二人きりだもの」
言いながら、サクラが引き裂いた枕の端っこを手に取った。セレマを起動し、一瞬で散らばった中身を集めて新品同然に修復してしまう。
「世界を元に戻す方法があるんだ。二人ならできるよ」
そして言いながらサクラに枕を手渡した。それをサクラは受け取らない。
「今更そんな事したって無意味!」
サクラは冷めきった眼をして叫ぶ。
「だってみんな死んじゃったんだよ!? ファイガさんもガブもレフも、兵士たちもみんな!! それが全部私のせいにされてる!! 私は世界を滅ぼした化け物だって思われてるんだ!! 本当はただの被害者なのに!! 私一ミリも悪くない!! こんなの理不尽!! 酷いッ!!……それに、ファメラだってッ!!」
続くサクラの目は幽鬼のように涙に滑っていた。
「私、真実なんていらなかった! あんな真実欲しくなかったの! だってファメラならきっと幸せになれる真実を教えてくれるかもって期待してたのに……ッ! それを裏切って……! 絶対許せない……ッ!!!」
「……」
サクラの痛切な叫びを聞いて、ファメラは思う。
幸せになれる真実なんてあり得なかった。
真実はいつだって残酷。それこそが真実。
でも。
あたしだけはサクラちゃんの夢でありたい。
「そだね」
ファメラはおもむろに自分の首筋に手を当てた。その首に巻き付いているのは、サクラと同じ高性能爆弾の取り付けられた首輪である。今まではファメラが機能を欺瞞していたため外出していても爆発しなかった。だが、
「パァン!」
ファメラは突然それを起爆させ、本当に自分の首を吹き飛ばした。胸鎖乳突筋や斜角筋と言った首の筋肉が丸ごと抉れ、頸椎が露出している。
「あっははははは!! 痛い痛い!?」
笑ってるうちに首の肉が上下からそれぞれ隆起して元に戻った。だが辺り一面にファメラの肉が飛び散っている。サクラの顔にも勿論掛かった。サクラは呆然としている。
「い、痛いじゃないよ!? なにやってんの!?」
この上ファメラまで失ったらもう立ち直れない!
そう思ったサクラは必死で尋ねる。
「なーにやってんだろうね? なんか突然自分が許せなくなってさ。死ねばいいのにって思ったよガチで」
するとファメラは言った。
「こんなんじゃ、サクラの感じてる痛みちょっとしか解らないね。でもさ、あたしもいちおう天使だから。みんなから恨まれてるのも一緒。
ううん。むしろ罪はあたしにこそある。だってサクラはピクニックに行くときあたしを誘ってくれたもの。もしもあの場にあたしが居れば、ネルが来るまでの時間稼ぎぐらい余裕でできた。それなのにあたしは自分の都合を優先させて、あの場に行かなかった。明らかにあたしが悪いよ。だからあたし、今度こそはなんとかしたいの」
「うああああんッ!!!」
それを聞いたサクラは突然泣き出す。
次々あふれ出してくる涙で手をびしょびしょにし、鼻を啜りながら、それでも何事かをファメラに訴えようとする。
「サクラ……?」
「パァンじゃないよ! ファメラまで死んだら私どうするの!?」
サクラはファメラに理不尽な怒りをぶつけた。
その怒りが、ファメラには心地よくて仕方がない。
この子はこんなクソ野郎のあたしを必要としてくれる。
「死なないよ。サクラを置いては絶対死なない」
「……ホントに、死なない……?」
「うん。死なない」
深海のように暗いその部屋で、二人は抱き合った。
たっぷり10分もそうしていただろうか。
やがてファメラがサクラの両肩を掴んで引きはがした。サクラは何度も涙でグジュグジュになった目元を擦り上目遣いに相手を見る。
「サクラ。世界を元通りにしよう。方法があるんだ。あたしひとりじゃムリなんだけど、今のサクラの力があれば、ぜんぜん余裕でできる」
「……どんな方法なの……?」
「人工神を目覚めさせる」
「じんこうしん……?」
「そう。あたしらが今居るこのでっかい体の持ち主。実はこいつが最初に人工神計画で作り出されたプロトタイプなんだけどね、色々機能付け過ぎてでっかくなり過ぎてんだけど、その分めたくそつええんだ。だから二人がかりでこいつをコントロールして、世界から複製体を消し去るの」
「そんなこと、できるの?」
「できる。サクラは覚えてないかもだけど、サクラって本当は強いんだよ? それはサクラが人一倍傷ついて苦しんでいたから。辛い思いをしてきた人は、その思いの分だけ強くなれるの」
そう言うと、ファメラは真っ向からサクラの目を見つめた。
「今のサクラちゃんは強い。だからあたしの罪の償いを手伝って。人工神を目覚めさせて世界を救うの」
それはファメラなりの配慮だった。サクラに少しでも罪の意識を持たせたくない。だから自分の償いを手伝ってと口にしたのである。
世界さえ救われればサクラも救われる。
真実なんて必要ない。
ファメラは思う。
「お願いサクラ。あたしを助けて」
「……うん……私やる……!」
そんなファメラの言葉に、サクラじゃ頷き立ち上がった。
凛とした目つきで彼女を見返す。
「行こうファメラ。全てを終わらせに」
全てが終わる時が近づいていた。
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